雑誌の質的価値は変わらない
MZ:今回のコミュニケーション設計のポイントは?
中條:今回のターゲットである10代後半~20代の女性は、広告が届きづらい層です。Instagramと雑誌を組み合わせることで、相互のリーチを補完し、効果の最大化を狙いました。Instagram広告では、通常のフィードだけでなく、ストーリーズでも広告を出すようにして、ターゲットの中で話題になりやすいような仕掛けにしました。
MZ:雑誌の総発行部数は年々減少していっています。広告媒体としての雑誌の位置付けをどう捉えているのでしょうか。
土井:実際、デジタルシフトが進んでいます。ただし、雑誌が化粧品業界にとってターゲットに届きやすいメディアであることに変わりはありません。部数が減っているとは言え、雑誌を手に取る人は確実にいるわけですから、使わない手はないでしょう。今回の取り組みは、今まで別々に考えていたInstagramと雑誌を当初から掛け合わせて使うことを考え、その成果も可視化できるようプランニングしました。
中條:広告効果の量と質においては、部数が減る分、量的効果は少なくなりますが、質的効果は変わっていないと思います。量が足りないならば、デジタルで補完すればいいのです。それから、私たちは出版社のことをコンテンツメーカーと考えていて、アウトプットが紙かデジタルかはフラットに捉えています。
重複接触により単独接触の1.6倍の効果
MZ: Instagram広告と雑誌広告を組み合わせたことで、実際にはどういったシナジーが生まれたのでしょうか。
佐藤:リーチを計測したところ、雑誌だけのリーチは22%でした。Instagramによるリーチは28%で、雑誌によるリーチと重なっている分の11%を差し引いても17%増えたことなります。結果、トータルリーチは39%となり、Instagramは雑誌のリーチを補完する役割を担いました。
また、カンター・ジャパンによる調査では、「認知」「意向」「行動」のどのフェーズでもシナジー効果が現れていることが確認できました。Instagramと雑誌、それぞれのみの接触による効果の単純総和に比べて、Instagramと雑誌に重複接触した場合の効果は、「認知」と「意向」では1.3倍、「行動」においては1.6倍以上のポイントアップを達成しました。雑誌は、良質で深いコンテンツが提供されることから、その信頼度も高く、認知形成において十分効果のあるメディアです。一方、先ほどの話の通り、Instagramはより自分ゴト化しやすいメディアであることから、最後に行動に移す際の後押しの力がより強まるという効果が示唆されています。