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イベントレポート

森永乳業が考える、ブランドステージごとの戦略/広告を打たない「プレコミュニケーション」とは?

デジタルで創出する顧客とのコミュニケーション

 デジタルとデータの出現によって、消費者一人ひとりに向き合ったコミュニケーションが可能になっている。森永乳業がデータを通してチャレンジするのは、「知る」「知らせる」「交流する」を通じたエモーション(感動)の創造だ。

「知る」

 これまでパネル調査やフォーカスグループインタビューなどで行っていた定量調査は、デジタルの普及により圧倒的に早く・手軽に行えるようになった。また、シングルソースではなく、購買データや行動データ、流入チャネル分析など、複数のデータをリンクさせ、PDCAを回すことが可能になっている。

 森永乳業もSNS上で商品名や関連するキーワードを検索し、顧客の声を吸い上げる「ソーシャルリスニングツール」などを活用している。寺田氏は、「デジタルを活用すること自体が目的化」する危険性について警鐘を鳴らした。

 「我々のようなEC企業じゃない企業が『AIを活用するべきだ』とか、とにかくイノベーションや技術でできるようになったことに乗っかって、結果振り回されることは多い」(寺田氏)

 続けて、「大きなインフラを構築して『何しよう』と考えるのではなくて、『この目的だったらこういう構築が必要ですね』というように都度プランニングしながら実行すること。そして、購買データを持った企業と一緒に取り組みを行うことが重要です。その中でノウハウも蓄積していく」とも語った。

「知らせる」

 「知らせる」という領域で最も重要なのは、「嫌われない方法で、情報を知ろうとする層に有効なメッセージを出していくこと」だと寺田氏は語る。

 また、「過度な追跡や情報の配信、あるいは文脈なき広告配信といったものは嫌われる傾向にあります。電車でよく広告を閉じるために「×」を押している方を見るんですが、そういったものは嫌われる広告になってくると思います」と、消費者の視点に立った訴求法がコミュニケーションの根幹にあるべきだと語った。

「交流する」

「Newの森」トップページより

 コミュニティサイト「Newの森」では、交流を通して顧客のエモーションを創出することに挑戦している。同サイトでは、クイズなどの参加型コンテンツの他、腸内フローラの働きについての理解を促進する全12話のコンテンツを配信。通常の広告ではスキップされてしまう内容も、1話ずつ公開することでユーザーの「楽しみ」という感情を刺激することにつながる。

広告を打たない「プレコミュニケーション」とは?

 寺田氏が言う「プレコミュニケーション」とは、広告を打ち出す前の文脈づくりだ。

 「例えば選挙で、選挙の時だけ駅で演説している人の話と、選挙じゃない時も選挙と同じように演説を続けている人と、どちらの話が響くかを考えた時、後者のほうが本当に我々のことを考えているのではないかという発想に近い」と語る。

 これまで、一般的な広告活動は、「消費者の購買意思決定のフェーズ」のみに焦点を当てていた。それが次第に「購買時点」「消費時点」と広がりを見せ、「消費後(リピーター獲得/リテンション)」への意識が強まっていったという。そんな中、森永乳業が積極的に取り組んでいるのは、購買前後に限定しない、消費者の生活全体に寄り添っていくコミュニケーションだ。

 ヨーグルトブランド「ビヒダスヨーグルト」を訴求する際には、新聞社やテレビ局とのコラボレーションを実施。腸内フローラの重要性を扱ったコンテンツを提供した。こうした活動を通じて、ブランドとの「文脈づくり」をしていく。「プレコミュニケーション」においては原則広告を行うことはないが、企業名や関連するワードなど「連結ピン」を置くことが大切だと寺田氏は語った。

 講演の最後に寺田氏は、「今後は、デジタルとデータという武器を手に入れたので、これに熱い思いと人間性を加えて、感情を動かしていきたい。『知る、知らせる、交流する』をすることで関係を作っていく。企業としてもっとお客さんにとって身近な存在になるということが大事だと思うので、そういった活動を続けていきたいと思います」とその場を締めくくった。

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この記事の著者

富安 純人(編集部)(トミヤス スミト)

MarkeZine編集部
上智大学ポルトガル語学科卒業後、新卒で翔泳社に入社。プライベートではサッカーブログを運営し、週末は寝る間も惜しんでサッカーを観る欧州サッカーオタク。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/08/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/28889

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