B.LEAGUEのブランディングの機能も果たす、グッズ販売
――グッズの売り上げも、急成長していると伺いました。グッズは、B.LEAGUEのマーケティングにおいて、どのような役割があるのですか?
菅原:B.LEAGUE全体のブランディングですね。というのも、漠然と流れてくる広告よりも、自分の友だちが着ているB.LEAGUEのTシャツのほうが興味関心がわくと思うんです。B.LEAGUEを浸透させるには、お客様に近いタッチポイントで存在感を発揮するのが一番効率的なのではないか、と考えました。
たとえばアメリカでは、NBAのファンでなくても、NBAのロゴが入っているTシャツとか筆箱とかを子供たちが持っています。これは、リーグやクラブの知名度ももちろんですが、単純に商品がカッコよくて、日常で使っても遜色ないからだと思います。それがさらに、NBAのブランディングや認知度の向上につながっているのです。
――今、お二人が着てらっしゃるTシャツもB.LEAGUEのものですよね。確かに観戦する時だけでなく、普段着としても使えそうなデザインですね。
菅原:はい、今日着ているのはB.LEAGUEオフィシャルカルチャーブランド『Run The Floor』のアパレルアイテムです。また、自ブランドの立ち上げだけでなく、アパレルブランドとコラボして商品を作ったりすることもあります。
実は、B.LEAGUEのロゴも、制作時には若者向けのアパレルを意識しており、バスケ観戦の意欲が高い10代の女子にアンケートをして選んでもらったものなのです。100案くらい用意して、その中から一番評判の良いものを選んだという、裏話もあります。

野球やサッカーの協会やリーグのロゴを、思い出せますか? 各チームのロゴやキャラクターなら思い出せる人も多いでしょうが、協会やリーグ自体のロゴが浸透しているスポーツって、実は少ないんですよ。ロゴを通して「B.LEAGUE」を浸透させることができればと考えています。
葦原:グッズは難しくて、奥が深い領域です。スポーツ業界でよく問題になるのは、グッズによる売り上げが大事なのか、会場の世界観が大事なのかということです。
2年前のB.LEAGUEの開幕当初は、Tシャツを無料で配ったりもしたのですが、最近は皆さんご自分で買ったTシャツを着ている方が非常に多いです。何千万円もかけて会場を派手に装飾するよりも、観戦者に同じ洋服を着てもらうほうが良い装飾になります。
単純に売り上げだけを考えるなら、コアファンに向けた商品を多く出す方が確実性は高いのですが、会場の一体感だったり、世界観を形成するツールとしての機能もグッズにはあります。そのバランスを上手くところまで、菅原はプラン二ングしています。
スポーツもデジタルも「ツール」にすぎない
――様々なことに取り組まれていますが、将来的にはどのような顧客体験を提供したいとお考えですか?
葦原:データの観点から話すと、最終的には、バスケットボールを見ているだけでなく、やっている人のデータも統合したいです。バスケッボールトのプレイヤーにはプロの試合を見に来てほしいですし、普段は見るばかりの人にも時々は自分でバスケットボールをプレイしてほしい。この正の循環を作れるデータベースができたら、もっと色々なビジネスが生まれると思います。
また個人的に、スポーツはコミュニケーションツールだと考えています。これは、デジタルに関しても同じで、デジタルもツールに過ぎませんよね。スポーツの力でコミュニティやコミュニケーションを作り、データベースを活用して、リアルな場のコミュニケーションをより密にできるような世界を作っていきたいと考えています。
――具体的には、どのような顧客体験になるのでしょうか?
葦原:アイデアベースですが、たとえば、趣味嗜好の近い人と一緒に応援できるなどの仕組みが考えられます。特定の選手のファン同士が近くの席にまとまって応援すると、応援もより盛り上がると思うんです。選手にも事前に、自分のファンがいる客席を伝えておくと、シュートを決めた後に、そこの客席に向けてリアクションする事なんかもできますよね。
――なるほど、それは新しい観戦の体験になりますね!
葦原:ええ。さらに言うと、本来は他のスポーツ同士ももっと連携していくべきだと感じています。10年、もしくは20年くらい時間がかかるかもしれませんが、日本のスポーツ業界のデータベースを構築するところまで発展させていければと考えています。