各地で育まれるコミュニティがサービスの価値に
西井:私はバックパッカーなのですが、すごく魅力的なサービスだなと感じます。改めて、ADDressが提供したい価値を教えてください。
佐別当:全国に、「おかえり」「ただいま」と言える場所を作ることです。これは住居の提供だけでは実現できません。その地域に友達がいたり、仕事があったり、お祭りに参加したりといった体験があるからこそ、自分の田舎や実家のような感覚が生まれます。
西井:なるほど。具体的にはどんな方法で場作りを行っているのでしょうか。
佐別当:ADDressは共同体のような運営を重視していて、たとえば各物件に、会員と地域のハブ役となる「家守(やもり)」という管理人を置き、コミュニティを育てています。地域の方を中心に家守の役割をお願いしているのですが、ありがたいことにADDressが持つ世界観への共感度がとても高いんです。
コミュニティ作りのために、DIYや料理のワークショップ、物件案内ツアーなどのイベントも実施しています。イベントの参加は会員・非会員問わず可能なので、サービスに興味をもついろいろな方々が集まってくれます。すると、地域の人たちも、ADDressの会員を旅行客ではなく地域と関わってくれる存在だと受け止めてくれるのです。

西井:家守がコミュニティマネージャーとなって地域と関係を作り、それが価値になるというのは理想的ですね。
佐別当:はい。現在ADDressの物件は、IターンやUターンに積極的な地域を中心に増やしていて、物件のオーナーさんたちにも、私たちの届けたい価値観をよく理解していただいています。
リアル空間とWebのUI・UX統合にも挑戦
西井:サブスクリプションビジネスのポイントである、サービス改善についても教えてください。ADDressの場合は、物件や管理システムのハード面とコミュニティ運営などのソフト面、両面からの改善が必要ですよね。
佐別当:おっしゃる通りです。物件については、安心安全で衛生的な住まいを提供することが最も重要なので、状況に合わせてリノベーションやメンテナンスを行っています。また、リアルな空間とWebのUI・UXの統合も進めているところです。
西井:リアル空間とは、住まいのことですよね。それとWebのUI・UXを統合するとは、どういうことなのでしょうか。
佐別当:これから会員が増えていくと、住まいそのものがメディアのような役割を担うようになるはずです。巨大な分散型のシェアハウスを運営しているようなイメージで、ユーザー同士のコミュニケーションが価値になっていくと考えています。今はFacebookのグループページで交流していますが、いずれはリアルな空間とWebでのコミュニケーションがよりシームレスになるようなツールの開発を考えています。
また居住空間は、会員との重要なコンタクトポイントです。UI・UXと統合することによって、ストレスフリーな空間を提供できるようになるほか、IoTハウスのように会員の行動データも収集しやすくなると考えています。
今は、リアル空間である部屋のアイコンや部屋番号、物件のロゴなどと、Webのテイストをそろえること、さらに予約から実際に物件を利用するまでの動線を改善することにも取り組んでいます。家のチェックインを管理するアプリやスマートロックを導入するなど、オンラインで様々なサポートができる体制も整える予定です。