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花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

P/Lはあくまで結果、本当に必要なのはバリュードリブン【花王廣澤氏×INCJ会長志賀氏対談】

 花王のマーケター・廣澤祐氏が、業界で活躍しているキーパーソンと対談する本連載。今回のゲストは日産自動車でCOO(最高執行責任者)を務め、現在は官民ファンドのINCJの代表取締役会長である志賀俊之氏。実は、廣澤氏が大学院で志賀氏の講義を受けているという関係でもある。対談の中では、日本企業の勝ち筋はどこにあるのか。経営的な視点からマーケティングがなすべき役割について議論が行われた。

日本企業にはマーケティングが必須

廣澤:今回は、ながらく日産自動車のCOOとして日本経済の成長をけん引しながら、現在はINCJで次世代の企業やリーダー育成にも尽力されている志賀さんから、経営者視点でのマーケティング、また日本企業の経営における勝ち筋について、お話をうかがいます。

 昨今プラットフォーマーをはじめとした海外企業の台頭をきっかけに、日本企業も対抗してデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を進めています。しかし、DXがバズワード化することで、一部では形骸化している危険もあるのではないかと感じます。

 DXだけでなくマーケティング業界では様々な言葉や概念が輸入されるわけですが、日本企業が日本の文化的背景に即した、日本的経営やマーケティングを開拓していくことは可能でしょうか。志賀さんから見て、日本企業の勝ち筋はどこにあると思いますか。

左:花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 キュレル事業部 廣澤 祐氏
右:株式会社INCJ 代表取締役会長 志賀 俊之氏

志賀:先日、旭化成名誉フェローの吉野彰さんがリチウムイオン電池開発の功績からノーベル化学賞を受賞されましたが、日本企業はシーズ(企業が事業化するチャンスのある発明)を実用化することに強みがあると思います。日本が誇れる、LEDやバッテリー、半導体、有機ELなども同様です。

 私が自動車会社で長年ものづくりに携わってきたというのもあるかもしれませんが、じっくり時間をかけてよい製品・技術を世に出していく勝負の仕方が、日本企業の勝ち筋の一つだと思っています。

 ただ、それだけでは海外企業に勝てません。というのも日本企業の多くは技術で勝って事業で負けるという課題を抱えています。そして、その原因は開発した技術のバリューをマーケティングで世の中に伝えきれていないことにあると私は考えています。

廣澤:これまで日本が培ってきた技術開発のノウハウに、マーケティングの力を組み合わせることが重要、ということでしょうか。

志賀:その通りです。日本企業は、インベンション(発明)は得意だが、イノベーションは得意ではないと言われることがあります。インベンションをイノベーションに昇華させきれないのは、効果的なマーケティングが行えていないからです。

 日本ならではの技術開発力、そして効果的なマーケティング、この二つが揃えば、日本企業の勝ち筋が見えてくるのではないでしょうか。

日本的マーケティングの欠陥とは

廣澤:日本企業の多くは効果的なマーケティングができていないとのことですが、日本型のマーケティングにはどういった問題や欠陥があると思いますか。

志賀:作り手の思いが強く出すぎている点ですね。たとえば、「世界初の~~」と技術の紹介をするなど、作り手の視点を中心としたマーケティングを行ってしまうケースをよく見かけます。

志賀:お客様にとって、世界初であることがバリューになるとは限りません。自動運転技術を例に挙げると、家族で行楽地へ行った帰りに、自分以外は後部座席で寝ていて、自分だけが渋滞の中運転をしている。そんなときに自動運転技術があれば、大きなバリューとなります。このように、お客様視点でバリューを訴求できるよう、ストーリーテリングしていくことが重要だと考えています。

 新製品発表会で開発者が説明する場面がありますが、商品企画の人がどういったコンセプトで開発したのかを訴えることも必要だと思います。どんなお客様に対して、何をUSP(Unique Selling Proposition:独自の売り)にこの製品を作ってきたかを強調するのです。技術や機能ありきのマーケティングではなく、どんなバリューがあるのかを伝えるマーケティングをすることが重要です。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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