SNS利用数はいまだ月間約28万人も増加中
MarkeZine編集部(以下、MZ):ソーシャルメディアの動きは、一つの企業ではなかなか追いきれない部分が大きく、特に企業の担当者も限られたり兼任だったりと、課題が多いのが現状です。そこで今回は、SNS運用における最新の傾向と対策をうかがっていきます。早速ですが、2017年の大きなトレンドから教えてください。
長谷川:まず、SNSは一見もう浸透しきったように思えますが、実際にはまだまだ裾野が広がっています。国内SNS利用数は今でも月間約28万人のペースで伸びているんです(ICT総研「2017年度 SNS利用動向に関する調査」より)。
2017年、SNSの伸長をけん引したのは、皆さんもご存知の通り、Instagramです。ただTwitterも、日本市場ではユーザー数が伸び続けており、注目を集めていますね。拡散力の高さは特にTwitterが優れており、人気の企業アカウントも数多く存在しています。
広瀬:公式アカウントを持つ企業も増え、SNS運用の必要性を全く感じないという企業は今やほとんどいないのではないでしょうか。最近のご相談を振り返ると、「すでにアカウントを運用しているが、現状に満足していない」という内容が増えている状況です。プラットフォーム別だと、以前はFacebookが中心でしたが、最近はInstagramとTwitterに関するご相談が多くなっています。
Instagramでの露出はハッシュタグがカギ
MZ:Instagramは投稿内にリンクを張れず、TwitterのRT(リツイート)のような拡散の仕組みもありませんよね。なぜ今年人気に弾みがついたのでしょうか?
長谷川:コミュニケーションの手法がテキストから写真・動画中心へと変化していく中で、ビジュアルメインのシンプルなサービス設計がユーザーに支持されたと考えています。また、スナップチャットなどの台頭でトレンドにもなった“エフェメラル投稿”をうまく取り入れた「ストーリー」機能も投稿数を伸ばす要因になりました。
また、ご指摘のようにInstagramには、TwitterのRTのようなフォロワー外に拡散する仕組みはありません。ただ、その代わりにハッシュタグが非常に有効に機能します。たとえば「#おうちカフェ」というタグをつけておけば、それをたどって興味がある人が閲覧するので、露出を増やすのにタグはとても大事ですね。さらに、最近ではハッシュタグをフォローする機能も追加されるなど、Instagramにおいてハッシュタグの活用は非常に重要です。
MZ:SNS運用の相談だと、基本的に若年層がターゲットの企業やブランドが多いですか?
長谷川:いえ、そこまで偏ってはいないですね。ただ、プラットフォーム別に見ると、若年層にアプローチしたい企業ほどInstagramやTwitterに興味を持つ傾向にあります。
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現在SNS運用者が抱える課題とは?
MZ:企業目線で見たとき、以前はコミュニケーションの活性化やブランディングの目的でSNS運用を行っている企業が多かったように思いますが、最近はいかがでしょうか。たとえば商品を実際に販売するといった目的で活用している企業は増えていますか。
長谷川:どの企業も最終的には購買につなげたいという思いは変わりません。その前提でSNSの役割をブランドリフトに置く場合もあれば、EC事業者などは直接的なコンバージョンを指標にする場合もあります。
MZ:「すでにアカウントを運用しているが、現状に満足していない」という相談が多いとのことですが、具体的にどんな課題が多いですか?
広瀬:よく寄せられる声としては自社で、もしくはパートナーと組んでSNSを運用しているものの、「成果が感じられない」「正しく運用できているのかわからない」といった課題です。社内にナレッジが蓄積されておらず、取り組みの評価や改善がしづらい、担当者が変わったタイミングで運用が止まってしまった、という話も聞きます。
また、SNSは仕様変更も多いので、それについていけないという声も多いです。企業にSNS専任の方がいれば最新情報のキャッチアップもできるでしょうが、兼任の方が多いのが実態で、かつ主要な3つのSNSを一人で見ているケースもあるので、それぞれを完璧に把握するのはかなり難しいと思います。
ポイントは組織体制とノウハウの可視化
MZ:SNSは粘り強く取り組んでいくことが重要だと思うので、運用が止まってしまうのは避けたいですね。
広瀬:その通りです。兼任のためそこまで時間を取れないという場合、投稿ネタ探しに苦労することも多く、なんとかネタを集めてもフォロワーからの反応がないと担当者のモチベーション維持も大変ですし、結果的にアカウントの投稿頻度も減ってしまいがちです。
あとは、組織体制の問題も大きいですね。専任者を置いたり担当者を一気に増やしたりするのは難しいかもしれませんが、たとえばメイン担当者にはSNSを日頃からよく使っている若手を任命して、サブ担当者に社内の各部署に顔が利くような人をアサインすると、社内情報をフル活用できますし運用のスピード感も一気に増します。
MZ:組織体制は大きなポイントですね。長谷川さんはいかがですか?
長谷川:やはりノウハウの可視化が重要だと思います。SNSアカウントを持つ企業のほとんどは、担当による属人的な運用が行われてしまっています。あくまでマーケティング活動の一環で運用するのであれば、仮に担当者が変わってもクオリティが変わらぬよう、運用を通じて得たノウハウをドキュメントにまとめておくのは必須です。
また、自社だけで進めていると、そこに最新の仕様変更や検証を重ねてわかった効果的な方法などを盛り込むのは難しいかもしれません。その際は、たとえば我々のようなパートナー企業のフォローのもと、未来永劫的に引き継げる社内用マニュアルを整備していくのが良いと思います。
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ブランドと各SNSの相性を見極める
MZ:組織体制の整備、属人化を防ぐドキュメントの作成が大事なんですね。それから、マーケティングに活用する以上、ビジネスへの貢献に対する説明を求められることも多いと思います。どのようにロイヤルティを可視化すればいいのでしょうか?
長谷川:確かにいいね数やRT数がどの程度ビジネスに貢献しているかを測定するのは難しいテーマです。1つの方法として、フォロワーに対しブランドへの好意度や購入意向などのアンケートを行い、フォロワーになってからの態度変容を確かめることですね。
MZ:なるほど。もう少し運用のコツについてうかがいたいのですが、SNSによってかなり場の雰囲気が異なるので、自社に合うSNSや響くコンテンツも変わってくると思います。そもそもSNSをどう選べばいいでしょうか?
長谷川:マーケティングの目的に基づいてプラットフォームを選ぶのが最も重要です。たとえば若年層に向けてのリブランディングが目的であれば、ターゲットとなり得る若年層がどの程度アクティブに存在するか等の理由でInstagramが候補に挙げられます。
広瀬:最初の段階でSNSの選定を誤ると、今まで築いてきたブランドイメージを損なってしまうこともあります。そもそもの目的を明確にした上で、プラットフォーム毎の特性はもちろん、そこにどのようなユーザーがいて、どのようなコミュニケーションが求められるかを丁寧に見極めたいですね。流行っているメディアであることとブランドにとって有益かどうかは別物です。
仮説、実行、効果検証を積み重ねる
MZ:投稿内容については、どうですか? 炎上を恐れすぎると無難な投稿になってしまい、反応がないという事態にもつながりそうです。
広瀬:明らかに反感を買うような投稿はどの企業もしないと思いますが、投稿のタイミングが悪かったり表現を間違えたりして読み手(フォロワー)にショックを与え、炎上してしまったという事例もあります。
SNSは時流に乗ることが大事なので、公式アカウントとして活用できるトレンドワード等があればなるべく早くアウトプットした方がいいのですが、投稿前に「このタイミングでこの内容の投稿をして傷つく(誤解する)ユーザーはいないか?」という視点も重要です。
長谷川:それと、少し矛盾しますが、スピード感を保つためにはチェックする人の数はそこまで多くないほうがいいです。ただし文脈をしっかりと読み、適切なタイミングかどうかをチェックすること。その役割は、ベテランの方がいいですね。担当者一人体制ではリスクヘッジの面で不十分なので複数人体制を推奨しますが、投稿内容は読み飛ばさずきちんと相互チェックし合う仕組みが大事です。
また、その仕組みを実現する上でツールの活用は欠かせません。私たちの提供する「コムニコ マーケティングスイート」では、複数人での投稿確認・承認作業をスムーズに進行するための機能が備わっています。
MZ:組織体制はもちろん、ツールの活用も重要ということですね。では、今回のまとめをひとことお願いします!
長谷川:SNSは短期的に成果を得られるものではないので、まず長期のスパンで考えましょう。正解はないので、理想の体制を整えながら地道にトライ&エラーを重ねることで、自社なりの手応えのあるパターンが見えてきます。
また、今回の記事を読んでいる方向けに「SNS運用あるある20選」という資料も用意しました。起きやすいミスやトラブルの対処法も載っているので、こちらも参考にしていただくと良いと思います。
広瀬:これだけSNSが人々の生活に定着した今、SNSは「使うか使わないか」ではなく「どのように使うか」を考えるしかありません。自社でやるにせよ、パートナーと組むにせよ、ムリのない運用体制を築くことと、一つひとつ丁寧に効果検証してノウハウを貯めることが成功への近道です。
MZ:ありがとうございました。次回は、パートナー企業を探している、あるいは現状の運用に満足していない方向けに、「パートナー選びに必要なポイント」を解説していただきます。
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