サイトのアクセス数は3,000万PVを突破
――『ニッポンの名字』は、年賀状を送る文化が形骸化されつつあるという課題をネットで解決しようとされている取り組みなのでしょうか?
西村:年賀状を1枚でも多くご利用いただきたいという思いの中で、一番ハードルが高いのが「これまで利用したことのない人に、1枚目の利用をしてもらうこと」です。年賀状を書いたことのない人に向けて、「年賀状を書こうよ!」とプロモーションをしても、他人事で終わってしまいます。そこで、今回のようなコンテンツを提供することで、コンテンツの楽しさが年賀状を利用する動機づけになるようにしました。
――ネットで話題になった後、どのような数値上の変化がありましたか?
西村:現時点(2018年11月)で約42万種類、2,000万件以上の名字を検索していただいています。日本には約30万種類の名字があると言われていますが、試しに言葉を入力してみて、名字として存在しているのかと確認される使われ方もあるようです。
また、TwitterなどのSNSでの拡散により、コンテンツへのアクセス数が約3,000万PVにまでのぼりました。アクセスが集中し、サイトにつながりづらくなることもありましたね。他にも、「ガジェット通信」「ねとらぼ」をはじめとするネットメディアやテレビ、ラジオ、新聞などから数多くの取材をいただいている状況です。
――『ニッポンの名字』検索ページはいつまで公開されるのでしょうか?
西村:2019年1月いっぱいまでの公開を予定しています。
コンテンツ力で「自分ごと化」を狙った
――郵便局と言うと世間的にはお堅いイメージを持たれがちだと思います。今回『ニッポンの名字』を立ち上げるにあたり、社内で反対の声はありませんでしたか?
西村:テーマ自体が「名字」という少し堅い内容のものでしたので、あえてゆるいデザインを採用しました。企画担当者内では「これで行こう!」と即決でしたね。また、検索結果の表示も、一括で表示するのではなく、「LINE」のようなメッセージ表示にするように工夫をしました。
――MarkeZine読者のヒントになるような有益なアドバイスがあればお願い出来ますでしょうか?
西村:SNSなどのデジタル上での話題拡散を視野に入れつつも、直接の年賀状のプロモーション訴求は避けました。あくまでもコンテンツを起点にし、後からこの企画は、年賀状の話題を訴求するものだったのだと気づいていただくようストーリーを描きました。直接的な話題訴求を狙うと、自分ごと化されていない層にはなかなか刺さりません。そのため、「急がば回れ」にならい、SNS拡散を視野に入れた取り組みをすることで、本来リーチできなかった層にもリーチができたと考えています。
――どうもありがとうございました。
『ニッポンの名字』が実際にどれだけ年賀状利用に貢献したのか、結果が明らかになるのはこれからですが、年賀状を出すきっかけづくりの一環として、プロモーションの役割は十分果たせたのではないでしょうか。ターゲット層に合わせたUIや、変わった名字を持つ著名人の方々の自然発生的なツイートなど、ある程度のリアクションを先読みしたストーリーを構築することで、低コストでも効果的なプロモーションが実践できるという具体例かと思います。