※本記事は、2017年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』24号に掲載したものです。
サービス業の海外展開は難易度が高い
日本企業の海外展開で、一般的に想像されやすいのは、製造業の生産拠点としてだろう。主に海外における需要増加を見込んで、現地の生産体制を整える目的で行われるものだ。
しかし一方で、そうした既存の需要を見込んでの海外展開ではなく、新たに現地の需要を生み出し、確立するために海外進出をして成功する企業もある。
本書『サービスイノベーションの海外展開』ではそうした企業のうち、サービス産業の成功事例を紹介、成功の要因を分析している。一般にサービス産業の海外展開は、製造業のそれより難度が高いとされている。その理由は様々だが、中でも大きいのが、サービス産業に「生産と消費が同時に行われる」という性質があることだ。
サービス財は「輸出」ができない。国内で製造し在庫してから海外へ輸送・販売するというプロセスが踏めないのだ。製造業であれば、本格的な展開の前に輸出で現地の反応を確かめられる。それができないサービス産業では、海外展開は始めから本格的な展開にならざるをえないのだ。
本書ではそうした困難を乗り越え、海外展開を成功させた事例として良品計画(無印良品)・大戸屋・セコム・公文教育研究会を取り上げ、その経緯などをリポートしている。
主著者の伊丹敬之氏は現在、国際大学学長、一橋大学名誉教授。共著の4人は東京理科大学大学院イノベーション研究科、あるいは一橋大学大学院商学研究科に所属する研究者である。
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