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第106号(2024年10月号)
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MarkeZine Day 2018 Kansai(AD)

顧客体験を軸にしたデジタル変革でLTV向上を支援/DNPが語った統合マーケにおける3つのカギ

 近年、「顧客体験」の価値が企業競争力に直結する時代になってきている。一人ひとりにパーソナライズされた体験は、顧客ロイヤルティの向上やLTVの最大化に貢献する。しかし、そうしたパーソナライゼーションの実現には、下支えとなるデジタル基盤の整備が欠かせない。「MarkeZine Day 2018 Kansai」に登壇した大日本印刷 デジタルマーケティング本部の小林圭一氏は、顧客がどのような体験を望んでいるのかを理解する手法や、体験を改善していくために必要となるマーケティングテクノロジーの活用について語った。

「顧客体験」をタッチポイントごとにスコア化

 商品・サービスの機能的価値での差別化が難しくなっている現在では、「顧客の状況に応じた『体験価値』をいかに適切に提供できているかが、企業競争力に直結していると言っても過言ではない」と冒頭で述べた小林圭一氏。

「MarkeZine Day 2018 Kansai」会場の様子

 この「体験価値」を提供するためには、購入検討から購買までのあらゆる接点で、顧客ごとの思考・行動に合わせたコミュニケーションを設計していくことが必要となる。ここで重要となるのが、カスタマージャーニーマップをもとにした顧客体験の評価だ。

 大日本印刷(以下、DNP)は、顧客体験を定量的に評価できるサービス「エモーショナル カスタマージャーニーマップ」を2018年1月にリリース。DNPは、かねてからカスタマージャーニーやペルソナ作成の支援を行ってきたが、同サービスは、各チャネルの顧客体験をスコアリングし、改善すべきポイントを可視化できる特徴を持つ。これによって、「顧客の声をもとに、次に打つべき施策の優先順位を決めていくことができる」と小林氏は述べた。

参考リンク:「カスタマージャーニーマップとNPSの組み合わせでできること」

 また、「顧客体験ニーズの傾向として、パーソナライズされた体験を欲している生活者が増え始めている」と小林氏は主張。ある調査では、パーソナライズされたオファーやサービスは、顧客の購買にポジティブに作用するという結果も出ているとのことだ。

 「ビジネスを成長させる上で、お客様一人ひとりの体験価値に寄り添うようなパーソナライゼーションをしていくことが非常に重要な要素となってきています。お客様それぞれのコンテキストを捉えた、きめ細やかなコミュニケーションを実行することを目的としたデジタル基盤の整備、というトレンドがさらに加速していくのではないでしょうか」(小林氏)

デジタル基盤を実現する3つのフェーズとは

 続いて小林氏は、デジタル基盤構築のためのポイントとして「Input」「Processing」「Output」の3つを挙げた。

1.「Input(データ収集)」

 まず、デジタルを考える上で欠かせないのが「Input」、つまりデータの収集だ。ファーストパーティーデータの活用はもちろん、セカンド/サードパーティーデータも活用し、より顧客像をリッチにしていくことが重要だと小林氏は述べた。様々なデータがある中で、小林氏はいくつかのソリューションを紹介した。

1-1.「価値観クラスター」

 はじめに小林氏が紹介したのは、DNPが独自開発した「価値観クラスター」を付与するサービス。同サービスでは、「価値観判別アンケート」を用いて、顧客がどのような価値観を持っているのかを導き出し、「価値観クラスター」のセグメントで顧客を分類。それぞれに適したコミュニケーションやクリエイティブデザインでアウトプット(施策)を実行することが可能になる。

 ある食品系宅配業では、この「価値観クラスターのプロファイル(価格・健康どちらをより重視しているかなど)」を活用し、顧客それぞれに応じたチラシを送付したことで、結果的に売り上げが向上したそうだ。

1-2.「レシート(購買)データ」

 2つ目に紹介されたのは、スマートフォンアプリを活用したデータ収集。DNPの家計簿アプリ「レシーピ!」では、顧客のレシートデータが収集できるため、様々な流通を横断した購買傾向の分析が行える。これによって、「どこで」という情報をもとにした店舗の買い回りを可視化できる。

1-3.自社のドメインをまたいだデータの利活用

 その他、最近では、旅行業界横断で旅行者データを保有しているベンダーが登場してきている。こうしたデータを利活用することで自社ドメインを超えた範囲での顧客状況を把握できるため、より的確なコミュニケーションを実現することが可能になる。

 「顧客に寄り添ったコミュニケーションを実現するためには、どんなデータを使えばいいか? という視点での思考が大切です」と小林氏は語った。

収集したデータをどう施策実行までつなげるか

2.「Processing(データ連携・加工)」

 では、様々なソリューションを通じて収集したデータは、どのように管理・統合していくべきなのだろうか。小林氏はまず、きめ細やかなコミュニケーションを実現していく上では、「リアルタイムなデータ連携」が重要であると指摘。具体的なソリューションとして、データマネジメントツール「Tealium(ティーリアム)」を挙げた。

 たとえば、旅行サイトにおいて「大人2名、子供1名」という検索条件が入力されたとする。「Tealium」は、検索実行ボタンを押した瞬間に、「子供1名」という検索条件を含んでいることから「家族旅行」を計画中であると判定。「家族旅行検討中」という属性を、個客プロファイルとしてリアルタイムに付与することができる。

 また、同ツールでは、「特定の属性が付与された瞬間」をトリガーとしたアクションを設定することも可能だ。たとえば、上記のような顧客向けには、この瞬間から広告バナーやWebクリエイティブを「家族旅行」向けのコンテンツに最適化することはもちろん、オフラインではパーソナライズド印刷(DM)の配送手配を指示することもできる。このように同ツールは、顧客の行動と企業のコミュニケーションをつなぐハブの機能を果たしていく。

 続いて小林氏は、「Processing」における「データ加工」のソリューションを紹介した。データの多様化・肥大化にともない、データ分析業務の中でも「データ加工」に関する課題を挙げるクライアントが増加していると小林氏は指摘。収集したデータを活用できる状態にするまでに時間がかかってしまっているそうだ。

 「Paxata(パクサタ)」は、データの整理・加工が手軽に行えるツールだ。セグメントの切り貼りが直観的に行える他、データを混ぜ合わせたいときの結合キーの候補がパーセンテージで自動的に表示されたり、表記ゆれを修正したりできる機能も備わっている。

3.「Output(施策実行)」

 デジタル基盤を構築するための最後のフェーズ「Output」では、小林氏は「パーソナライズドDM」、また「ビーコン」を活用したプッシュ通知が可能なアプリチャネルにそれぞれ言及した。

3-1.パーソナライズドDM

 オフライン領域での施策として、小林氏はDNPのパーソナライズドプリントサービス活用の可能性を挙げた。同サービスでは、ECサイトやマーケティングオートメーション(以下、MA)ツールなどと連携し、得られた顧客の属性データに合わせて最適化された印刷データを自動生成。印刷・発送・効果計測までをシームレスに行う。

3-2.ビーコンを活用したプッシュ型コミュニケーション

 続いて小林氏は、アプリというチャネルでのコミュニケーションが進みつつある中、ビーコンを活用したソリューションの検討も加速してきていると述べた。

 最近では、自社が設置したビーコンのみならず、他社のビーコンとも相互に連携し「他社のチャネルで反応した」顧客に対して、「自社からのコミュニケーション」を仕掛けられるネットワーク型のビーコンソリューションを提供しているベンダーも登場しているという。

デジタル活用でコンテンツづくりも効率化

 セッションの後半で小林氏は、デジタル基盤の構築と同様に重要となるのが「コンテンツ制作環境の見直し」だと述べた。ある調査では、70%以上のグローバルマーケターが「ここ2~3年で制作しなければならないアセットの数が10倍以上に膨張している」と感じていると回答。また、80%以上のマーケターが「アセットを制作し発信していく業務を、より高速に実行していかなければならないと感じている」と答えたそうだ。

 小林氏は、こうした状況では、少ないリソースで多くの活用用途を生み出す「ワンソース・マルチユース」の考え方にもとづいた統合管理基盤がポイントになると述べた。

 「チャネルを超えた一貫性のあるコンテンツを大量に作るためには、ワークフローで統制をとり、過去のアセットを簡単に取り出しやすくする必要があります。また、オンラインとオフラインそれぞれのチャネルに適したコンテンツに変換していくといった機能も、あわせて活用していかなければならない時代になってきました。

 さらに、画像解析技術が進化してきている昨今では、画像の内容を認識し、タグを自動付与して管理効率を高めたり、クリエイティブ制作効率を高めたりするソリューションも登場し始めています。このようなテクノロジーが出てきていることを理解しつつ、コンテンツ生産能力をどこまで高めていくべきなのかを検討する必要があるのではないかと考えています」(小林氏)

「エモーショナル」な顧客体験を一貫して提供するために

 小林氏曰く、DNPのもとにはデジタルマーケティングツール導入後の相談がよく舞い込んでくるそうだ。中でも多いのが、人の流動に関する問題だという。オペレーション担当者が育ってきても、ジョブローテーションや転職によってゼロベースからのスタートが繰り返され、ツールの活用自体をやめようと考えてしまう企業が少なくない。

 こうした課題に対して、DNPではMA運用支援サービスを提供することで解決を図っている。同サービスでは、オペレーション業務をアウトソースできる体制が用意されているだけでなくMA運用のための環境構築も担い、MAによるパーソナライゼーションの実行を支援している。

 最後に小林氏は、「DNPはあくまでも中立の立場に立ち、企業様の課題に応じた最適なソリューションの選定から導入支援、運用支援までを一気通貫で行っています。冒頭に申し上げたように、カスタマージャーニーを定量的に評価し、改善すべきポイントを絞りながら、一歩ずつ顧客体験価値を高めるサポートをしていける点が最大のポイントです。

 DNPがマーケティングコンセプトとして掲げているのは、『Emotional Experience!』。リアルとデジタルをしっかりつなぐことでオムニチャネルコミュニケーションを推進していき、最終的には顧客の感動体験を創出することをミッションに掲げ、今後も活動します」と語り、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/15 11:00 https://markezine.jp/article/detail/29874