一気通貫の価値創造プロセスを部門間で共有する
――有用な情報をコンタクトセンターから引き出すにはどういう手法が有効なのでしょうか。
川野:自身の体験からでも構わないので、ある程度仮説を立ててコンタクトセンターのオペレーターにインタビューすることがポイントだと思います。時には、「こういう問い合わせが多いのでは?」とカマをかけて聞いてみる方法も有効でしょう。実際、それでいろいろな話が出てくることもあります。
ただ、オペレーターも一業務担当者として効率化を求められているのも事実です。だから自分が持っている知見が、マーケティング全体のなかでどれほど重要であるかを認識していないこともあります。この調査がどういう目的で、何を目指しており、そのためにオペレーターに何を期待しているかをきちんと説明しなくてはなりません。継続期間を長くするのか、それとも新規顧客を増やすのか。オペレーターの頭にある業務プロセスを広げることで、コンタクトセンターという顧客接点の役割や、提供すべき価値も見えてきます。
実際の問い合わせ内容に基づき、たとえば「Webサイトのこの部分がわからないから、あまり会員登録が増えないのでは」という仮説が立つと、そこを改善してWeb体験を向上するアクションプランが生まれます。
FAQ改善によりメール問い合わせが3分の1に減少
――実際にTMJが取り組まれた事例の成果を教えてください。
川野:クライアント企業の三井住友カードでは、CXの向上に注力しており、Web分野とコンタクトセンター分野が共同し、顧客の課題解決を支援するFAQのカテゴリーを統一し、よりわかりやすい情報提供に取り組みました。たとえばWebサイトにFAQが載っていても、電話での問い合わせが多いのなら、その情報では不十分ということなので、より解決性の高い回答に更新していきます。また、欲しい情報の検索性や、一見して求めている情報だとわかる視認性などのWeb行動を調査し、それを基に改善することで、メールの問い合わせが3分の1まで減少しました。
仮説やヒントを具体的な改善策につなげていく
――これからCX戦略に取り組もうという企業に対し、アドバイスをお願いします。
川野:まず仮説立案の第一歩としてコンタクトセンターを活用しましょう。なぜならコンタクトセンターは、顧客が自ら必要性を感じ、能動的に情報を取りにくる場だからです。そこに集まっている情報を活用すれば、顧客理解のためのより有用な仮説やヒントが得られると思います。
そして、その仮説やヒントを具体的な改善策につなげていくように支援するのがTMJ CXサービスです。最大の特長は、理想のCXを明らかにするだけでなく、実際のアクションにまで落とし込めること。我々はコンタクトセンター事業を通じて現場に近い立場にありますが、このように現場と上流コンサルティングの両方からアプローチできるソリューションは、実は他にあまり例がないのです。
「コンタクトセンターを最新鋭のITに刷新したい」「目指すべきCXを分析したい」という個別のニーズを解決することは、他でもできるかもしれません。ただ、それらを結び付け、実際にどのような体験を提供していくかは、それぞれの企業で考えるべき課題です。我々の持つ知見や実績は、そうした企業の課題を解決する大きな力になると考えています。