創造的破壊の先に独自性はある
冒頭の『ルーツレポ』だが、筆者自身も「ずるくはないけど、あざとい……」とは思う(笑)。現実はかわいい女の子でもなんでもないのに、そういう設定で話を進めるなんて、「それアリにしたら、なんでもアリになっちゃうじゃん!」とツッコミたい気持ちもゼロではない。だが、そうしていけないルールはないのだ。
「作者と登場人物が一致していなくてもかまわない」という創造的破壊があったから、『ルーツレポ』は生まれた。アリ&ナシラインを勝手に引いた己の発想の乏しさを反省しつつ、ルーツ氏に敬意を表したい。既存施策の延長線上ではなく、創造的破壊の先に独自性はあるのだ。
読者よし、メディアよし、作者よしの三方よし。誰も損をしていない。戸越銀座商店街の歴史を延々と書き連ねたムダに長い記事と『ルーツレポ』、あなたはどっちを読みたいだろうか? 答えは明白だろう。独自性を説明するのにやや極端な例を出してしまったが、意図は伝わったかと思う。
もうひとつ、(僭越ながら)前職のfreee時代、筆者がオウンドメディア『経営ハッカー』に書いた『1977年に起業した74歳のオトンに、どんなキャリア人生を歩んできたか息子がインタビューした』を紹介したい。

ふつう、働き方についての取材記事で親子が話すことはほぼない。そこをあえてやってみたのがこれだ。40年前に父親が起業した頃の話を息子がインタビューするというアリそうでなかったスタイルが受け入れられ、某大手ニュースアプリに掲載され、過去最大級のソーシャルシェアも獲得した。
1.息子が父の若かりし頃を取材するという異質な組み合わせからくる「新規性」
2.他人の親子から仕事における普遍的な大切さを知る「読者メリット」
3.社内でのオウンドメディア認知度が一気に高まったという「自社メリット」
という形で3つの条件を満たしている。
この記事は自分がfreeeに転職して2ヵ月目に書いたものだ。3について補足すると、誰の目にも明らかな成果を求めて、シェア狙いをした記事で見事に当てた格好になる。「中山にオウンドメディアを任せて大丈夫!」という空気を社内に作ることもでき、その後の仕事がぐっとしやすくなった。メディアに息を吹き込んでコンセプトを明確化できた、という意味でもメリットがあったと思っている。
もう一度言おう。コンテンツマーケティングでいう独自性の条件は、下記3つを有することだ。
1.新規性:他にはない斬新さがある
2.顧客メリット:読み手に価値を提供している
3.自社メリット:ビジネス目的を達成している
「えー、難しそう」「センスがないと厳しそう」と思うかもしれないが安心して欲しい。独自性は後天的に習得できるからだ。具体的方法論は次回に。