楽天マーケティングジャパンは2018年7月18日にAIをメインアジェンダとしたワークショップ「Empowers Marketers Vol.2」を開催。「Webマーケティングの現場で、我々はAIソリューションとどう向き合うべきか」と題したパネルディスカションでは、デルの横塚知子氏、三陽商会の花輪俊夫氏、イーグルリテイリングの飛内 イブラヒム・アーメッド・ジュニア氏が登壇。AI活用の成果や展望について語り合った。モデレーターは、リンクシェア・ジャパンの吉田悠紀氏。
組織のAI浸透度
横塚知子(以下、横塚):私の業務範囲は、コンシューマーとスモールビジネス、両方のセグメントを見ています。マーケティングのストラテジー、企画、メディアプランニング、調査を行っています。
花輪俊夫(以下、花輪):三陽商会は今年で設立75周年を迎えるアパレル企業です。私の業務範囲は、自社ECモールのWebマーケティング全般を担当しています。
飛内 イブラヒム・アーメッド・ジュニア(以下、飛内):イーグルリテイリングは、「洋服の青山」の青山商事と日鉄住金物産の合弁会社で、アメリカンイーグルというアメリカのカジュアルブランドを扱っているアパレルブランドです。私はオンラインストアのマネージャーとして、Web周りのディレクション、プロモーションの管理などを担っています。
吉田悠紀(以下、吉田):会社の中でのAIへの理解度や浸透度について、各社どのような状況かお伺いします。
横塚:私は今、国内を担当していますが、グローバルのマーケティングにおいてはAIに対する理解は非常に進んでいると思います。たとえば、投資へのリターンがどれぐらいかといったシミュレーションにもAIを活用しています。コンシューマー、スモールビジネスにおいてもGoogleの機械学習サービスへの投資も行っており、一定の成果を得ています。さらに投資をしていこうというところです。
花輪:私が関与している自社ECモールでは、成果報酬型リスティングサービスの「FINCH」やAIテストツール「Sentient Ascend」を導入。他にも、行動解析型のレコメンドサービスや画像解析型のレコメンドも使っています。
ファッション分野では扱う商品数が多く、スペックではなく見た目が購入のきっかけになることが多いので、ユーザーが見ている画像をAIで解析して、それに近いものを出すといったこともやっています。
飛内:弊社では、経営層にAIの説明、費用対効果の話から入っているところです。洋服の青山は、テクノロジーという点に関してはまだまだ遅れているところがあるので、アメリカンイーグルからの突き上げで、全社的に改善していかなければという感じです。
AIが得意なこと、向かない業務
吉田:マーケターの皆さんに聞くと、AIが影響を与える業務は大体5つに分類できるかなと思います。まず、分析や論点抽出。意思決定に役立つ情報提供。レコメンドのような施策実行。そして、運用・改善。実際に業務にAIを導入されてみて、どこに使いやすい、ここは任せづらいといったところはありますか?
花輪:一番良いのは分析ですね。いちいちログデータをExcelで引っ張ってきて、計算式を組んだりする手間が省けます。難しいのは、論点抽出と意思決定のようなところですね。AIツールでABテストをした時に、Aがなぜ良かったのかわからないまま、次に進むことになってしまうことがあります。「〇〇だから良かったのだろう」といったように、人が想定しています。
横塚:弊社では、ABテストでフル活用しています。たとえば、表現として、「ノートパソコン」という言い方が良いのか、「15インチノート」のほうが良いのか意見が割れたとします。以前は、そんな小さいことをいちいちテストしたりはせずに「ノートパソコンでいっちゃえ」という感じで決めていました。AIを使えば簡単にテストでき、3日も回せば結果が得られます。パフォーマンスを見極め、より良い表現を全媒体に展開できるようになりました。
飛内:やはり分析の部分ですね。意思決定は人がやった方が良いと思っています。若干話がずれますが、人の判断なくオートでお店に商品を投入すると、商品がパンクするということがあります。棲み分けは重要かなと思います。