認知度・エンゲージメント向上にGIF動画の「表現力」を活用
――「三井住友カード50周年キャンペーン」にGIF動画を活用するにあたって、どのような課題認識を持っていたのかお聞かせください。
福田:三井住友カードに入社する以前、デジタルマーケティングを支援する企業に在籍していました。今回のキャンペーンではその経験を活かして「既存のテレビCMやネット広告とはひと味ちがった、デジタルでの新しい表現の訴求を通じて、キャンペーンの応募促進ができないか」と考えたのが出発点ですね。
今回GIF動画を活用するにあたって、三井住友VISAカードに興味や好感をもっていただくこと、そして「三井住友カード50周年キャンペーン」に参加したいと思っていただくことをゴールとしました。
私ども三井住友VISAカードの認知度は、直近の調査で「30~40代ではクレジットカード業界での認知度は高い」のですが、「20代の若年層になると認知度が落ちてきている」という課題がありました。そこで、若い世代に気軽に接してもらえるGIF動画での訴求効果に期待しました。
――これまで既存会員のエンゲージメント向上のための取り組みとしてはどんな施策を実施されていたんですか?
福田:会員さまには、オフラインにおいてはご利用明細書をお送りする際にチラシのようなものを同封させていただくほかに、会員向け情報誌「VISA」「MY LOUNGE」内で告知するといった施策がメインで、デジタルでの施策はホームページでの掲載、メールマガジンでの配信のみでした。つまり、ホームページにお越しいただけない、会員誌やメールマガジンも配信できない会員さまには魅力的な情報があってもお届けする術がなかったのです。
もう1つ、GIF動画を試してみた背景には、スマートフォンを使い慣れた若い世代への施策にGIF動画がマッチしているはずだという意識がありました。今、当社ホームページのメインユーザーが30代で、閲覧もスマートフォン経由が半分以上を占めているといったデータも大きく後押ししましたね。
――GIF動画を活用したマーケティングにGIFMAGAZINEという媒体とそのクリエイターを起用したきっかけは?
福田:GIFMAGAZINEさんが出展されていたマーケティングカンファレンスに参加して、公式クリエイターの瀬川三十七さんの作品を目にしたのが最初の出会いでした。
そこで「動く浮世絵」の独特の世界観とクオリティと完成度の高さにすっかり魅了されました(笑) 浮世絵のもつ歴史や伝統といったイメージに先進性が加わった瀬川さんの作品と、「日本で最初に発行されたVISAカードの伝統」と「to the NEXT SURPRISEの経営ビジョン」をうまくシンクロさせた表現ができないかと相談を持ちかけました。
1枚1枚のカードにつまった50年の歴史と実績をGIF動画で表現
――実際にGIF動画の制作を依頼するにあたって、GIFMAGAZINEや公式クリエイターの瀬川三十七さんとどのようなやりとりがありましたか?
福田:GIF動画では、当社がこれまで発行してきたVISAカードをかるた(歌留多)にみたてています。細かな部分ですが、なかなか見ることのできないレアな過去の券面デザインのものも含まれているところに注目してほしいですね。
作品に関しては最初から瀬川さんらしい世界観を活かしていただくことを決めていましたから、大枠としてはリクエストはしませんでした。1ヵ所だけ、右側の橋の欄干にいるネコの動きは私から特にお願いした部分です(笑)
ページにアクセスするだけで再生される「クリックレス再生」と「短尺」、「自動ループ」というGIF動画の特徴や魅力が活かされているのに加えて、よく見ると背景や細かなところまで楽しんでいただける、完成度の高い作品になったと満足しています。
――今回のGIF動画によるキャンペーンでは、大野太郎さんの作品も起用されましたね。
福田:大野さんについては「GIFMAGAZINE」さんから提案していただいて、実現に至りました。瀬川さんとはまったく違ったスタイルや表現によるGIF動画訴求を試す貴重な機会になりました。
当社は金融機関ということもあって、広告・宣伝でおもしろさやユニークさを前面に出した表現をあまり手がけてきませんでした。だからこそ、今回のGIF動画では意外性を打ち出すことができたと考えています。
当社の企業イメージとして、どうしても「まじめ」「かたい」という印象が定着してしまっている一方で、「信頼」「安心感」といった大事にしていきたいイメージもあります。GIF動画を採用することで、最先端の技術を使ったデジタルマーケティングに取り組む新しい企業だというイメージを印象づけていきたいという思いもありました。
実際、目にした社内のスタッフや関係者の方々から好意的な意見をいただいて、新しい取り組みとして確かな手ごたえを感じています。
カード利用額の増分に対するマーケティングROIは約5倍に
――三井住友カードとしては初めてというGIF動画を活用したキャンペーンを実施したわけですが、GIF動画への評価や効果測定の結果はいかがでしたか?
福田:今回のキャンペーンは、当社サイトにて事前エントリーしていただいて期間中に1万円以上カードをご利用いただいた会員に対して、抽選で賞品をプレゼントするものでした。たまたまGIF動画を目にしてエントリー、応募するに至った会員もいらっしゃり、GIF動画の閲覧数や評価も予想以上に高かったですね。
またキャンペーンへの応募総数ですが、非常に高い数字を記録しました。具体的には、同様のキャンペーンより、1.3倍程度の応募をいただけました。
その内訳はどうだったかというと、調査の結果外部メディアから影響を受けて応募をしたという声が約1万件を占めていました。つまり、GIF動画のキャンペーンによる応募が1万件程度あったと推察できるわけです。
この数字は期待以上の結果でした。キャンペーンには予算がありますので、当然ながら費用対効果が問われますが、「投資に対する効果=クレジットカード利用額の拡大」という点からも広告価値に換算して約5倍と充分にペイする施策になり社内の評価も高かったです。
さらにGIF動画が、TwitterやFacebookといったSNSを通じて拡散して、キャンペーンサイトへの流入や当社の企業イメージアップや好感度アップにつながったこともうれしい副産物でした。
そもそも、認知度アップ、エンゲージメント向上のためのWebマーケティングには2つのアプローチがあると考えています。
1つはInstagramやYouTubeにバズるコンテンツを投下して拡散をねらう方法。もう1つが地に足の付いたコンテンツで持続的に露出の拡大を図っていく施策です。
ちょっと話題になるような動画や画像を拡散ねらいでバズらせるという方法も確かに効果はあるのですが、それは「瞬間」で終わってしまう。GIF動画には、「バズをねらいつつ継続的に露出を高めていける施策」としての魅力があると思っています。
よく言われるように、GIF動画には「短尺」「クリックレス再生」「自動ループ」という特徴があります。テレビでもWebでも動画による広告が敬遠されるなかで、短時間で負担なく見てもらえるGIF動画の体験は生活者にとっても受け入れやすく、そこに作品のクオリティが加勢することで大きな効果につながる可能性を秘めていると思います。
GIF動画は作品としてWeb上へ残せるという特徴があるので、バズらせて拡散させる方法と、継続してイメージ定着を図っていく施策との中間のような活用方法を見いだしていけると期待しています。
クリエイティブなGIF動画の活用で若い世代に高い訴求力を
――今回の「三井住友カード50周年キャンペーン」では、特に若い世代へ向けて三井住友VISAカードの認知度アップ、エンゲージメント向上も期待されたわけですが、GIF動画を活用することのメリットをどう考えますか?
福田:くり返しになりますが、見るのにストレスがかからず、データ量が大きくないのでスマホでの視聴に向いているGIF動画は若い世代に大きなアドバンテージがある施策だと思っています。
それから瀬川三十七さん、大野太郎さんというすでにブランドとして定着しているクリエイター2人が当社のために作品づくりをしてくれたことも大きいですね。今回のキャンペーンでは瀬川三十七さんデザインの特製プリペイドカードを抽選でプレゼントしましたが、今後も人気のあるGIF動画クリエイターが手がけたクリエイティブを活用できないか考えていきたいと思っています。
最初にお話ししたとおり、クレジットカードとしての認知度が、若い世代において伸びしろがあるというのが当社にとっての大きなテーマです。
いい商品、いいサービスを提供していても、伝えるべき相手に伝わっていなければもったいない。たとえば「ポケット保険」「ゴルファー保険」というサービスがあるんですが、オンラインでお申込みいただくだけ会員が補償を受けられるものです。個人的にも非常に便利でお得なサービスだと思っていますが、アピール、PRが控えめなのか、お客様に充分に浸透していないんです。
また「Vpassチケット」は宝塚歌劇、劇団四季、シルク・ドゥ・ソレイユなどの人気公演チケットを、クレジットカード会員の方々のためご用意し販売するサービスです。最新のブランドアイテムが割引価格で買える「V-collection」というECサイトもあります。これらも本当に便利でお得なサービスです。
こうした会員さまに喜んでいただけるサービスを伝えるためにデジタルの施策を活用したいと考えており、その施策の1つとして、GIF動画の活用に今後も取り組んでいきたいと考えています。
今回のキャンペーンで確かな手ごたえを感じるとともに、次回に活かしたい反省点としては、SNSや外部メディアから流入してきた会員を受けとめる特設サイトがなかったことですね。GIF動画の閲覧やSNSでの拡散でアクセスしていただいた会員が、サイトを訪問してもっと楽しめるようなコンテンツや交流のためのスペースを設けることができればもっとよかったと感じています。
GIF動画なら、メールのなかに埋めこんでも容量や端末を気にすることなく、プロモーションに活かすことができます。会員さまとのコミュニケーションにおいて、エイプリルフールやゴールデンウィーク、お中元やお歳暮、ハロウィンやクリスマスなど時節に応じたプロモーションが不可欠なので、ぜひ試してみたいです。
クレジットカード会員の新規獲得のための新しい施策も大きな課題です。今回は既存会員のクレジットカード利用額拡大に向けた施策でしたが、今後は新規会員獲得のためのキャンペーンにも応用できないか、考えていきたいと思っています。