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事例&データで深掘り!Instagramマーケティングの現在地(AD)

売上貢献度の把握は「広告の健康診断」/花王が明らかにした、Instagram広告の高パフォーマンス

 花王「キュレル」では、Instagramも含めたオンライン・オフラインの広告投資の適正規模を把握するため、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)と呼ばれる分析を実施。Facebook・Instagram広告のバナー広告は他媒体に比べて売上に貢献していることや、動画広告との同時出稿による高い相乗効果が見られることが明らかになった。本記事では、同社の廣澤氏とFacebook Japanの倉迫氏に、取り組みについて詳しくうかがった。

“検索しないけれど悩んでいる”潜在層にも、情報を届けたい

――本日は花王「キュレル」におけるInstagram活用と、その効果測定についてうかがいます。はじめにご担当業務を教えてください。

廣澤:花王で「キュレル」の担当をしています。元々はデジタル部門の出身で、その経験を活かしてプロモーションには全体的に関わっています。

倉迫:Facebookマーケティングサイエンスに所属し、主に消費財と小売業界を担当しています。クライアント様の「デジタル広告の効果をどのように計測すれば良いのだろう」という悩みに対し、利用者のインサイト分析やデジタル以外も含めた効果測定のコンサルテーションなどを提供しています。

花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 キュレル事業部 廣澤祐氏
花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 キュレル事業部 廣澤祐氏

――ありがとうございます。早速ですが、「キュレル」のプロモーションについて教えていただけますか。

廣澤:「乾燥性敏感肌を考えた」というブランドのコピーに沿うようにしています。まず基本的なこととして、肌荒れの悩みが顕在化していて、情報収集を行っているお客様のお役に立てるよう、検索対策やブランドサイトに力を入れています。

 そして「悩んでいるけれど、正直あまり対策できていない」「どう対処していいかわからない」という潜在的なお客様にも「キュレル」をご検討いただき、快適な生活を送るお手伝いをしたいと考えています。そのためにSNSなどのターゲティング広告などでもアプローチしていて、Instagram広告は2017年頃から開始しました。ちなみにテレビCMを使うのは新製品の発売時や最も需要が高まる冬が多く、そのほかは基本的にデジタルでコミュニケーションをとっています。

広告投資の適正な方法×規模を模索

――今回「キュレル」において、マーケティング・ミックス・モデリング(Marketing Mix Modeling:以下、MMM:参考記事)を実施されたそうですが、その背景を教えてください。

廣澤:MMMをはじめとする効果測定は、健康診断のように定期的に行うべきだと考えています。「キュレル」ではMMMを実施する前、2016年に、Structural Equation Modeling(以下、SEM)という、いわゆるパス解析を行いました。これにより、お客様がどのようなルートで購買にたどり着いているのかを把握できたので、次はMMMを通じて適切な投下量を把握することで、広告投資の「方法」×「規模」を抱き合わせで確認したいという意図がありました

 基本的に、MMMは各投下資本に対してどれぐらい売り上げ立ったか統計的に検証するという分析手法ですので、見てもらって印象を残すことが目的となる動画広告に関しても、どの程度購買に影響を与えているか確認することができます。

Facebook Japan株式会社 マーケティングサイエンス リード 倉迫有沙氏
Facebook Japan株式会社 マーケティングサイエンス リード 倉迫有沙氏

倉迫:弊社としても、2つの点からMMMを推進していきたいと考えています。1つは廣澤さんにお話いただいた、ラストクリックに頼らず出稿量の適正値が把握できるということ。

 もう1つは、MMMによって利用者の人単位での計測が可能になることです。クライアント様が一般的に使われている計測ツールは、ブラウザごとに付与されるcookieがメインとなり、どうしても人ベースでの計測が難しくなってしまいます。複数のデバイスを活用することが一般的となった現在においては、cookieをベースとした計測では正しい結果が確認できません。

 特に出稿の規模が比較的大きい広告主様、そしてオンラインとオフラインを横断し、複合的な施策を走らせている広告主様には、一度取り組んでみることをお勧めしています

広告フォーマットごとの効果&投資余地は、予想外の結果に

――今回の分析から見えてきた結果を教えてください。

廣澤:今回は2017年から2018年までの出稿を対象に、分析を行いました。認識を揃えるための前提として「キュレル」の広告出稿の状況をお話しすると、元来静止画を使ったバナー広告を重視していたのですが、デバイスや配信面、タッチポイントの変化にともない、数年前から動画広告にも予算を振り分けることも増えています。

 感覚的には動画にもそれなりに投資しているつもりだったので、今回のMMMでは、動画広告のROIが高く出るだろうと予想を立てていました。ところが広告フォーマットごとの結果を見ると、バナーのROIが最も高く出たのです。媒体別で見たところ、Facebook・Instagram広告のバナー広告は他媒体に比べて貢献度が高いこともわかりました

――予想とは異なる結果だったのですね。

廣澤:はい。そこで広告の投下量の適正レンジをフォーマット別に確認してみると、動画広告への投資量は「まだ足りていない」と出ていた一方、バナー広告への投資量は「適正」と出ていました。このことから、動画広告は十分な量を配信できていなかったために、想定よりパフォーマンスが低く出ていたのだと判断しました

 動画広告にまだ伸びしろがあると示されたのは、今回の分析における発見の一つです。今思えば、バナー広告には長年取り組んできたため、「これぐらいだろう」という勘所が掴めていたのだと思います。

倉迫:バナーとInstagram上の動画広告の相乗効果についても、分析を行いました。Instagramの動画広告では、バナー広告との同時出稿によって7%の売上リフトがあったという報告になっており、これは他メディアと比べて最も高い数値です。

 仮説ではありますが、テンポ良く短尺の動画を楽しむビジュアルのプラットフォームであるInstagramは印象を残しやすく、バナー広告と親和性があるのかもしれません。

廣澤:レポートの結果は代理店さんにも部分的に共有したのですが、「FacebookやInstagramは思っていたよりも効果が高いですね」という反応がありました。メディアプランのご提案にも活かしていただいています。

社内のデータマネジメントを確認する機会にも

倉迫:先ほど廣澤さんから「MMMは健康診断のようなもの」というお話がありましたが、私もまさにその通りだと考えています。

 様々な施策を走らせていると、日頃追いかけるKPIはGRPだったりインプレッションだったりと、部署ごとに異なってきますが、最終的に目指しているのは売上への貢献だと思います。MMMを通じて貢献度を定期的に確認することで、ゴールを見失わずに進めていけるのではないでしょうか。

廣澤:そうですね。MMMにはもう1つ、組織や個人スキルの健康診断という側面もあると思います。分析に必要なインプットデータの収集プロセスを通じて、それぞれのデータの在処や、社内のデータマネジメントがどのような状態にあるかを改めて確認できるのです。現状やリソースを把握することで、データ活用の新たなアイデアが浮かぶかもしれませんし、もしデータ管理や連携に問題を発見できれば改善案を示せるかもしれません。

――反対に、課題だと感じたことはありましたか。

廣澤:効果測定は一度やってみて終わりではなく、施策に反映させ、その後のパフォーマンスを継続的に確認していくことに意味があります。たとえば、大きな手術をしたあとは、術後の経過を定期健診で見ていきましょう、という感じですよね。ただ、MMMは実施にあたりリソースが必要な「重たい」分析で、社内外で協力していただく関係者も多くなるため、仕組み化していくのはとても大変です。

 理想的なのは、MMMで適正な投下量を割り出し、SEMを参考にその投下資本の詳細な配分の仕方を明らかにする。さらに結果がどうなったのかを追うために、ブランドエクイティーのトラッキングを行う。認知や純粋想起、ブランド選好が高まっていれば、店頭の売り上げに結びついているはず、と予測できるところまで進めていくことです。

 ところが、これらをすべて同じ粒度で分析していくにはかなりの労力が必要です。自分たちの仕組みやリソースに合わせていかにバランスをとりながら実施していくかが、分析における大きな課題なのではないでしょうか。

Instagramが広げるセレンディピティに期待

――今回のMMMでは、動画広告をさらに活用していく余地があることが明らかになりましたが、Instagramの活用に関して今後想定されていることを教えてください。

廣澤:Instagramは検索行動そのものを増大させていると感じているので、Instagramならではのクエリ分析や他の検索との連携ができるようになることや、その他にはディスカバリーの役割、セレンディピティを作ってくれる役割に期待しています

倉迫:そうですね。利用者のニーズに合わせて様々な方法で露出できるのが、Instagramの良いところだと思います。ブランドをまだ知らない利用者に対して広告を通じてビジュアルで価値を伝えることもできますし、発見タブからの検索を通じて接点をもつこともできます。日本はグローバル平均と比較して約3倍もハッシュタグ検索回数が多いというデータもあります。

廣澤:ハッシュタグを通じた検索は、これから一層盛り上がってきそうですね。弊社も力を入れていきたいです。こうした機能は他のプラットフォームにも存在しますが、やはりテキストとビジュアルでは情報への接触態度が違うと思う一方で、Instagramではそれを相補的に使っているユーザーもいて興味深いです。利用者がどのように検索活用しているのか、より深く見ていく必要があると考えています。

 それから、この前活用させていただいたストーリーズ広告のアンケートスタンプ機能にも可能性を感じています。インタラクティブ性があるほうがブランドリフトに貢献するという結果も出ていますが、それ以前に、1人のユーザーとして純粋に機能を体験したときに、これはおもしろいと思って。やはりInstagramは見るだけではなく、行動を促すこともできるプラットフォームだと実感しました

花王「キュレル」のストーリーズ広告
花王「キュレル」のストーリーズ広告

――効果測定の面ではいかがですか。

廣澤:今は様々なプラットフォームに広告を出稿することができ、それぞれのユーザーのモードは少しずつ異なっています。購買に関しても、リアル店舗もECサイトもある。複雑な掛け合わせの中でベストプラクティスを探していく取り組みは、永遠に終わらないと思います。

倉迫:広告投資の最適解は、その時代によって変わっていくものです。測定結果を基に予算配分を変えてみて、それが本当に良かったのかを検証していただくまでが1つのサイクルだと考えています。クライアント様の広告出稿がベストの費用対効果で実施できるよう、一層力を入れて支援させていただきたいです。

インタラクティブストーリーズ広告の活用について、事例を紹介しています。詳しくはこちら

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/20 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32596