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MarkeZine Day 2019 Spring(AD)

同じ広告予算でCVを1.2倍に SATORI×オーリーズが語る、匿名ナーチャリングメソッド

 3月7日の「MarkeZine Day 2019 Spring」に登壇した、マーケティングオートメーション(MA)ツールを提供するSATORIの植山氏と運用型広告の戦略立案、体制構築、運用支援をするオーリーズの鈴木氏は、MAツールを活用して広告費を増やさず顧客獲得コンバージョン数を1.2倍にした試みについて発表した。本記事では、その詳細をレポートする。

非対面セールスの重要性の高まり

 最初の話し手を務めたのはSATORIの植山氏。「営業の生産性や働き方改革で悩みを抱える企業は多いのではないか」という疑問の投げかけから本題に入った同氏は、対面だけの営業に限界が来ていることを指摘した。Webサイトなどでの非対面コミュニケーションの機会が増えていることは各種調査からも明らかであり、企業視点ではどこの誰かがわからないまま、顧客が購入の意思決定を進めているように見える。

 SATORI株式会社 代表取締役 植山浩介氏
SATORI株式会社 代表取締役 植山 浩介氏

 その環境でも卓越した成果を出している企業も存在する。植山氏は3ヵ月で商談化率350%を達成したジャストシステム、2ヵ月でWebの問い合わせ率を200%改善した泉州電業の例を挙げた。SATORI自体も営業改革を行い、7四半期連続でライセンス数150%を達成したという。これらの例を踏まえ、植山氏は「短期間で営業成果を上げるために重要なのは非対面セールスである」と訴えた。

 非対面セールスを重視するべき理由は、デジタル接点から入り、デジタルを最も信頼している人たちにとって、対面セールスの効果は小さいからなのだという。植山氏は2年前に自社がビジネスチャットを導入した時の体験から、非対面の間に顧客が意思決定を進める過程を説明した。

 創業したばかりの頃、営業強化が急務と考えた植山氏。当初はコンサルティングやSFAツールが解決策になると考えたが、メディアの記事を読んで情報共有から始めようと決めた。ビジネスチャットを導入しようと決めた後は、4社に資料請求を行い、2社に絞り込んでから両社の営業担当者に来てもらったという。ビジネスチャットツールの営業の立場で見ると、最初にSFAツールが選ばれた場合や候補の2社に選ばれなかった場合は、商談の場に臨むことができない。

 つまり、非対面セールスをしないと、検討のテーブルに乗ることなく他社に受注が決まりかねないのだ。

匿名顧客をデータベース化してコミュニケーション

 顧客がデジタルで検討を進めることにどう対応するべきか。植山氏は「非対面でも対面の時と同じようにすればいい」と答える。対面セールスの場合、顧客データベースを作り、コミュニケーションをしながらタイミングを見計らって提案する。

 非対面の場合も同じで、個人情報がわからない人の分を含む顧客データベースを作り、適切なタイミングで適切なコミュニケーションをすれば本格的に購入検討するところまで進めることができるというのが植山氏の主張だ。

非対面セールスのプロセス
非対面セールスのプロセス

 非対面顧客は、「接点のない匿名顧客」「接点のある匿名顧客」「個人情報のわかる顧客」の3つに分類できる。この3つの非対面顧客とのコミュニケーションを担当するのがMAであり、対面顧客とのコミュニケーションを担当するのがSFAになる。

 顧客データベースの中身もMAでは、「どんなWebページを見たか」「どんなメールを開封したか」「どんなWeb広告をクリックしたか」などの行動情報が中心となる。たとえばMAツールである「SATORI」の顧客データベースの場合では、基本情報とオフライン・オンラインの行動履歴を集め、可視化している。さらに、それぞれのステータスも管理しており、下の図のように匿名顧客と実名顧客の数が一目で把握できる。

非対面データベースでわかる匿名客と実名客の状況
非対面データベースでわかる匿名顧客と実名顧客の状況

 さらにMAには、これらのデータベースを活用したコミュニケーション機能が備わっている。コミュニケーション手段の例として、接点のある匿名顧客にはCookie情報を活用したリターゲティング広告、ポップアップ、プッシュ通知、パーソナライズを、連絡先のわかる実名顧客には、メルマガ、電話、セミナーを組み合わせたアプローチが可能だ。

匿名ナーチャリングと運用型広告の活用

 MAによる非対面セールスの重要性がわかったところで、話し手がオーリーズの鈴木多聞氏に代わる。鈴木氏は「SATORI」の匿名ナーチャリング機能を広告運用の現場にて活用することで、匿名ナーチャリングをより機能させる取り組みについて紹介した。

株式会社オーリーズ 代表取締役 鈴木多聞氏
株式会社オーリーズ 代表取締役 鈴木 多聞氏

 今回両社が取り組んだプロジェクトにおける検証ポイントは、運用型広告が「SATORI」のパフォーマンス向上にどの程度活用できるか。オーリーズは、SATORIが広告運用連携サポートを内製化することを視野に入れ、広告運用上の匿名顧客のナーチャリングにおけるKPI設計からリードナーチャリングの運用までを支援。

 そして、鈴木氏は仕組みの詳細について紹介する前にナーチャリングの評価方法の前提となる、アトリビューション分析について解説した。これは、施策貢献性を可視化し、施策効果を評価するための手法である。

 たとえば、ある顧客の接触経路が、「純広告」「検索広告」「アフィリエイト広告」「リターゲティング広告」だった場合、コンバージョンに直接寄与したのはリターゲティング広告であるが、リターゲティング広告だけをコンバージョンに寄与したとみなしては正当な評価ができない。

 そこで、それぞれの施策が均等に貢献したとみなす「均等評価」の考えを取り入れ、3回の接触経路でコンバージョンに至ったとしたら、それぞれを3分の1の貢献とみなすのがアトリビューション分析の考え方だ。

 そして今回の取り組みでは、広告だけでなく、「SATORI」で行うプッシュ通知などのコミュニケーションもアトリビューション分析の対象に追加。こうすることで、広告施策のROIを改善し、広告投資に活かすことができるようになる。

5つのステップに沿って進めた仕組み作り

 ではここからは、実際にSATORIとオーリーズが行った取り組みの詳細について紹介したい。まず、両者は以下5つのステップで施策を設計した。

1.「そのうち客」「もうすぐ客」「今すぐ客」を定義

2.それぞれの見込み顧客の定義に沿った提供コンテンツの決定

3.コンテンツを読んだ時のページビューをコンバージョンとする発火条件の設定

4.プッシュ通知のオプトインをコンバージョンとする発火条件の設定

5.広告およびSATORIのアカウントへの設定

 「そのうち客」はMAコンテンツを閲覧していないがMAに興味があるユーザー、「もうすぐ客」はMAコンテンツを閲覧しており、基本的な知識を持つユーザー、「今すぐ客」はキラーコンテンツを閲覧しているユーザーと定義。

 商材によって、分類方法やシナリオは変化する可能性があるが、SATORIの場合は同社の営業チームと協議を重ね、提供するコンテンツを決めたという。

読んでほしいコンテンツの割り当て
読んでほしいコンテンツの割り当て

重要なのは段階ごとのKPI設計

 読んでほしいコンテンツの選定後に行ったのが、それぞれのコンテンツのページビューをコンバージョン(中間・最終)とする設定である。ここでは、価値のある読み方がされたかどうかを判断するため、SATORI社内の関係者と議論し、「30秒以上滞在し、かつ半分以上スクロール」したことを条件に有効ページビューとみなすことにした。

 有効ページビューの獲得単価をKPIにするには、1件の成約にかかった費用から逆算した。SATORIの場合はMAツールベンダーでもあるため、社内に広告接触、コンテンツ閲覧、商談など多岐にわたるデータがある。そこで受注単価と各段階の比率をもとに逆算し、各段階の目標CPAを割り出すことにしたのだ。

上記限界CPAは、仮定数値であり、実際数値とは異なる
※上記限界CPAは、仮定数値であり、実際数値とは異なる

 それぞれの段階における限界CPAをKPIとして運用しながら、現場の担当者と達成できているかを段階的に見ていった結果、設計した通りのCPAでリードが獲得できた上に、最適化を行うことにも成功した。

 コンテンツ閲覧のページビューだけでなく、「SATORI」のプッシュ通知のオプトインをコンバージョンとする設定も行った。オプトインが増えれば、2回目以降の広告接触がプッシュ通知に代わり、ROIを改善する効果が確認できた。

 具体的にはそれぞれに次のような設定を行った。

そのうち客:コンバージョンした顧客と類似するオーディエンスへの広告配信

もうすぐ客:リターゲティング広告とポップアップ・プッシュ通知を実施

今すぐ客:キラーコンテンツに誘導URLを置き、リターゲティング広告とポップアップ・プッシュ通知を実施

運用型広告で得られた手応え

 定量的にどんな成果を得られたのだろうか。「SATORI」が間に入ることで、中間の広告へのクリック回数が2つ減り、ポップアップの閲覧やプッシュ通知に代わったことがわかる。

 鈴木氏は、「結論を話すと、広告予算の約20%を低減することができた。さらに従来予算をリード獲得効率の高い施策に再配分できる」と述べた。これは同じ広告予算でコンバージョン数が1.2倍になることを意味する。

 今後はこの成果をスケールさせられるかを検証したいと抱負を述べた。たとえば、今回よりも予算を増やした場合にも同様の成果が得られるか、あるいは今回試した広告とプッシュ通知の代わりに営業からのメールを読んだかなどの別の施策にすると、どう変わるかを検証することが考えられる。

 セッションの終盤、参加者より「同じ仕組みを運用するための予算がどのぐらい必要か」という質問が出た。これに対し鈴木氏は、コンテンツを継続的に作成していることを前提とし、最初は月500万円が目安になると答える。

 注意点は成果が出るまでには一定の時間がかかることだ。SATORIの場合、商材特性から最終コンバージョンに至るまでに3ヵ月を要した。商材によっては、足が長いものもあるため、最初に接点を持ってから購買に至るまでの時間と同じぐらいの我慢は必要になるかもしれないと植山氏は指摘する。

 リード獲得に運用型広告を使う仕組み作りに着手する前は、SATORI社内での議論では賛成の声ばかりではなかったという。「『予算が1,000万円あるならば、展示会に出展したほうがいいのではないか』という意見も出たが、BtoBセールスを変革するというビジョンに従いやらなければならないと判断した」と植山氏は振り返り、毎月の予算をさらに引き上げた検証に意欲を示し、講演を終えた。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/19 10:00 https://markezine.jp/article/detail/30714