「ふるさと納税」寄附促進のためのシナリオづくりとMA活用術
――いまお話しいただいた各社の顧客ロイヤルティを高めるために、実際にどうやってITの力を活用しているのかについて、お話しください。
武内:先ほどふるさと納税の仕組みについてお話ししましたが、ふるさと納税を実際にしていただくときに、「ふるさとチョイス」が絡むのは寄附の申し込みの部分です。サイトには、色々な自治体の取り組みやお礼の品が紹介されているので、それを見て寄附先を選んでいただきます。
その上で、「ふるさと納税初心者」「やり込んでいる方」というように成長軸と、「お得寄り」「地域貢献寄り」といったふるさと納税をする理由の傾向とで四象限に分け、ユーザーを整理することが多いです。
デジタルの施策だけでなく、たとえば有楽町に開いている「ふるさとチョイスcafe」では、セミナーの開催やその場で申し込み手続きを案内したり、リアルイベントなども開催しています。デジタルの話でいうと、ユーザーの半数以上に購読いただいているメールマガジンが影響としてはかなり大きい。MAで施策の管理をしています。
たとえば、ふるさと納税には寄附控除上限額があるのですが、上限額までやらないユーザーの方って多いんです。さらには、やらない状態にも色々あると思っています。具体的には、「お礼の品が集中して届いて冷蔵庫がいっぱいになってしまう」とか、「控除上限額を上回らないか心配」といった声などですね。そうすると、我々も自治体も用意するシナリオが変わってくるわけです。冷蔵庫がいっぱいなことが理由であれば、「配送時期が選べる品」「食品以外の品」を紹介したり、控除上限額が心配であれば、サイトでシミュレーションができるので、まずはそれを勧めたり。どれにあたるユーザーなのかは、サイト内の利用動向から見た上で判断し、色々なステップメールの配信をしています。
――大体シナリオは何種類ぐらい考えていらっしゃいますか。
武内:基本で動いているものが20種類ぐらいあって。あとはタイミングによっても変わってきますね。
「位置情報×天候情報」でクーポンをより特別なものに
――ありがとうございます。次に、すかいらーくさんの仕組みについて伺えればと思います。
和田:まず我々が注力するデジタルメディアとしては、アプリ、メール、Twitter、Webサイトがあります。
いまは特に、アプリの情報を有効活用しなければと細かくデータを取っているところです。今年4月に、それまで業態別だったものをブランド統合アプリとしてリニューアルしました。現在の累計ダウンロード数は1,500万を超え、1日に平均2万5,000ほどのダウンロードと、多くのお客様にご利用いただいています。
日々クーポンを配布しているのですが、ただ出すのではなく、「時間×位置」でセグメンテーションをして、クーポン付与の前にプッシュ通知をしています。その間に利用しているツールとして、「AWS Pinpoint」でユーザーの情報と行動履歴をT-POINTデータなどと統合しながら管理しています。それにジオターゲティングのための位置情報を「Profile Passport」で、さらに1日3回天気APIから天気情報を取得して、セールスフォースの「Marketing Cloud」を使ってクーポンやプッシュ通知を出し分け、運用しています。セグメントは、「ブランド別」「キッズ/ノンキッズ」「アルコールセグメント(20歳以上)/ノンアルコールセグメント(19歳以下)」「性年代別」「テレビ告知/実験用」など、色々なパターンで行っています。
シナリオには、アプリ接触状況に合わせてスペシャルクーポンや、雨の日にお得なクーポンを配布したり、位置情報を使って、ご来店いただいた後にはお礼のプッシュ通知などを行っています。
雨の日クーポンは特に効果が絶大です。これまでだと雨の日はどうしても外食する人が大幅に減るのが常だったのですが、最近は雨の日クーポンを頻繁に出しているので、雨の日こそ売上が良い店舗もあるほどです。まったく違う次元に入ったなと。
武内:雨の日のクーポンって、他の施策であれば紙でも代替案があると思うのですが、タイムリーに送れるというのはやはりすごいですよね。
6種類の自動配信シナリオ
- 定期クーポン:アプリ接触状況に合わせたプッシュ抑制と、スペシャルクーポン最適化
- Thank you クーポン:スペシャルクーポン利用をトリガーとしたプッシュ配信
- 誕生日クーポン:登録された誕生日をトリガーに来店を促すプッシュ配信
- Welcome クーポン:アプリ新規ユーザーに対し、アプリへの理解度・関心度を深めさせるプッシュ通知
- 雨の日クーポン:お住まいの地域の雨情報をきっかけに来店を促すプッシュ通知
- 天候クーポン:お住まいの地域の天候・気象情報をきっかけに来店を促すプッシュ通知