獲得までのコミュニケーション設計が違う
デ・スーザ氏が続いて示したレーダーチャートは、そのことを明確に示している。広告費が増えていない企業が設定しているCVポイントを見ると、商品購入以外だとメールや電話の問い合わせが多い。また、そもそもCVポイントを設定していない企業は広告費を“なんとなく”使っている状況が見て取れる。
一方で広告費が増えている企業は、商品購入ももちろんみているが、それ以外にメルマガや会員登録も重視していた。これらは必ずしも、すべての見込み顧客が最終目標である顧客化へつながるわけではないが、浅くても間口を広くとることで接点を大切にし、まずはなるべく多くの人と関わりをもとうと考えていることがうかがえる。
具体的なCPAを聞くと広告費が増えた企業は相対的に高く、増えていない企業では低いか予算設定なしの回答が多かった。前述のメルマガ登録などのポイントのみでみれば、CPAは相対的に低いはずなので、逆の結果なのではないかと思われるかもしれない。だが、ここに広告運用の設計の違いが如実に表れている。
「広告費が増えていない企業は、メール問い合わせなどをとにかく安く獲得することを目標にしている、つまりそのポイントでしか評価していません。一方、増えた企業は、初期接点を持てた人を見込み顧客として育てることを想定し、将来的な獲得を見込んでいます。
メルマガでもすぐに売上につながる人と、来月再来月に売上が立つ人の両方が取れるので、CPAを高く設定して『最初から囲い込もう』としている。設計の思想が違うのです」(デ・スーザ氏)。
複数の広告を横断して費用対効果を計測
デ・スーザ氏の考察から、過去3年で広告費が増えた企業と増えていない企業は、そもそもコミュニケーションの設計が違うことがわかった。続く質問「Web広告費の何を評価しているか?」の回答も、実は見ている指標が違っていた。増えている企業は、クリック数やクリック単価よりも広告費用対効果(ROAS)や顧客獲得単価(CPA)を重視しており、増えていない企業では重要度合いがその逆となった。
このことから、広告費が増えていない企業は各媒体での計測結果に注視し、分析していることがわかる。一方、増えた企業はROASやCPAをみていることから明らかなように、「顧客一人を獲得するためにかかった費用、つまりヒトとカネをポイントに、広告が適切に使えているか投資対効果で評価している」とデ・スーザ氏。両者は同じように「当社はWebの最適化を実施している」と思っていても、実は評価基準もまったく違うのだ。
「言い変えれば、広告費が増えた企業は『一人を獲得するのにいくらかけたのか』の話をしており、増えていない企業は『この媒体で何件取れたのか』という話をしているのです。経営層が欲しい情報は前者ですよね。
ただ、今どき比較サイトや口コミをチェックするのは当たり前なので、一媒体だけの接触で一気に購入するユーザーはほぼいません。なので前者を評価するために、増えた企業では最終的に獲得に至るまでの複数の広告の役割を明確にして、それらを正しく評価していることがうかがえます。つまり、計測に差があるのです」(デ・スーザ氏)。