非対面セールスの重要性の高まり
最初の話し手を務めたのはSATORIの植山氏。「営業の生産性や働き方改革で悩みを抱える企業は多いのではないか」という疑問の投げかけから本題に入った同氏は、対面だけの営業に限界が来ていることを指摘した。Webサイトなどでの非対面コミュニケーションの機会が増えていることは各種調査からも明らかであり、企業視点ではどこの誰かがわからないまま、顧客が購入の意思決定を進めているように見える。
その環境でも卓越した成果を出している企業も存在する。植山氏は3ヵ月で商談化率350%を達成したジャストシステム、2ヵ月でWebの問い合わせ率を200%改善した泉州電業の例を挙げた。SATORI自体も営業改革を行い、7四半期連続でライセンス数150%を達成したという。これらの例を踏まえ、植山氏は「短期間で営業成果を上げるために重要なのは非対面セールスである」と訴えた。
非対面セールスを重視するべき理由は、デジタル接点から入り、デジタルを最も信頼している人たちにとって、対面セールスの効果は小さいからなのだという。植山氏は2年前に自社がビジネスチャットを導入した時の体験から、非対面の間に顧客が意思決定を進める過程を説明した。
創業したばかりの頃、営業強化が急務と考えた植山氏。当初はコンサルティングやSFAツールが解決策になると考えたが、メディアの記事を読んで情報共有から始めようと決めた。ビジネスチャットを導入しようと決めた後は、4社に資料請求を行い、2社に絞り込んでから両社の営業担当者に来てもらったという。ビジネスチャットツールの営業の立場で見ると、最初にSFAツールが選ばれた場合や候補の2社に選ばれなかった場合は、商談の場に臨むことができない。
つまり、非対面セールスをしないと、検討のテーブルに乗ることなく他社に受注が決まりかねないのだ。
匿名顧客をデータベース化してコミュニケーション
顧客がデジタルで検討を進めることにどう対応するべきか。植山氏は「非対面でも対面の時と同じようにすればいい」と答える。対面セールスの場合、顧客データベースを作り、コミュニケーションをしながらタイミングを見計らって提案する。
非対面の場合も同じで、個人情報がわからない人の分を含む顧客データベースを作り、適切なタイミングで適切なコミュニケーションをすれば本格的に購入検討するところまで進めることができるというのが植山氏の主張だ。
非対面顧客は、「接点のない匿名顧客」「接点のある匿名顧客」「個人情報のわかる顧客」の3つに分類できる。この3つの非対面顧客とのコミュニケーションを担当するのがMAであり、対面顧客とのコミュニケーションを担当するのがSFAになる。
顧客データベースの中身もMAでは、「どんなWebページを見たか」「どんなメールを開封したか」「どんなWeb広告をクリックしたか」などの行動情報が中心となる。たとえばMAツールである「SATORI」の顧客データベースの場合では、基本情報とオフライン・オンラインの行動履歴を集め、可視化している。さらに、それぞれのステータスも管理しており、下の図のように匿名顧客と実名顧客の数が一目で把握できる。
さらにMAには、これらのデータベースを活用したコミュニケーション機能が備わっている。コミュニケーション手段の例として、接点のある匿名顧客にはCookie情報を活用したリターゲティング広告、ポップアップ、プッシュ通知、パーソナライズを、連絡先のわかる実名顧客には、メルマガ、電話、セミナーを組み合わせたアプローチが可能だ。