本記事はオプトの園部 武義氏による連載「ブランディングとダイレクトをつなぐ、CRMを超えたCEMとは」の第2回です。CEM(Customer Experience/Engagement Management)については本記事内でも解説しますが、「CEMとは何か、より詳しく知りたい」という方はぜひ第1回の記事をご覧ください。
CRMの先「CEM」の考え方
MarkeZine編集部(以下、MZ):園部さんの考えるCEMの概念についてお話しください。
園部:CEMとは、CRMの「R」を「E」に置き換えたもので、「E」には「体験(Experience)」や「エンゲージメント(Engagement)」の意味が込められています。
従来のCRMが顧客との関係をデータベース化し、顧客ニーズに対応した最適なアプローチにより利益貢献の大きい「リピート顧客」を増やすことを目的としているのに対し、CEMでは、顧客が購入するプロセスや購入後の利用シーンを想定しながら、そこに価値のある経験や体験を提供することにより「ロイヤル顧客」を増やすことを目的としている点に違いがあります。
MZ:このCEMの考え方を聞いたとき、川上さんはどう思われましたか?
川上:まさに今必要だったのはこれだと思いました。通販で化粧品を展開している私たちにとって重要なのは、1度きりでなく使い続けてもらうことです。ですが1回買うという行動ばかりに焦点を当ててしまい、意味を持って使い続けてもらうことに対する取り組みができていませんでした。
ここでの意味を持つというのは、私たちが展開する化粧品ブランド「Coyori」の、日本の自然素材を集めて確かな効果を感じてもらえるスキンケア、日本の豊かな自然を未来につないでいきたいというコンセプトを実感してもらうことを指します。
商品がなくなる頃に、「引き続きどうですか?」とフォローするだけではなく、その人が商品を買ったことの意味を理解し、ブランドとのつながりが深くなっていくコミュニケーションができたら買い続けていただけるはず。そう思っていたので、園部さんのコンセプトを聞いたときに、一緒に取り組みたいと思いました。
意味を持って使い続けてもらうために必要なこと
MZ:意味を持って使い続けてもらうには、ブランドとの関係をどう築いていけば良いのでしょうか。
川上:商品には機能的価値と情緒的価値がありますが、機能的価値で勝負しても他社と似通ったものになってしまうので、情緒的価値でお客様にブランドの信念を伝えていくことが大事になると思います。ただ化粧品の場合、最初の購入は機能的価値で選ばれることが多いので、いきなりブランドの信念を伝えても響きません。
また、どのような点に価値を感じるかは人それぞれです。様々なタイミングで意味を感じてもらうための情報やコンテンツを多角的に提供し続けるしかないと考えています。
園部:ダイレクトマーケティングに取り組む企業の多くはこれまで、そうしたことに取り組まなくても、ある程度コンバージョンが取れていたと思います。しかし、競争が激しくなりレッドオーシャン化が進んだことにより、機能での差別化以外の側面、つまりブランドが持つ価値観の違いを押し出していくことを意識することが必要になってきました。
ただし、ブランドは記号なので、同じ価値を持っているブランドでも人によって見え方が違ってくるもの。そこで必要になるのが、クラスタやチャネルごとに最適化したコミュニケーションです。