※本記事は、2020年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』49号に掲載したものです。
テレビ×デジタルの効果を見誤らないために
この記事では、大規模データによる新しいテレビCMの効果測定方法を紹介する。テレビCMの効果測定は、マーケティングミックスモデルのように集計されたデータを組み合わせる「マルチソースデータ」の分析、個人のテレビCM接触・非接触の状況によってKPIを比較する「シングルソースデータ」の分析という2種類に大きく分けることができる。
特にシングルソースデータの分析にて「テレビCMを見た人がサイトに来訪したか」といったテレビ×デジタルでの効果を捉えていくときには、構造上、注意が必要な問題がよく発生する。結果を見誤らず、課題解決につなげるために大規模データはどう活かせるか? その視点を紹介していきたい。
CM効果測定におけるマルチソースvsシングルソース
「テレビCMの効果測定」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか? 一つの主流な方法は、テレビCMの時系列データ(例:GRP)とKPIの時系列データ(例:売上、認知、サイト流入)を用意しておき、その関係を回帰分析などの統計モデルによって捉えていくものである。
テレビ以外のデジタルやチラシなどの施策データも組み合わせて入力情報に使っていく場合、この方法は「マーケティングミックスモデル」と呼ばれる。この方法はテレビCMのデータ(入力)とKPIのデータ(出力)をそれぞれ別種のデータソースから集計して作ることも可能であり、「マルチソースデータ」の分析と呼ぶこともできる。
データ作成の容易さがある一方で、集計済みのマルチソースデータからだけでは、消費者個人の行動変化を捉えることが難しい場合もある。たとえば、「テレビCM接触者と非接触者でブランド認知のリフトに違いがあったのだろうか?」というテレビCMの接触効果を検証したい場合などである。
こうした課題に直接的に応えるには「シングルソースデータ」が役に立つ。シングルソースデータとは、キーとなる識別子に基づいて、別種のデータを紐付けたデータ群である。たとえば、インテージのi-SSPやビデオリサーチのVRCUBICといった調査モニターを識別単位としたパネル調査型のシングルソースデータは、ここ数年で多くの企業で活用が進んできている。この種のデータでは、テレビ視聴調査に、モバイルログ調査、パソコンログ調査、購買調査、アンケート調査などの様々なデータを紐付けられる。“箱庭”の中で分析者は柔軟に多様な仮説を検証していける。