シェアリングエコノミーの啓蒙を通じて、隠れたニーズを発見
西井:まずは、「ADDress (アドレス)」のサービスについて教えてください。
佐別当:ADDressは、月額4万円で当社が管理する物件(23拠点)に住み放題のCo-Living(コリビング)サービスです。Co-Livingとは、住居と仕事場を兼ねたスペースのこと。月額には光熱費も含まれており、同じ物件には連続で7日間住むことができます。
西井:物件は、どうやって用意しているのですか。
佐別当:私たちが物件オーナーさんから空き家や部屋を預かり、リノベーションをして会員へ提供しています。物件は地方の一軒家が多く、3LDK以上の大きな家が中心です。マンションやアパートは扱わず、あくまでその地域に住むような体験提供を前提とした物件選定をしています。
西井:なるほど、シェアリングエコノミーでもあるんですね。では、佐別当さんがADDressを立ち上げたきっかけは?
佐別当:私はシェアリングエコノミー協会の立ち上げに携わっていたほか、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師として、全国にシェアサービスを啓蒙していました。
その活動の中で、地方自治体と地域の活性化に取り組むようになったのですが、問題視されていた「空き家の増加」にチャンスを見出しました。
そのわけは「仕事と住まい、両方の拠点を地方に持ちたい」というニーズが存在していると感じていたからです。地方にもコワーキングスペースやシェアハウスが増えてきましたが、どちらも片方のニーズしか満たせていなかった。そこで、空き家をCo-Livingに変えて提供しようと考え、ADDressの立ち上げに至りました。
多様な会員が、思い思いの方法でサービスを楽しむ
西井:ADDressは現在、クローズドのベータ版として運営されています。 会員はどのように集めているのですか。
佐別当:クラウドファンディングで、不定期に会員を募集しています。今年の2月にADDressのサービスを発表したのですが、この半年間で合計2,000件を超える問い合わせをいただきました。クラウドファンディングでの募集はこれまでに3回行い、約150名の方にご契約いただいています。
西井:会員には、どんな人がいるのでしょうか。
佐別当:20代から60代までと様々で、ユニークな方ばかりです。サービス設計上のペルソナは作りましたが、実際の会員を分析しますと、デモグラフィックや職業で切り分けられるペルソナはありません。その代わり、複数の拠点で生活を楽しみたいという、共通した価値観があるんです。
会員になるために二輪免許を取ってバイクを買い、ツーリングを始めた人や、北海道に自宅を持ち、多拠点生活ができる仕事をしながら、全国をキャンピングカーで移動する60代のご夫婦もいらっしゃいます。
西井:日本人は持ち家志向が強く、移動を好まないと思っていましたが、みなさん思い思いの使い方で楽しんでいらっしゃるのが興味深いです。通常の旅行とは違う体験を届けることができているのですね。
佐別当:はい。同じ物件へのリピート率が高いことも特徴で、これも旅行とは違う楽しみ方です。
また一部では法人契約も行っていて、仕事(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせた、ワーケーションを推奨している企業に契約いただいています。