一人ひとりの価値観に合ったコミュニケーションを行う方法とは?
MZ:両社が実際に行った取り組みについて教えてください。
園部:プロジェクトは、大きく分けると以下の3つのフェーズで進めていきました。
1.顧客の理解:どのようなユーザーがいて、ブランドに対してどのようなイメージを持って購買行動をしているのか、クラスタリングして理解する。
2.育成ステップと施策の設計:各ユーザーのロイヤリティをどう上げていくか、育成プランとルートを考える。
3.評価指標の開発:2で考えたプランのPDCAを回すために、どのようなKPIを置くかを決める。
MZ:それぞれのフェーズでは、どのようなことを行ったのでしょうか。
川上:1つ目のフェーズでは、既存の会員リストに対してインターネット調査とインタビュー調査を行いました。インターネット調査では、購入の多い・少ない、継続・解約などの条件を鑑みてまんべんなく回答が得られるように設計しました。そして、購買データとアンケートデータをもとにユーザーをクラスタリングし、それぞれ違う価値観を持った8つのクラスタに分類しました。
そしてさらに、分類されたクラスタの人たちが実際にはどのようなユーザーなのかを調べるために、ファンミーティングと座談会を実施しました。
園部:座談会ではどの人が何番のクラスタの人かわかった状態で話を聞くのですが、これがすごくおもしろかったです。ファンミーティングも非常に盛り上がりましたね。
MZ:その8つのクラスタを変化させていくコミュニケーションを行うのでしょうか。
園部:いえ、僕はマーケティングでクラスタを変化させることは難しいと考えています。違うライフスタイルや価値観を持っている人に対して、その人にとってブランドが解決できるソリューションは何かと考えて、それができるなら伝えていくし、自分のブランドと価値観が合わないなら、無理におすすめするべきではないなと。
基本的にはブランドとユーザーの幸せな関係を築くのがマーケティングの仕事で、一番ブランドが繁栄する道だと思うので、そこを考えて行っています。
川上:実際、クラスタによっては関係を築くことがブランド、クラスタの双方にとって有益でないこともわかりました。
園部:クラスタの中には、購入の多い人・少ない人、ロイヤリティが高い人・低い人がいますが、それぞれ育成ルートもゴールも違う。どの価値観も否定せず、各々の人に合わせたコミュニケーションをしていくことを目指しています。
ロイヤル顧客化が難しいと判断したクラスタにおいても、切り捨てるということではなくて、そうした方々に合う繊細なコミュニケーションが必要です。
クラスタごとに育成プログラムを組んでいく
MZ:各クラスタのライフスタイルや属性を大事にして、コミュニケーションを行うのですね。2つ目のフェーズに関してはいかがですか。
川上:2つ目に関してはまだ途中段階にありますが、クラスタごとに育成目的を立て、どういう体験をしてもらったら良いかを皆でディスカッションしています。そして、育成プログラムを現在考えているところです。
園部:感じているブランドパーソナリティの状態、使用者イメージの状態、満足している価値みたいなことを洗い出していって、そこから何を伝えていくべきなのか、どんな体験をするべきなのかをデザインしているのですが、プランニングが非常に難しいですね。
川上:具体的に行っていることとしては、ブランドを理解してもらうためのイベントの開催や「Coyori」の素材選びの背景を伝えるようなオウンドメディア運営にも取り組んでいます。ただ、これまでの私たちになかったコミュニケーションになるので、試行錯誤中というところです。