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商品棚がリアルからデジタルに変わる時代 買い物から淘汰されるもの、生き残るもの【お薦めの書籍】

 ここ10年で、私たちの「買い物」は大きく変化してきました。ネットショッピングは深く浸透し、近年では定額制の配信サービスやフリマアプリの利用が拡大しています。AI、5Gなどの先進技術によって加速する「買い物」の変化は、私たちをどんな未来に導くのでしょうか。本記事では、今後の買い物を読み解くキーワード「デジタルシェルフ」をテーマにした一冊を紹介いたします。

あと5年で、「買い物」をしなくなる?

 今回紹介する書籍は、『2025年、人は「買い物」をしなくなる』。著者の望月智之氏は、企業のデジタルマーケティング支援を行うコンサルティング会社「いつも.」の副社長です。同氏は、自らデジタル先進国である米中を訪れ、そこで得た最前線の情報をもとに、ブランド企業のデジタルシフトやEC戦略のコンサルティングを手掛けています。

『2025年、人は「買い物」をしなくなる』1,628円(税込)望月智之(著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
『2025年、人は「買い物」をしなくなる』1,628円(税込)
望月智之(著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

 「『買い物』をしなくなる」という本のタイトルは一見衝撃的ですが、もちろんお金を支払って何かを買うことがなくなるわけではありません。これは、買い物における様々なプロセスがなくなることを意味します。

 既に私たちはネットショッピングをしたり、ネット決済や電子マネーを利用したりするなかで、実店舗に行くこと、現金を用意することを省略しています。さらに、定額制の配信サービスを利用したり、レビューを参考に選んだりということが当たり前になり、「商品の現物を見ること」や「商品を自分で選ぶこと」も省略しているのです。

 そして、著者はこのように買い物におけるプロセスがなくなっていくなかで、今後キーワードとなるのが「デジタルシェルフ」だと主張しています。

買い物は「組み込まれる」時代に

 デジタルシェルフは一般的に、物理的な棚がショッピングサイトの商品一覧のようなデジタルの棚に置き換わっていくことを意味します。

 一方著者は本書において、デジタルシェルフの定義をより広く捉え、次のように表現しています。

「世の中の電子化が進む中で、日常の身の回りにある、ありとあらゆるものがシェルフ(商品棚)になること」(p.7)

 IoT家電やウェアラブル端末の進歩によって、言葉通りに「ありとあらゆるもの」が商品棚として機能するようになると言えるのです。なお、この「ハード面の変化」よりも重要なのは、その先にある「消費者の生活や価値観の変化」です。著者は今後、「消費者の自覚のあるなしに関わらず、日常のあらゆるシーンに買い物が組み込まれていく」と言います。

 たとえば、映画やドラマを見ながら、その登場人物が着ている服を注文する、冷蔵庫の常備品が切れるタイミングで勝手に商品が送られてくる、スマートウォッチなどから体調の変化を感知して栄養のある食材を届けるといったことが起こるだろうといわれています。

 つまり、デジタルシェルフは、買い物だけでなく生活や価値観さえも変えていく、時代の変化そのものともいえるのです。

買い物に求められるもの 「開封の儀」に見るヒント

 デジタルシェルフによって消費者にとっての棚がデジタル上に移り、比較する・判断する・決済するといった買い物のプロセスが省略されていく中でも、買い物に求められるものとはなんでしょうか。本書ではそれが見えてくる一例として、「開封の儀」が挙げられています。

 「開封の儀」は、商品を開封する状況や、その様子を撮影して動画共有サイトなどでシェアするときに使われる言葉です。動画でよく取り上げられる商品は、最新ゲーム機、スマホ、PCなど高額のものが中心。「儀式」になぞらえられているのは、なかなか手が出せない商品を開封する瞬間を貴重に思う消費者の心のあらわれと言えるでしょう。その広まりからか、近年は消費者だけでなく、ソニーや任天堂といったメーカーが自社商品の「開封の儀」を公式に動画配信するようになっています。

 また多くのハイブランドでは、「Unboxing」=「届く瞬間、開ける瞬間のユーザー体験」をいかに良くするかという視点で、パッケージの開発に心血が注がれているといいます。

 ネットショッピングで商品が届いたとしても、その商品を箱から出すという体験の楽しさ、ワクワク感は残り続けるのです。

 本書の1章では、このような事例を用いてショッピング体験の進化を解説。2章以降では、これまで買い物がどう発展してきたのか、今何が起こっているのか、これからどうなっていくのかが解説されています。

 「買い物」の少し先を覗いて、新たな時代に備えておくのはいかがでしょうか?

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32565

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