金融×エンタメの可能性を検証したかった
――はじめに、『セブンコンシェルジュ』がどういったサービスなのかご説明いただけますか?
長沢:『セブンコンシェルジュ』は、銀行での取引をもっと楽しいものにしたいという思いから始まったプロジェクトです。普段使うATMからキャラクターの声が流れてきたり、操作画面にキャラクターが登場し、お金の管理をサポートしてくれたりするなど、金融とエンタメのコラボという新たな可能性の検証を目的としています。
――サービスを提供することになった経緯について聞かせてください。
長沢:「金融×エンタメ」という文脈では、キャラクターカードの発行やゲームアプリの開発、キャラクターの音声を収録したCDの制作など様々な選択肢を検討していました。ユーザーに刺さるサービスを提供するためには、まずはターゲットの絞り込みが重要だと認識していました。そのため、まずはペルソナの設定・キャラクター制作から着手しました。
当社のATMは、これまでも幅広い年齢層にご利用いただいておりましたが、若年層の女性の方への浸透が十分でないという課題がありました。そこで、自らの銀行口座を初めて持つような若年層の女性にターゲットを絞り、さらに「アニメ・イラスト・声優好き」というセグメントを行いました。
――ネット上で『セブンコンシェルジュ』が話題になった理由は何でしょうか?
長沢:2018年6月下旬からティザーサイトとTwitterアカウントを公開し、7月にスマートスピーカースキルをリリース。8月には同人誌の即売会への出展とATM設置を実施しました。すると徐々にネット上での注目度が高まり、認知が拡大していきました。やがて、Twitterでの口コミなどにもつながっていきました。
セブン銀行のATMが乙女ゲー化してて???ってなってる
— みくおじ@10/26 SHAKES名古屋 (@pdlojisan) 2018年9月24日
キャッシュカード入れたら小野友樹に「何しに来たんだよ?」とか言われてめっちゃ恥ずかしい
金下ろしに来たんだよpic.twitter.com/AZeGMePKjV
――ネット上で話題になるよう、何か御社のほうから仕掛けたことはあるのでしょうか?
長沢:これといったことは特にありません。同人誌の即売会への出展やATM設置の段階で既に『ROCKET NEWS 24』などのネットメディアで取り上げていただいていました。そこに、実際にATMを利用された方々の口コミが加わり、効果的に拡散されていったのだと思います。
――「銀行」は堅いイメージを持たれがちだと思いますが、こうしたキャラクターを採用した企画に対して、社内で反対の声はありませんでしたか?
長沢:企画自体は、極めてまじめに、妥協せず考えました。ターゲットであるアニメのコア層にも刺さるよう、デザインのクオリティには相当こだわりましたね。ATM設置にあたっては、実際に利用した際にどう感じるかが重要だと思い、社内のテスト機で当社の経営層に体験してもらいました。
どこまで企画のコンセプトを理解してもらえるか、正直不安はありました。それでも、プロジェクトの各メンバーが熱意を持って説明している姿を見て、これなら大丈夫だと確信しました。経営層からも「納得とまではいかないけれど、君たちがそう言うならやってみよう」という声をいただくことができました。その他、最終的なサービス提供に至るまで、社内では特に反対意見は出ませんでした。