大型プロモーションが意味のある体制に
写真左:オイシックス・ラ・大地株式会社 CMT 兼 株式会社シンクロ 代表取締役 兼
株式会社フロムスクラッチ CIO(Chief Innovation Officer)
西井敏恭氏
CMOサポートのサービスを展開するシンクロの代表取締役、およびオイシックス・ラ・大地のCMTとして国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーを担っている。
写真右:株式会社フロムスクラッチ 執行役員 CMO
三浦 將太氏
2015年にフロムスクラッチに入社。入社以来Marketing-Unitにて、自社プロダクトのプロモーションおよびブランディングプラン策定、ビジネスディベロップメントなどに従事。
西井:まず、b→dashのCMを制作し、タクシー広告や交通広告、ネット動画広告を駆使して大型プロモーションを仕掛けた背景を教えてください。
三浦:大きく3つの理由があります。1つ目は、プロダクトや組織体制が整ったからです。まず、プロダクトに関しては新しい商品プランを設計しました。というのも、大型のプロモーションを仕掛けることで、これまでは価格の問題でターゲットになりえない企業からも多く問い合わせをいただくことが想定されるからです。
そういった企業のリードも“無駄”にしないよう、月額5万円からと従来よりも手軽に導入できる「b→dash Lite」をリリースしました。これにより、より多くの企業へb→dashを届けることができるようになりました。
同様に、総合およびWeb専業の広告代理店に対してもコンタクトを取れる体制を整備しました。コミュニケーション量を増やせば代理店の担当者の方々からも問い合わせが確実に増えます。この間接的なチャネルからの問い合わせ増加も見越して社内体制を変更しました。加えて、営業やカスタマーサクセスの体制も先んじて整えていたことで、増加する案件に対応することができました。
2つ目は、上記の体制で行ってきたプロモーション効果が安定し、適切なROIの基準が見えてきたからです。流入数や資料請求数といったWeb上のKPIだけでなく、リードランクごとのアポ率や商談率、コンペ勝率、平均提案期間、リード復活率など、プロモーションからセールスに至るあらゆるデータを取得し、KPIとしてモニタリングする素地を整えていました。そのため、効果も想定でき、今回お話しする大型プロモーションに踏み切れました。
課題は決裁者の認知向上
西井:マーケティングの話をする時、4Pで言うところのプロモーションの話に重きを置かれがちですが、三浦さんの話はプロモーションだけでなく、プロダクト・プライス・プレイスまで含めて考えられていますね。b→dashも、これまで開発に投資してきたからこそ、大型プロモーションが効くプロダクトに成長しているんでしょうね。
3つ目の理由はなんでしょうか。
三浦:ブランディングの重要度が高まっていたからです。これまでは、ネット広告の配信やセミナー・イベントの出展、広報など、いわゆる”担当者へのリーチ”には力を入れていました。そのためリード獲得数や訪問数といった数字は順調に推移していきました。
ところが「決裁者であるマネジメント層や経営層への認知とイメージが弱い」という課題が表出しました。そのため、なかなか稟議が進まない、コンペの最終段階で「聞いたことがないから」失注するといった事態も招いていたんです。
ブランディングは非常に抽象的な概念で下手に手を出すと、“砂漠に水を撒く”ことになりますが、我々の場合は、どの層に知ってもらいどのようなイメージを与えたいかが明確であり、さらにそれによって増加させたいKPIも定まっていたので、決断することができました。
BtoBのサービスを成長させていくと、「認知」「獲得」「育成」「受注」という4つの壁にぶつかります。「認知」は、広告チャネルと出稿量を増加することで突破しました。今回、タクシー広告をはじめとする交通広告にも踏み切りましたが、こちらは「認知」だけではなく「受注」にも大きく寄与しました。
もともと意思決定者層を狙った施策でしたが、タクシーでb→dashにあらかじめ触れていることで、稟議が通りやすくなったり、コンペにも負けなくなりました。その結果、アポ獲得率や案件化率、コンペ勝率が2倍以上に向上しました。