進化するリサーチ、変わらない人間の本質
田村:リサーチ手法の進化が続いていますが、今お二人にお話しいただいたことは、そんな中でも変わらずに守らなければいけない「リサーチの本質」ですね。
三木:その通りです。私は、そもそもマーケティングリサーチの役割は変わっていないと考えています。米マーケティング協会の定義によると、マーケティングリサーチの役割は1)市場や消費者の行動、意識からマーケティング上の課題やビジネスチャンスを探してアイデア化する、2)アイデアをコンセプトや戦術に落とし込み、その洗練・評価をする、3)施策の効果測定を行う、の3つです。もちろん、ビッグデータの活用など、テクノロジーの発達を生かしたデータ収集の方法が脚光を浴びていますが、一方で行動観察や行動経済学のような従来のアナログ的なアプローチも進化しています。「人間の本質をどう見るか」に取り組んでいるのは昔も今も同じです。
澤田:同感ですね。近年、確かにリサーチ手法は多様化し、かつ誰でも簡単にデータを集められるようになりました。しかし、そのデータをどう読み解けばいいかわからないという声はとてもよく聞きますね。だからこそ、私たちリサーチ会社の中立性と倫理観に根差した、誠実な“解釈”が、クライアント企業から求められるようになってきています。
欲しいのはデータの“解釈”
澤田:「結果の数値だけでなく、解釈が欲しい」、もっというと「打ち手を提示してほしい」というニーズも出てきています。また、ビッグデータの時代ゆえに、スピードも桁違いに速くなっているので、限られた時間の中でいかに質の高い打ち手を提案できるかどうかは大きなチャレンジです。こうしたクライアントニーズの高まりは、近年で変化している点のひとつだろうと思います。
田村:澤田さんがおっしゃった「打ち手へのニーズ」に応えるためには、我々は十分な注意と配慮をするべきだと思っています。楽天インサイトはリサーチ会社でありながら、同時に楽天グループの一員としてユーザーIDを含め楽天のビッグデータを活用しているので、データの取得元である楽天のメディアでの打ち手が、当然ながら有力な提案になります。それが我々の独自性であり、優位性でもある。また、少なからずのクライアントが、それでよいと考えてくださって特色のある提案を求めていただける。ただ、そこに少しでも、クライアントではなく楽天グループのメリットという思惑が混じってはいけないと自戒していますし、社内にも徹底しています。
澤田:そうですね。その点では、冒頭で三木さんもおっしゃった「リサーチャーの教育」が大きく関わってくると思います。
田村:実際にお二人には今、人材育成も中心的に進めていただいています。それを含め、どういう組織が理想だとお考えでしょうか?