データが分散し責任の所在が不明
組織が成長していくなかでデータの管理が複雑になり、いつの間にか誰も全体像を把握しきれなくなっていたというのはよくある話だ。人気コンテンツ(IP)を基盤に、グローバルで事業を展開しているカプコンでもデータ管理と活用に課題を抱えていた。同社では、デジタル変革に向け、デジタルマーケティングに造詣の深い赤沼純氏を迎え入れ、課題解決に踏み出した。赤沼氏はまず状況把握に努めたという。
「カプコンに入る前から状況についてはヒアリングしていたのですが、実際入社してみて、改めて問題の大きさを実感しました。まず、各部署・拠点のデータが分散していて、どこにどんなデータが保管されているのかわからなかった。しかも各部門がどのような数字目標を持って、どう動いているのか可視化されていなかった。また、当社は海外拠点が複数あるのですが、当然時差があります。なので、提出された情報が一体いつ時点のものなのかわからないという問題もありました。さらにデータ抽出のスピードも遅く、あらゆる分析作業に時間がかかっていました」(赤沼氏)
そこで赤沼氏は、BIツールを使ってデータを一元管理し、各部門の動きを可視化しようと試みた。いくつかのBIツールを比較検討した結果、導入を決めたのは「Domo」だった。
小さく早くはじめる
Domo導入の決め手は、グローバル対応している点と、APIが豊富な点の2つであったと赤沼氏。「グローバルに拠点を置いているので、国を跨いで使用できるかどうかは重視しました。また、管理しているファイルソースがバラバラなので、変に加工することがないようにしたかったんです。DomoはAPIが豊富で柔軟性が高いところも魅力的でした」と語る。
昨年の2月から、社内の一部でテスト運用をはじめている。しかし、ツールを導入しても実際は活用しきれずに終わってしまうということも少なくない。赤沼氏はツール活用までのストーリーをどう描いているのか。
「当社の場合、既存ビジネスがかなり大きな規模で動いています。そこにいきなりBIツールを会社全体に導入しても混乱が生じてしまいます。既に確立された仕事の進め方があって、全員がそれに慣れている状態から、急にまったく新しいツールや仕組みを導入するとなっても反発が生じてしまいます。ですので、まずはゼロベースから実績を積んで横展開したほうがベターと判断しました。ちょうど私が入社した2018年はeスポーツ元年と言われていて、カプコンも本格参入するタイミングだったので、まずは新設されるeSports統括本部で活用していくことにしました」(赤沼氏)