マーケティング分野における3つの主要AI予測モデル
▼POINT
・AI/機械学習には大きく認識系AI、予測系AI、会話系AI、実行系AIがある
・予測系AIでは主に顧客行動の未来予測、時系列の未来予測、異常検知の3つが活用される
・マーケティングでのAI活用においては”攻めと守り”の両側面がある
AI/機械学習には大きく4つの種類がある。認識系AI、予測系AI、会話系AI、実行系AIの4つだ。アクセスデータやCRMデータ、広告データなど普段デジタルマーケターが扱っているデータ群と相性がよく、AI/機械学習の力を引き出しやすいのは「予測系AI」だ。予測系AIをマーケティングにおいて活用する際、よく使われるAIモデルには以下の3つがある。

「顧客行動の未来予測AI予測モデル」は、たとえばユーザーの各種ログによって、1ヵ月以内などの短期行動を予測したり、1年後の中期行動を予測することが得意だ。「時系列の未来予測AI予測モデル」では、たとえば売上や販売個数の過去実績に加え、それらに影響を及ぼす特徴を持つデータ(たとえば天気データなど)をかけ合わせることによって高精度化させることができる需要予測なども行うことができる。「異常検知AI予測モデル」は、顧客行動や時系列数値のいずれにも適用できるが、通常の傾向に則さない異常状態(アノーマルとも表現される)をキャッチ・監視し、アラートを投げてくれる。
AI予測モデルがもたらす攻めと守りのマーケティングインパクト
「顧客行動の未来予測」「時系列の未来予測」「異常検知」、それぞれのAI予測モデルをマーケティングの高度化もしくは最適化のために活用する場合、”攻めと守り”の両面でインパクトがもたらされる。

攻めのAI活用としては、「顧客体験/UXの向上」「売上の向上」「機会損失の積極的防止」などがそれにあたる。たとえば、顧客行動の未来予測AIモデルを構築し、ユーザー一人ひとりの直近の行動予測ができたらどんなことができるかイメージして欲しい。「ユーザー Aは2週間以内にカテゴリーZの商品を買う可能性が高い。0から1までのスコアで見ると0.9ほどその予兆が出ている」といった予測を常に先回りで手にすることができるとしたら、あとはマーケターの料理次第で大きく顧客体験/UXを向上させることができるはずだ。また、「累積金額も多く上位客であるユーザー Bが、一年後に休眠客になる予兆が行動ログからでている」とAI予測モデルにより予測判断ができたとしたら、使えるマーケティングチャネル(DM、コールセンター、広告やLINEなど)をフル活用して、特別オファーなどによって機会損失を積極的に防止することもできる。これらは勿論、売上の向上にもつながる施策になる。これまでのデータ活用の中心だったデータ分析は、あくまで過去の結果から傾向を得るものであり、特に顧客の態度変容テーマにおいては、「気づいたときには手遅れ」となる可能性が高い。AI予測モデルはその点、未来の行動予測(態度変容の変化も)を行えることから、マーケターが攻める際の最強の味方になりえるのだ。
一方、守りのAI活用としては、「コストカット」「リスク管理」「早期対策」などがある。よくあるケースとして、商品単位での在庫予測(時系列の未来予測)を行い不要な在庫費用をカットするAI予測モデル活用があるし、また、顧客観点でいっても、たとえば「3ヵ月以内の購入可能性スコアが0.2以下のユーザー群がウェブ訪問者全体の30%いる」ということがAI予測モデルにより先回りでわかれば、リマーケティング対象から外し広告予算をコストカットすることもできる。また、異常検知においては「特定地域においてだけ、特定の商品FAQがとても見られている」というようなことがわかれば、何か有事兆候を示している可能性があり、リスク管理・早期対策のための気づきを与えてくれるだろう。
続いて、AI予測モデルにおけるもう一歩突っ込んだ具体例を示したい。
