BtoCとの違いは、営業部門が持つ影響力の強さ
――はじめに、中東さんのこれまでのキャリアパスを伺えますか?
中東:元々は、家庭用品「エリエール」を販売する大王製紙に勤め、ベビー用紙おむつの広告宣伝を担当していました。その後ロータスやIBM、デル、アドビシステムズ、シスコシステムズの日本法人でBtoBマーケティングを経験し、現在KDDIで法人向けのソリューションマーケティングを担当しています。
体制としては、大きく分けてIMC(統合マーケティングコミュニケーション)、マーケティング・インテリジェンスおよびデマンドジェネレーション、CS(Customer Satisfaction)をそれぞれ見ていく形ですね。
――BtoC領域や外資での経験をお持ちの中東さんが感じる、今のBtoBマーケティング業界との違いなどはありますか?
中東: 実は、BtoBとBtoCという単純な線引きはできないんじゃないかと最近では感じています。たとえば、商材がボールペンの場合、同じBtoBでも中小・零細企業向けに販売するならば規模の大きいECを活用して受注すればBtoCに近いマーケティング手法が適切かもしれません。一方で、大手企業と消耗品購買の年間契約を結びたいというような話になってくると、同じボールペンでもBtoBのマーケティング要素が重要になってくるでしょう。
このように、同じ商材を扱っていても、売る相手や量によってマーケティングが変わってくるので、単純な「BtoB」「BtoC」という分け方には難しさを覚えることもあります。
これを踏まえた上で、BtoC領域のマーケティングとの違いをひとつ挙げるとするならば、営業部門が持つ影響力の強さでしょうか。たとえば、小消費財では、マーケターはグループインタビューやリサーチなどを行うため、比較的最終顧客である消費者と近いところにいます。その場合、営業部門は小売店などチャネルへの営業活動を通して間接的に販売に関わるため、顧客の顔を直接見ることが少ないこともありました。
対してBtoB領域の場合は、営業部門は最終的な顧客と非常に近い関係にあります。そのため、顧客に近い営業部門が持つ影響力は、BtoB領域のほうが大きいと言えます。
BtoBこそ「One to One」の世界
――実際の手法においてはいかがでしょうか?
中東:ターゲティングの粒度および精度は、BtoC領域と比べて圧倒的に高いレベルで要求されると思っています。
たとえば、自分がIT企業のBtoBマーケターだとして、「大手企業の情報システム部」に自社のシステム製品を売り込むとしましょう。現在、法人と個人経営を合わせた国内の企業数は約400万弱です(参考:総務省統計局)。「大手企業」を上場企業と定義した場合、日本市場の上場企業約3,600社がターゲットとなります(参考:JPX 日本取引所グループ)。よって、大手企業というターゲット含有率は1,000社に1社となります。
そこから、情報システム部の意思決定者を相手にマーケティングをするわけですから、1,000分の1社の中のさらに限られた人がマーケティングターゲットとなるわけです。BtoC領域でもターゲティングは行われますが、セグメントあたりの規模はそれでも何万人から何百万という世界です。