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「ヘルシー」なファストフード

健康意識の高まり、その背景にある肥満率の急増

 米国の非営利組織、国際食品情報会議(IFIC)が2018年5月に発表した米国消費者を対象にした調査でも健康意識の高まりが顕著に示されている。

 この調査では、米国の消費者の36%が何らかのダイエットを行っていると回答。前年の14%からおよそ2.5倍上昇していることがわかったのだ。ダイエット方法で最も割合が高かったのはファスティング(10%)。次いで、パレオ(旧石器時代)ダイエット(7%)、低炭水化物ダイエット(5%)、ホール30ダイエット(5%)、高たんぱく質ダイエット(4%)ケトジェニックダイエット(3%)などとなった。35歳以上の層に比べ18〜34歳の方が特定のダイエットに従事している割合が多いという。

 また今回の調査では、前回に比べ体重増加の要因として、砂糖や炭水化物を挙げる割合が多くなっていることも判明した。砂糖を体重増加の要因と考える割合は33%、炭水化物は25%と、2011年以来で最大の割合を記録した。

 食品を購入する際にどのようなラベルに気を付けるのかという質問では、「ナチュラル」が最大で37%となった。2017年の31%から6ポイントの増加となる。また、外食をするときに、どのようなレストランを選ぶのかという質問でも、「ナチュラル」を謳うレストランを選ぶとの回答が26%と最大となり、前年の23%から3ポイント増加した。

 また「オーガニック」を選ぶ傾向も強まっており、食品購入では29%(前年25%)、外食では20%(前年14%)という結果になった。

 この調査結果から健康食に対する消費者の意識がかなり変化していることが読み取れる。なぜこのような変化が起こっているだろうか。まず欧米での肥満問題の深刻化が挙げられるだろう。肥満問題が政府、国民ともに無視できないところまで悪化しており、危機感が醸成されていると考えられるのだ。もう1つは、大手メディアがこれらの問題に一石を投じ、議論を活発化させていることが考えられる。

 OECDのレポートなどによれば米国では、肥満率が2014年に37%、2017に38%と上昇の一途をたどっており、このままでは2030年には45%を超える可能性が予測されている。ロバート・ウッド・ジョンソン財団の調査では、一部の州では60%を超える可能性も指摘されている。国民の半数近くが肥満となった社会では、医療費高騰や生産性低下により、甚大な経済損失を生み出す可能性が指摘されており、メディアも頻繁に取り上げていることから、危機感の醸成と意識の変化が生まれたと考えられる。

 また英国でも状況は悪化している。OECDのレポートによれば、肥満率トップは38%の米国だが、英国も27%で世界6番目。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンなどの調査では、何も対策がなされない場合2045年までに英国では国民のおよそ半分の48%が肥満になる可能性が指摘されており、楽観視できる状況ではない。英国政府は、肥満問題が改善されない要因の1つに砂糖の過剰摂取があると考え、今年4月からソフトドリンクに対して「砂糖税」を導入するなど肥満対策に本腰を入れ始めている。また、甘いお菓子も槍玉に挙がっており、一部では「チョコレート税」を導入すべきという議論も起こっている。

 砂糖税に関しては英国だけでなく、スペイン、アイルランド、フランス、ベルギー、ノルウェー、フィンランドなど世界28カ国と米国の7都市で導入されており、現在もニュージーランドなどが導入の是非を巡る議論を活発に行っている。海外の大手メディアは積極的に砂糖の過剰摂取と健康への影響を報じており、世界的に大きな議論となっているといえるだろう。OECDレポートで肥満率上位のメキシコ(世界2番目)とハンガリー(4番目)では、ソフトドリンクに課税する砂糖税だけでなく、不健康な食事に課税する「ジャンクフード税」も導入しており、まだまだ議論は活発化しそうな様相だ。

 米国ではCNNがある調査レポートを引用し、ファストフードチェーンの抗生物質問題を取り上げ注目を集めた。通常、食肉となる家畜の育成には、病気を防ぐために抗生物質が投与されるが、この抗生物質が食肉に残留し、最終的に消費する人間に知らず知らずのうちに蓄積されてしまうという。これによって抗生物質耐性が強まってしまい、いざというときに効果がなくなってしまう。

 また抗生物質耐性が強化された「スーパーバグ」というバクテリアを生み出してしまう危険性も指摘されている。こうした問題を受けて、消費者団体などが各ファストフードチェーンの抗生物質に対するポリシーや取り組みを評価・ランク付け、レポートにまとめた。大手メディアのCNNがこのレポートに言及したことで、多くの消費者が食の安全性や健康を考えるきっかけになったはずである。

 消費者の間で危機感が醸成され、大手メディアがしっかりと議論を活発化させている状況を鑑みると、欧米では健康意識が根底から変わりつつあるのではないかと思えてくる。社会の様々なプレーヤーを巻き込み、新しい形の社会をつくりあげていく「ムーブメント」であるのは間違いなさそうだ。

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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

生成AI関連のトピックを中心に執筆。最近の注目トピック/キーワード:エージェンティックAI、LangGraph、Deep Research、Anthropic、オープンソースモデル

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/08/24 14:30 https://markezine.jp/article/detail/29048

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