中身が良質なバズなら売り上げにつながる
先述した通り、BOTANISTがリリースされた2015年当時、SNSの主流はInstagram移行し始めていた。だがプロモーションにInstagramを積極的に利用している企業は少なく、当然インフルエンサーマーケティングという言葉も主流ではなかった。

そんな時、人脈のあるスタイリストや美容師、タレントなどの著名人にブランド紹介の投稿をしてもらったところ、雪だるま式に一般ユーザーが真似て投稿する現象が起こった。投稿数が増えれば増えるほど、店頭での売上も上がっていったそうだ。
しかし、SNS上での“バズ”は必ずしも商品売上につながるわけではない。SNSでの盛り上がりを売上につなげられた理由について、今井氏は次のように話す。
「バズの中身が商品と紐づく良質なものであることが重要だと思います。僕らの場合は、全国で店頭配架の準備が整ったタイミングでSNSとWeb広告のアクセルを踏み、マス広告以上の効果を生むようなプロモーション設計を意識していました。
あとは、フィルターバブルを逆手に取ること。趣味系統が似ている人達に同時期にアップしてもらうことで、フィードに表示されやすく設計し、認知を大きく高めることができました」(今井氏)
ブランドの本質をクリエイティブで表現できる理由
最近では、BOTANIST以外にも“ボタニカル”を謳ったヘアケア商品が出てきている。これは、BOTANISTが表現してきた“ボタニカルライフスタイルブランド”という新たなカテゴリが、世間一般に理解されている証拠であろう。マス媒体でのブランド訴求すら難しい今の時代、デジタルを起点にどう世界観を表現していったのか。
「デジタルでのブランド表現は、当時まだハイブランドやラグジュアリーブランドも模索している状態だと感じていました。つまり、デジタルはブランドを新しく表現できる“フラットフィールド”だったのです。デジタルでの表現を突き詰めれば、ブランドを構築できると判断しました」(今井氏)
たとえば、上の動画に出てくる男性は、コスタリカの山奥にあるツリーハウスで暮らしている実在の人物だ。ボタニカルライフスタイルを体現している男性を通して、“植物と共に生きる”というBOTANISTのコンセプトを表現している。動画の最初だけを見ると、これがプロモーション用の動画だとはわからないだろう。
このように、クリエイティブで世界観を届けることができるのは、クリエイティブとブランドコンセプトを内製する“インハウスクリエイティブ集団”が社内にあるからだ。
今井氏は、インハウスの強みとして、「1.パーパスドリブン」「2.スピーディーで強固なブランディング」「3.データドリブンによる高速PDCA」の3つを挙げる。
「パーパスドリブンでは、特にWhyを意識しています。『なぜ僕らはこのブランドをやるのか』『なぜこの仕事をしているのか』。この本質を自分たちで捉える。ここでいう本質とは、ブランドアイデンティティです。BOTANISTであれば、植物と共に生きるボタニカルライフスタイルを提案して、人々に少しでも安らぎを与え、良い生活、良い人生を送ってもらうこと。これを提案するためにクリエイティブがあると思っています。会議でも、ブランドアイデンティティは時々問いかけるようにしています。ここがブレないことが重要です」(今井氏)

そして何よりも、ブランドの軸を捉えている人間がその感性に上乗せする形で、データドリブンによる高速PDCAを回していることが、I-neの最大の強みだ。パッケージデザイン・什器のABテストやランディングページのABテスト、Web広告結果データ、店頭POSデータ、SNSやWebサイト上のデータを基に、広告のクリエイティブはもちろん店頭のPOPまで、PDCAを反映させることにこだわっている。