アドフラウド被害に気づいた時、会社や代理店にどう説明する?
MZ:アドフラウドに気づいた時、自社の広告費が不正業者に流れていることを、会社に説明しづらかったのでは?
石渡:2017年当時は、弊社でもアドフラウドに対する理解がそれほどあったわけではないので、説明するのは大変でしたね。なので、アドフラウドを防ぐツールを導入する際は、想定被害額をはじめ、徹底的にエビデンスを揃えました。
もともとAdjustの計測ツールを入れていたので、Adjust・自社双方のデータを突き合わせて、不正なユーザー行動を定義していきました。ある程度不正ユーザー数を把握できれば、CPIと掛け合わせて被害金額を推定できますよね。その被害金額と、不正防止機能導入費用を比較して、導入したほうが結果的にコストが下がりますよと会社に交渉し、導入に至りました。
また、メディアをグロースさせていくためには価値のあるユーザーを獲得しなければいけません。定量的なデータだけではなく、ユーザーの質という文脈でもアドフラウド対策の重要性を伝えました。

マーケター本来の仕事に注力するために、対策ツールを活用
MZ:不正発覚後、代理店に返金交渉をしなければいけなかったと思うのですが、そちらはどのように進めたのでしょうか?
石渡:不正ユーザーの動きを説明して、理解していただくしかありませんでしたね。当時は代理店側の理解もまだそれほど進んではいなかったので、ここでも説明に苦労しました。さすがに今はしっかり理解されている方がほとんどですけどね。不正行為の検証も返金交渉も労力がかかるし、マイナスをゼロに戻すだけの作業なので正直なところ楽しい仕事ではありませんでした。
たとえば、テレビCMを見てアプリをDLしていただいた場合、流入経路は「オーガニック」に分類されるんですが、そのオーガニックを奪っていくタイプのアドフラウドが存在するんです。本来はオーガニックユーザーであるはずなのに、広告を踏んでいない媒体に起因したユーザーということになってしまうのです。このようにアプリDL後のユーザー行動だけでは定義できない場合もあるので本当に大変でした。
本来、私たちマーケターの仕事は、DL数やアクティブ率を延ばしていくために新しい媒体を見つけたり、新しい訴求軸を考えたりするべきです。なのに、返金交渉や不正発見に時間をとられてしまい、そのような攻めの施策を考える時間が削られてしまったのは辛かったです。
佐々:自社で不正をすべて見つけ定義しようとすると、かなり手間がかかるしどうしても正確性に欠ける部分があります。また、石渡さんの仰る通り、返金交渉も大きな負担ですよね。私たちは、アドフラウドが発生してからの対応では遅いと考えています。
当社の場合、独自システムで自動的に矛盾を検出し、不正発生前にカットする仕組みを構築しました。これで、不正の検証も返金交渉も不要になり、担当者は本来のマーケティング施策に時間を費やせるようになるというわけです。
