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BtoBマーケ虎の巻

LTVの高さが、BtoBマーケティングの自由度を決める

BtoBサービスの継続期間を伸ばす方法

 続いて、もうひとつの選択肢「継続期間を伸ばす」方法についても5つ紹介したい。

1. オンボーディングに力を入れる

 サービスを顧客に使い続けてもらうためには、そもそもサービスの価値を体験してもらう必要がある。当社の支援先のSaaS企業は、無料トライアル開始後すぐに、カスタマーサポート部隊が電話・メールで設定サポートを行ったことで、有料転換率が大きく上がった

2. 長い契約期間を用意する

 求人情報サービスの「Wantedly」は6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月の料金プランを提供し、契約期間が長いほど、月額の料金が割り引かれるようになっている。顧客にとっては年間で見た時にトータル費用が安くなるメリットがあり、企業にとっても、月額の単価が下がったとしても継続期間が伸び、LTVが高くなるメリットがある。

3. 中堅・大手企業を対象にする

 単価だけでなく、継続期間の観点でも、中堅・大手企業を対象にするメリットは大きい。米国のベンチャーキャピタリストTomasz Tunguz氏によると、SMBの月次解約率は3~7%、中堅・大手企業の月次解約率は0.5~1%であり、中堅・大手企業との取引は入り込むのが大変なものの、一度取引が始まれば長続きする傾向があるという。

4. 解約率の低いセグメントに集中する

 過去に受注した顧客の継続・解約を分析すると

・セグメントA:解約率1%
・セグメントB:解約率5%
・セグメントC:解約率10%

のような傾向が現れる時がある。その場合、セグメントBやCではなく、セグメントAに絞って、マーケティング活動を展開できると全体の解約率が下がり、LTVの向上につながる。

5. 業務に深く入り込む

 継続期間を伸ばすためには、顧客にとって、なくてはならない存在になることが重要だ。大規模サイトの運営やデジタル人材の派遣を行うメンバーズが提供するEMCは、大手企業向けにデジタルマーケティングの専任チームを組成し、大規模Webサイトを運用するサービスを提供している。

 顧客は「Webサイトの運営は一括して相談・依頼できる」というメリットを感じられると同時に、企業は顧客に深く入り込むことができるため、他社への乗り換えが起きにくい特性がある。

6. データを蓄積する

 顧客データを蓄積していくことも、継続期間が伸びる要因になる。経理・会計関連のクラウドサービスである「MFクラウド」や「freee」などの基幹システム系サービスが代表的だが、サービス内にデータが蓄積されていくことで、利用価値が高まる。結果として乗り換えコストが上がり、解約率が低くなる。

 マーケティング領域では、「Google Analytics」などの解析ツールも、他ツールに移行する際に蓄積したデータが使えなくなるので、移行の判断は難しくなる。

CV率やCPAだけでなく、顧客との取引価値も考えよう

 ここまで、様々な事例を基に以下の点についてお伝えしてきた。

・BtoBマーケティングにおいては、営業が介在するため、CACが一定以下には下がりにくい。必然的に、LTVを高める努力が必要
・高いLTVを実現できるとマーケティング活動上、実施できる施策が増える
・LTV=平均顧客単価×継続期間なので、「平均顧客単価」か「継続期間」を上げる

 もちろんCV率を上げる、CPAを下げるといった努力は必要だが、良質なマーケティング戦略を可能にし、ビジネスの成長により大きなインパクトを与えるのは、1顧客との取引価値を高めることだ。BtoBマーケターは、この点にもっと目を向けて良いのではないか。

 マーケティングの基本は4P(Product、Price、Place、Promotion)と言われるが、マーケターには、プロダクトやプライスも視野に入れた、持続的に売れる仕組み作りが求められていることを心しておきたい。

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この記事の著者

栗原 康太(クリハラ コウタ)

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。 Twitterアカウント(https://twitter.com/kotakurihara) | Facebookアカウント(https://www.facebook.com/kota.kurihara)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/20 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31888

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