デジタルマーケティングの発展と浸透が進むなかで、マーケティングリサーチ領域においても、よりビッグデータを活用した新しい取り組みの必要性が求められている。この時代において、“人間の本質を見る”上で大切なこと、マーケティングリサーチャーが向き合うべきこととはなんだろうか? 楽天インサイトの田村篤司社長と、いずれもリサーチ業界をリードしてきたベテランである、顧問の三木康夫氏とリサーチ統括部部長の澤田裕行氏が、マーケティングリサーチの伝統と未来について議論する。
データは正確でこそ意味がある
田村篤司(以下、田村):今年リブランディングを実施した楽天インサイトは、ビッグデータを活用した新しい調査手法の開発と並行して、長い歴史のある従来型の調査手法の発展と基礎教育にも力を入れていきます。今回はその基盤を固める存在であるお二人に参加いただきました。早速ですが、まずリサーチ業務において大切にしてこられたことをうかがえますか?
楽天インサイト株式会社 顧問 三木 康夫氏
楽天インサイト株式会社 リサーチ統括部 部長 澤田 裕行氏
三木康夫(以下、三木):私は調査会社とメーカーの調査部を経て、現在は楽天インサイトでリサーチの技術顧問をしています。もう50年近く、一貫してリサーチ関係の仕事を続けています。時代は変われど、リサーチ業務において大切なことは変わりません。それは「信頼できるデータを提供する」ということです。調査結果は依頼主企業が何らかの意志決定のために使うわけですから、正確さを欠いた情報を出すわけにはいきません。
澤田裕行(以下、澤田):まったくその通りですね。私も三木さん同様、調査会社とメーカーを行き来していましたが、「データが誤っていた」となると、リサーチャーひいてはリサーチ会社の信頼に大きく影響を及ぼすので、最大限の注意を払う必要があると思います。
三木:正確なデータを提供するためには、「信頼性」と「妥当性」が担保された調査をする必要があります。何度繰り返しても同じ傾向が出るような調査設計でなければ、データの信頼性は保たれません。同時に、そもそもその設計が調査の目的に沿っているのか、妥当性はあるのか、という視点も非常に重要です。この2つのどちらが揺らいでも、正確なデータは提供できません。
簡単に噓がつけるからこそリサーチャーには倫理観が求められる
田村:どうすれば調査の品質は保たれるのでしょうか?
三木:ただ統計学的に正しいサンプリングや集計、分析をするだけでは不十分です。従来型のアンケート調査でいうと、調査員、調査票、対象者、そして調査自体を設計する我々リサーチャーという4つの要素の質をすべて上げる必要があります。特に調査を受けてくださる対象者の方々に、調査票の工夫でストレスを最小限にするという観点も大切です。この各要素における誤差をできるだけ少なくし、総合的に調査の品質を高めるには、リサーチャーの暗黙知がかなり必要なので、教育というかリサーチャー間で共有することが難しいところです。

澤田:聞き方ひとつで人の答えは変わってしまいますからね。人の指向性をよく理解して調査を設計する必要があります。
三木:本当に。たとえばパッケージテストで、円形のパッケージと楕円形のパッケージと四角形のパッケージという3案を並べて提示した場合、四角形のパッケージが最も消費者に選好されたとしても、それが正しい答えとは限りません。円形と四角形の二択だったら円形が勝つかもしれません。そういったように、人の回答特性を理解したうえで、調査データを扱う必要があるのです。
澤田:また、調査結果をもっともらしく、でも恣意的に操作することもできてしまうので、そこは高い倫理観が問われると思います。施策の効果測定などでは、クライアントに「“成功だった”と印象づけたい」という期待があるため、色をつけた考察をしてしまうケースも見てきました。クライアント側にいたときにも、調査結果によっては施策が止まってしまうことがあり、それは何とか避けたい、ということで、調査結果を都合よく解釈することがありました。これらは、本来あってはならないことです。リサーチャーの素養として、たとえビジネスに望まれない悪い結果であっても、常に客観的な第三者の視点でデータに向き合って報告するという倫理観、プロフェッショナリズムは欠かしてはなりません。
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- この記事の著者
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高島 知子(タカシマ トモコ)
フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。
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