複数人が同じ波形を示すとバズにつながる
MZ:たしかにクリエイティブの部分は、科学的な情報がないと判断しづらいですよね。メーカー、広告会社、制作会社と関わる人も多いですし、無条件にクリエイターの感覚や経験に頼ることになっていいのか、と。
原:そうですね。特に長尺の動画は、何かしら消費者の心に引っかかる(惹きつけられる)要素が必要だと、皆さん感覚的にはわかっていると思います。ただ、それが何なのか言葉にできない。
この要素を同社では「ザラツキ」と表現しているそうですが、このザラツキをどうつくるかが、感覚で決まりがちでした。そこを科学的なデータに基づいて制作したいというのが、今回のペルフェッティ社の要望でした。
MZ:ちなみに、どういう経緯で導入に至ったのですか?
原:元々お付き合いがあって、最初は我々からニューロリサーチを始めたことを案内しました。すると、ちょうどタイミングよく上記のような課題があるから具体的に提案してほしいという依頼をいただき、すぐにご提案を差し上げたところ実施を決めていただきました。
MZ:そうなんですね。実際に、ニューロリサーチをどう使ったのですか?
原:そこまでに制作していた動画素材を、20〜30代の社会人男女16人のモニターに見てもらい、センタン社の特許指標である「共感度」(※)を測定しました。動画を制作する上で、意図した部分での消費者の反応を見ていきました。反応の良い部分は上手く活かし、一方で反応が薄かったところは、改善ポイントとして解釈していきました。
※共感力の評価測定はマクロミルの子会社センタン社の独自開発指標です(特許番号:5799351)。
2分間のWeb動画のリテンションレート77%
MZ:なるほど。共感度の測定結果を踏まえて、編集をどう変えたのでしょうか?
原:共感度が下がっている箇所は、テロップを入れて内容を理解しやすくしたり尺を短くコンパクトにしたりしたそうです。また、商品訴求上アピールしたい部分などはアニメーションで動きをつけたり音楽を挿入したりすることで盛り上げるような変更を加えたそうです。
編集前のバージョンをリリースしていないので正確な比較は難しいですが、結果として同社の想定以上の視聴を獲得し、2分の動画を最後まで見てもらえたリテンションレートは77%とかなり高い数値が得られました。これまでの短尺の15秒CMと同じ水準の数値だったそうです。
MZ:2分の動画で77%というのは、手応えがある数値ですね。ほかに、同社からニューロリサーチに対する感想などはありましたか?
原:まず当初の狙い通り、科学的な共通言語をもってクリエイターも含めてディスカッションしながら動画を制作できたことが大きな収穫だった、とうかがいました。想定外だったこととしては、心をつかむことばかり考えて、「心がどこで離れるのか?」というポイントを見過ごしていたことがわかった、と。
認知を狙う15秒CMは、細かく分析しても限りがありますし、一瞬で心をつかむアイデアだけで押せるのかもしれません。でも2分もの動画だと、普通は多くが途中で離脱してしまうので、そこをつなぎ止めるのに無意識の反応を参考にするのは有効だと思います。特に今回は、我々独自の「共感度」という指標を使ったことで、より効果的な改善ができたのではと考えています。