どのようにデジタル人材を活用してDXを実現するか
一方で、人材さえ確保できればDXが実現するわけではありません。CDOを設置している企業であっても、DXの推進がうまくいっていないケースもあります。
たとえばDX先進企業では、DXの前提となる「経営ビジョンの提示」や、DXの「経営計画への組み込み」などが行われている傾向が高くなっています(図表6-1、6-2)。これは経営者がDXの推進にあたり、しっかりとコミットメントをした上で、CDOを任命することの重要性を示唆します。
加えて、必要なリソースの供給です。DX先進企業では、一定の予算が確保され、CDOに任されている状況が伺えます。逆に、いかに敏腕なCDOであったとしても、都度企画起案を行い、調整を経なければ予算が調達できないような環境では、柔軟・迅速なDX推進は困難になるでしょう。冒頭で述べましたが、DXの取り組みは大規模化する傾向にあります。また、短期的な成果を期待するのではなく、3年から5年といった中期的な時間軸で備えなければなりません。必然的に、求められる予算規模は懸念されるところではありますが、持続的に予算を確保するためにも、最初から大きな成果を期待するのではなく、コンパクトな達成を積み重ねていくプロジェクト運営が要諦となるでしょう。
質量ともに人材の充実なくして、DXの実現はありえません。そして人材の育成には時間がかかります。また人材を確保できたとしても、適切な経営層からのバックアップがなければ、未踏領域での成果を生んでいくことは困難です。
企業のデジタル変革はまだ始まったばかりです。中長期的な視点に立ち、自社の取り組みを支えるDX推進人材をどのように育成していくか、競争優位を左右する課題への対応が問われています。