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MarkeZine Day 2019 Autumn(AD)

検索意図を考えた記事で検索流入6倍!ベネッセ「いぬのきもち」「ねこのきもち」のコンテンツマーケ戦略

 MarkeZine Day 2019 Autumnで行われた「【検索流入6倍】 Benesse『いぬのきもち』『ねこのきもち』 イチから取り組んだ『ストックコンテンツ』作成、SEO初心者が取り組んだ施策とは?」と題したセッションに登壇したのは、Faber Companyの白砂ゆき子氏とベネッセコーポレーションの持田武資氏。その中では、SEOに配慮しながら読者に満足してもらえるコンテンツを提供するための秘訣が詳細に語られた。

1年2ヵ月で検索流入6倍に成長した「いぬのきもち」「ねこのきもち」

 ベネッセの運営するWebマガジン「いぬのきもち」「ねこのきもち」は、同タイトル雑誌の関連サイト。Faber Companyのコンテンツマーケティングツール「MIERUCA(以下、ミエルカ)」を駆使して記事を作成していった結果、両Webマガジンへの検索流入は、1年2ヵ月で約6倍に。Webマガジンごとで見ると「ねこのきもち」は6倍、「いぬのきもち」に至っては33倍まで増加したという。

 このプロジェクトをリードしたのは、「いぬのきもち」「ねこのきもち」Webマガジンの副編集長・ベネッセの持田武資氏と、Faber Companyの白砂ゆき子氏の2人。そもそも、両Webマガジンはなぜ伸び悩んでいたのだろうか。

左:株式会社ベネッセコーポレーション ペッツ事業部 メディアマーケティング課 いぬのきもち・ねこのきもち副編集長 いぬねこメディア統括ディレクター持田 武資氏右:株式会社Faber Company コンテンツマーケティング部 シニアコンサルタント 白砂 ゆき子氏
左:株式会社ベネッセコーポレーション ペッツ事業部 メディアマーケティング課
いぬのきもち・ねこのきもち副編集長 いぬねこメディア統括ディレクター 持田 武資氏
右:株式会社Faber Company コンテンツマーケティング部 シニアコンサルタント 白砂 ゆき子氏

 元々雑誌販促の位置付けのサイトはあったものの、2017年10月にスタートした同Webマガジンのターゲットは、犬と猫を飼っている、興味がある、また飼ってみたいと考える層。しかし「スタートしてからの6ヵ月は、なかなか検索流入が増えなかった」と持田氏。

 立ち上げ直後でインデックス数が不足していたことはあったが、持田氏の言う通り、ミエルカ導入前(2018年1月)の同マガジンの流入元の多くは、情報を提供しているニュースサイトや情報メディア、そしてSNSなど、参照サイトからだった。白砂氏曰く、企業によって異なるが「流入元比率は、自然検索が40%、ダイレクト、参照サイトからそれぞれ30%が望ましい」とのこと。流入元をバランス良く分散させることにより、検索や配信アルゴリズムの変化に対応するためだ。

 持田氏から依頼を受けた白砂氏は、当時の配信記事の内容を分析。ノウハウ系の記事や獣医師によるQ&A記事を理論的記事(ストックコンテンツ)、エンタメやマンガ、連載系の記事を感情的記事(フローコンテンツ)に分け、SEOに向くストックコンテンツを増やし、検索流入を改善する施策を提案した。

検索意図を捉えたコンテンツ制作にトライ

 コンテンツマーケティングは、検索ニーズの高いキーワードをもとにしたコンテンツ制作がセオリーだ。持田氏もそれにならい、一定の量のコンテンツを公開していたそうだが、なぜSEOに影響しなかったのだろうか。

 その理由について白砂氏は、「検索意図の深掘りが足りなかった」と話す。

 「検索意図とは、ユーザーがどんな目的を持って検索しているか?のインサイトです。たとえば、“犬 甘噛み”の検索意図には、“どうして甘噛みをするのか”。または、“甘噛みしないようにしつけられるのか?”といった感情が隠れています。ベネッセさんのこれまでの記事は、この検索意図の分析が足りていなかったのです」(白砂氏)

 あわせて、情報提供サイトごとに、似たテーマの記事を複数公開していたことも、検索順位に響いていた。現状SEOは、ライトな記事を量産するのではなく、検索意図を捉えた読み応えのある記事を公開するほうが、順位が伸びる傾向にあるという。

 これらの情報も踏まえて持田氏らは、検索意図を考えたストックコンテンツ制作に着手。まずは、検索キーワードを分析するブレストから始まった。

 犬や猫にまつわる検索キーワードは、多種多様だ。ダックスフンドやマンチカンなどの種類や、大型犬・小型犬といったカテゴリ別、さらにしつけ・行動、病名症状、物販系と分けられる。

 そのような中、持田氏らは、犬と猫の検索意図に違いを見つける。たとえば、猫は「かわいい」「癒やし」などの感情系ワードが多く、犬は「しつけ」「育て方」などのノウハウ系ワードの組み合わせが目立った。

 「そもそも犬はしつけが必要ですし、サイズや犬種によって飼い主の知りたいことが異なります。また、犬はどちらかというと、なんでも食べたがる傾向があり、食べて良い食べ物について調べる意図のキーワード検索も猫に比べて多かったです」(持田氏)

検索流入が見込める4つのニーズとは?

 このように、同じペットでもまったく検索意図が異なる、犬と猫。さらに白砂氏らは、リストアップしたキーワードを4つの検索ニーズに分類した。

「とは」検索・・・(例)「犬 種類」「猫 鳴き声」

「HOW TO」検索・・・(例)「犬 下痢」「猫 爪切り」

「比較検討」検索・・・(例)「犬 キャリーバッグ」

「感情」検索・・・(例)「猫 大好き」

 それぞれのキーワードには、異なる検索意図がある。「とは」検索には、基本的な情報が知りたいというニーズ、「HOW TO」検索は、課題を解決したい、対処法を教えてほしいなどのニーズがある。「比較検討」検索は、おすすめや人気を知りたいという意図があり、「感情」検索は答えを知りたいのではなく、共感したいといった気持ちがあるという。

 「検索キーワードを分析したとき、とは/HOW TO/比較検討系のキーワードが多い場合、その分野はSEOに向いていますので、ストックコンテンツの制作がおすすめです。一方、そのようなニーズが少ない分野は、SEOよりもフローコンテンツ×SNS、外部配信での流入を増やすほうが効果的です」(白砂氏)

 それを証明するのが、先述したいぬねこメディアの検索流入の差だ。ミエルカ導入後、両メディアで記事公開本数は大きく変わらないが、「いぬのきもち」は33倍と大幅に検索流入が伸長した。一方で「ねこのきもち」は6倍にとどまった。犬と猫に関するキーワードの場合、犬のほうが「とは」「HOWTO」「比較検討」のキーワードが多いのだという。

ミエルカの技術とベネッセの知見で検索1位を獲得

 続いて、検索意図を理解したコンテンツ制作に関する具体的な方法が語られた。

 事例として紹介されたのは、「犬 ぶどう」をターゲットキーワードとした記事。このキーワードをミエルカの機能のひとつ、インテーショングルーピングで分析すると、どのような検索意図があるかがわかる。「犬 ぶどう」の周辺には「食べていい」「あげてしまった」などのキーワードとの関連性が見られた。つまり「犬 ぶどう」の検索には、「犬はぶどうを食べていいの?」と、「犬がぶどうを食べちゃった(場合、どうしたらいいの?)」という、2つの意図が潜んでいるのだ。

 この2つの切り口から、白砂氏は「検索ユーザーの心境を考えた構成を」とアドバイスしている。

 「検索ユーザーが1番知りたいことは、記事のトップに構成します。検索結果から『なぜぶどうを食べてはいけないのか?』のほうが多い印象を受けましたので、それを冒頭に掲載し、次に緊急性の高い『ぶどうを食べちゃった』ときの対処法を掲載しましょうと提案しました」(白砂氏)

 そして公開された記事には犬種ごとのぶどう許容量を載せるなど、ベネッセがこれまでのコンテンツ制作の中で培ってきた知識などを盛り込み、オリジナリティを出した。

 「体重が違う犬種ごとにぶどう許容量の一覧があると、飼い主は助かりますよね。そのニーズは、ミエルカでは見えません。ベネッセさんの知見が活かされたコンテンツで他コンテンツと差別化もできます」(白砂氏)

 白砂氏のコメントを受けて持田氏は、「きっかけはミエルカのサジェスト検索機能で、“1粒”というキーワードを発見したから」と語る。検索数は少ないキーワードだが、飼い主の「1粒ならばどうだろうか?」という検索意図を汲んだのだ。また、医療に関するテーマのため専門家である獣医師の監修も入れている。

 公開3ヵ月後、当該記事は想定よりも早く検索結果で1位となった。「想像以上の結果」と持田氏はミエルカおよび、白砂氏のコンサルティングを高く評価した。

ビッグワードを狙った記事はシステムで対応

 ミエルカと企画力をうまく組み合わせ、選定したキーワードに合ったコンテンツを作ってきたベネッセ。続いて同社は、犬や猫のビッグワードである種類名を狙ったコンテンツ制作に取り組んだ。

 たとえば「トイプードル」は、月間検索数が数十万件という規模がある。しかし、取引型の検索意図が強く、ペットショップやブリーダーが検索上位に掲載されている。つまり、検索量はあるが、ストックコンテンツにしづらいキーワードなのだ。

 そこで白砂氏らは、「単ワードで検索する人は、犬猫を飼いたいと考えている人たちだ」とペルソナを立て、検索意図を深掘りし、コンテンツ内容を設計していった。

 「チワワを飼いたいと思って検索した人は、同じように小さい犬種にも関心があるはず。ですから、検索した種類に近しい他の種類の情報も表示したコンテンツが良いのではないかと考えました」(持田氏)

 あわせて、検索量の多い大型犬/中型犬といったカテゴリ別、犬種猫種別のページを制作するだけでなく、情報の内容も「飼い主向け」から「飼いたいと検討している人」向けに変更。写真と人気ランキングの他、飼いやすさなどをレーダーチャートで表した。

 こうして、犬猫の種類名というビッグワードを狙った「犬図鑑」「猫図鑑」のコンテンツが形になっていった。テキスト記事を制作・編集するCMSでは制作が難しいため、システムのリニューアルで対応している。

 10月に公開された図鑑コンテンツは犬を約130種、猫は約40種をカバー。検索流入が増えており、ウェブマガジンを支えるコンテンツになると期待が寄せられている。

あらゆる流入に対応できるコンテンツ制作体制とは

 セッションの最後は、コンテンツマーケティングの制作体制について語られた。

 現在ベネッセの体制は、「いぬのきもち」「ねこのきもち」のWebマガジンのそれぞれの編集長が、全体のコントロールと外部配信コンテンツを担当。直下の持田氏が、SEOを担当している。そして、ディレクターとライターがコンテンツの制作進行を行う。

 「初期は知見を貯めるため、記事の構成も社内で考えていました。また、編集長とも連携をとり、テーマによりストックかフローどちらのコンテンツで制作すべきかを考えています」(持田氏)

 実は、同マガジンの副編集長となり、はじめて本格的にWebに関わることになった持田氏。未経験からのコンテンツマーケティングを成功に導いた背景を、白砂氏は次のようにまとめた。

 「まずは、検索ニーズからテーマを設計し、検索意図と検索者像をしっかり捉えたコンテンツ作りができたことです。そして、ストックコンテンツとフローコンテンツの役割を明確化し、検索流入だけでなく、あらゆる流入に対応できるコンテンツ制作の体制があることも成功のポイントです」(白砂氏)

 そして終わりに、白砂氏はミエルカの機能を紹介。検索意図やユーザーニーズ分析などのツール、そしてミエルカを活用するための学習コンテンツ、対面によるコンサルティングと一貫したサポートは、持田氏も頼りにしていたそうだ。また、300人規模でユーザー会も実施しているという。白砂氏はツールだけでなく、利用者向けの学習コンテンツ(動画など)やカスタマーサクセスによる伴走サポートにも力を注いでいることをアピールし、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/03 11:00 https://markezine.jp/article/detail/32107