※本記事は、2018年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』29号に掲載したものです。
米国では食費に占める外食費の割合が上昇しているのをご存じだろうか。アーカンソー大学の調査では、1970年の外食費割合は25.9%だったのに対し、2012年には43%と過去最高値を記録している。レストランの数や種類が増えたことに加え、共働き世代の増加などが背景にあると考えられる。
このトレンドは食に関わる環境変化の1つであり、この他にも数多くの変化・トレンドが生まれている。その中心にいるのがミレニアル世代だ。価値観、考え方が親世代(X世代)や団塊の世代と異なり、食に関する消費も大きく変化している。
健康志向のミレニアル世代、食事にもこだわる
ミレニアル世代に関する様々な調査レポートが発表されているが、総じてミレニアル世代を健康意識が高い世代と位置づけている。ウェルネスへの高い意識を持ち、ヨガや運動を日常に取り入れている割合が他の世代に比べ多いという。お酒をあまり飲まなくなったとも言われている。
健康意識が高いため、食事に対してもこだわりが多いようだ。米マーケティング会社NPDが行った調査では、この10年でミレニアル世代やZ世代における野菜消費が高まっていることが明らかになった。
同調査によると米国の40歳以下の1人あたりの生野菜消費はこの10年で52%増加、また冷凍野菜は59%増加したことがわかった。一方で、団塊の世代では、生野菜消費が30%減少、冷凍野菜も4%減少している。NPDのリサーチアナリストは、若い世代における野菜消費の増加は健康意識の高まりを反映したものと指摘している。今後も若い世代における野菜消費は増えていき、次の10年で生野菜消費は10%、冷凍野菜は3%増加する見込みという。
北米の有機食品促進団体「オーガニック・トレード・アソシエーション(OTA)」が実施した調査でも、同様のトレンドが明らかになっている。
OTAの調査では、米国における有機食品の購買で最大のグループがミレニアル世代というこことが判明したのだ。特に、子どもを持つ親となったミレニアル世代が自身だけでなく、子どもの健康に気を遣い有機食品を選ぶ傾向が強いことが明らかになった。どういった食べ物が有機食品であるべきかという質問ではベビーフードが最も多く、次いでフルーツ・野菜がランクインした。
現在、米ミレニアル世代の25%が子どもを持つ親になっている。10〜15年後にはミレニアル世代の80%が親となる見込みで、有機食品へのニーズはさらに高まっていくという。
このOTAの調査は、オンラインショップが有機食品の普及を加速させる可能性に言及している。オンラインショッピングで食品を買う割合はミレニアル世代の40%に対して、親世代は30%という。また、全体ではオンラインで購入した有機食品の品質が良いと感じている割合が20%、オンラインでの有機食品購入が便利と感じている割合が17%、オンラインショップがあることで有機食品の購入が増えたと答えた割合が10%となり、OTAはこれらの数字が今後さらに有機食品消費が増えることを示唆していると述べている。
OTAによると、アメリカでの有機食品消費は過去最大になっており、売上ベースでは500億ドル(約5兆円)近くに拡大。有機食品市場拡大の主な要因は、ミレニアル世代による消費増加だと指摘している。
野菜の他に、ミレニアル世代が食選びで意識しているのが「たんぱく質」だ。
広告マーケティング会社Acostaの調査では、ミレニアル世代の80%が、食品を購入するとき「たんぱく質」が含まれるかどうかが非常に重要であると回答しているのだ。この数字は、親世代であるX世代で74%、団塊の世代で66%と年齢層が上がるにつれて減少している。
ミレニアル世代の間で特に注目されているのが、植物でできた「代用肉」だ。牛や豚など食肉生産にかかる環境負荷が高いことを学んだミレニアル世代の多くが、食肉ではなく、植物性の代用肉からたんぱく質を摂取しているという。Markets and Marketsによると、代用肉市場は2018年に46億3,000万ドル(約4,700億円)に達し、2023年には64億3,000万ドルに拡大すると見込まれており、急成長市場の1つとして注目を浴びている。
たんぱく質の他に、プロバイオティクス食品への関心も高まっている。Packaged Factのレポートによると、プロバイオティクス食品・飲料に興味があると回答したミレニアル世代の割合が32%と、X世代の26%、団塊の世代の12%を上回ることがわかった。
このことからミレニアル世代は、野菜を食べればよいという安易な考えではなく、酵素などの機能を理解し、健康を考え、食品選びを行っていると見て取ることができる。