「所有」から「利用」へ。思考のシフトが新しい需要を創造する
スペースマーケットは、場所の貸し借りのマーケットプレイスです。起業したきっかけのひとつに、不動産の非効率性があります。活用されていない、いわゆる「遊休不動産」は日本全国に多数存在し、社会問題化もしています。不動産駐車場市場が月極から時間貸しに軸足を移していったように、オフィスやショップ、飲食店、自宅ですら最終的には時間単位で貸し借りするような世の中になっていくでしょう。
生活者(個人)も企業も、物や不動産を「所有」することよりも「利用」することを重視するように、思考がシフトしています。実際、時間単位でのスペース利用は、想像以上にニーズがあります。利用者側にとっては、場所の選択肢が増えることで、これまでフォーマット化されていた消費行動が変化し、新しい需要の創造にもつながっています。
たとえば、これまで当たり前のように飲食店で行われていた懇親会やパーティーが、レンタルスペースに変わることで、過ごし方の自由度が高まります。また、これまで活用されずに困っていた古民家が、時間貸しスペースとして流通にのることで、コスプレイヤーの方たちの撮影・活動場所というニーズに合致し、新しい経済循環が生まれました。これは、想像もしていなかった嬉しい化学反応で、古民家のオーナーと若者の間での新しい世代間コミュニケーションも生まれています。
不動産の活用用途を提供側で提案することは必要ですが、使い方を限定せずに、あえて余白を作っておくことが、今後もっと予測が困難になる未来の細やかなニーズに対して、柔軟に対応するためのポイントとなるでしょう。

株式会社スペースマーケット 代表取締役 重松 大輔氏
1976年生まれ。2013年にフォトクリエイトにてマザーズ上場を経験後、2014年にスペースマーケットを創業。2016年には一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し代表理事に就任。
クルマを軸に広がるコミュニティと新しい世界
Anyca(エニカ)は個人が所有しているクルマをシェアする、CtoCカーシェアリングのサービスです。2015年9月にリリースし、これまでに5,000台以上のクルマをご登録いただいています。
CtoCカーシェアサービスを運用している中で、クルマの所有に関する意識の変化を感じます。以前、私は所有していたクルマをAnycaで毎月乗ってくれていたドライバーさんに個人間取引で売却したのですが、その方は既に何度もそのクルマに乗っているので、クルマの整備状況や故障リスクを把握している上、これまでのシェア実績から今後の維持費軽減が可能だと判断して購入してくださいました。
現在でも再販価値を鑑み、所有するクルマを選ぶ方は多くいらっしゃいますが、最近では、このようにシェア価値(≒Anyca内人気)を鑑みて所有するクルマを選ぶ方も出てきています。
また、近くにAnyca登録車やBtoCカーシェアステーションがある場合、複数台のマイカーを所有している状態と同じになり得るので、それとはタイプが異なる、趣味嗜好が強いクルマをファーストカーとして購入される方も増えています。さらに、人と人とがつながることができるのはシェアリングエコノミーの大きなメリットです。クルマを軸としたコミュニティができ、そこから新しい価値が生まれる。信頼関係が作られた後の世界は、それまでと全く異なります。
カーシェアで作られたコミュニティが、カーライフシェアへと拡がっていき、よりカーライフが便利になっていくでしょう。

株式会社ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部
カーシェアリンググループ グループリーダー 馬場 光氏
2012年4月にDeNAに新卒入社。入社後、モバイルゲームの開発・運用を行い、Mobageタイトルのリードエンジニアやプロジェクトマネージャーを経験。2015年1月から、エンジニアとしてAnycaの立ち上げに携わり、リリース後はシステム責任者として新機能の開発・運用を行う。2017年9月より事業責任者を担う。