2019年は「マイクロマーケティング元年」に
デジタルメディア、スマートフォン、そしてSNSの急速な普及により、生活者の情報収集手法はこの10年で激変しました。また、時代の移り変わりとともに「集団」「組織」から「個」の時代へと変化し、ダイバーシティ発想が社会に浸透したことで「多様性」への受容度が高まりました。さらにはECやフリマアプリ、そしてファストファッションなどの台頭により、消費行動や金銭的価値観も大きく変わりました。
これらの社会変動にともない、生活者の価値観の多様化も急速に進んでいます。その結果、企業のマーケティング活動においても、マスメディアを通じて1つのメッセージを発信し浸透を図る従来型の「マスマーケティング」にとどまらず、ターゲットごとにメッセージや手法を変える「マイクロマーケティング」が必要な時代となりました。
特定のターゲットに向けてニッチなプロダクト開発を行ったり、パッケージデザインを変更したりと、「マイクロマーケティング」は広告プロモーションの領域のみならず、マーケティング活動全般においてメーカー各社が取り組みを加速させています。このような取り組みは今後も増加の一途をたどり、2019年は「マイクロマーケティング元年」ともいえる1年になることが予想されます。
女性ファッション誌でマイクロマーケティングはできる?
従来の女性マーケティングにおいて、ターゲット層を明確にする際によく用いられていたのが女性ファッション雑誌のマッピング(ポジショニングマップ)でした。女性の欲求や価値観が、ファッションやメイク、ライフスタイルなどを通してビジュアルでわかりやすく表現されている女性ファッション誌は、ある意味最強のマイクロマーケティングツールであったともいえます。
ところが、デジタルメディアの浸透が進むにつれ、女性は雑誌を購入しなくても、ファッションや美容に関して知りたい情報を好きなタイミングに無料で収集できるようになりました。さらにはSNS、特にInstagramが普及したことで、これまで雑誌で活躍していたモデルやタレントが個人で発信しやすくなったことにより、ファッション・美容トレンドの強力な発信源であった女性ファッション誌の影響力は低下しました。
一方でトレンダーズが2018年6月に20代から40代の女性約6万人に対して実施した調査によると、閲覧することのあるメディアとして「雑誌」と答えた人の比率は、20~24歳女性が29.0%、25~29歳女性が30.1%という結果となりました。これは45~49歳女性の34.5%に比べると低い傾向にあるものの、「新聞」に比べるとそこまで大きな世代差はなく、雑誌は20代女性にとっても、情報源として変わらず一定の役割を担っていることがわかります。
今の女性メディアを取り巻く環境変化は、単なる「紙からデジタルへのシフト」にとどまりません。デジタルメディアやSNSなど、情報収集手段の選択肢が格段に増えたことで、1つのメディアに対する依存度や関与度が弱まり、カテゴリやニーズ、気分によって自由にメディアを使い分け行き来する、いわばメディアのシームレス化・ボーダーレス化が進んでいるのです。
つまり、メディア単体の影響力低下は紙媒体のみならず、デジタルも含めたメディア全般に当てはまる現象なのです。
このようにメディアのシームレス化が進んでいる今、「特定のターゲットのみに情報を届ける」というマイクロマーケティングの難易度はますます高まっています。そこで次のページでは、今の時代にマイクロマーケティングを実現させるための発想と手法についてお伝えしていきます。