視点の変化がターゲットの広がりを生む
セッションではまず、サンリオピューロランドの顧客ターゲットについて触れられた。小巻氏によれば、キャラクターを基軸とした同施設には子ども向けというイメージがあったが、近年では男性客の来場も増加しているという。
鹿毛氏がターゲットの広がりについて尋ねると小巻氏は、「メインターゲットは女性であったとしても、その女性を喜ばせるために男性が商品を買うという視点も加えると、オールターゲットにもなる」と述べた。同様に「孫のために祖父母が購入する」といったケースも挙げ、ターゲットを喜ばせたいと考える周りの人もターゲットとして捉えることで、より多くの人に訴求できることや、その新たなターゲットに対し企業としてまだまだできることがあるという意欲を語った。
社内の空気を変える「5つの質問」
続いて鹿毛氏は、小巻氏が同施設に赴任してから「V字回復」できた理由について尋ねた。小巻氏は当時を振り返り、自身は刺激を与えただけで「スタッフ一人ひとりが元々持っていたアイデアを引き出し、形にしただけ」と語った。さらに鹿毛氏が、スタッフからアイデアを引き出すために具体的にどうしたのかを尋ねると、「ただただ話を聞く」と小巻氏。そのために同氏がスタッフに繰り返してきたのは次の5つの質問だ。
・そもそもなぜこの会社に入ろうと思ったのか
・仕事をしてきた中で、一番生き生きしたり、楽しかったりしたことは何か
・「すごく苦労したんだよ。これ、聞いて」と言いたいのは何か
・なぜ大変な時にも辞めないでとどまったのか
・この先ピューロランドのどこを見てほしいか
小巻氏は、スタッフと会うたびにこれらの質問を繰り返し、またそのための場も設けたという。鹿毛氏が斜に構える人をどうやって仲間に入れたのか尋ねると小巻氏は、「話し合いの場を増やしたことで、『何か会社が変わるかもしれない』と、目の色が変わるスタッフが徐々に増えてきた。その人たちが中心となり、会社全体で空気を変えてくれるような会話が聞かれ始めると、斜に構えていることのほうがかっこ悪いという雰囲気になっていった」と答えた。
また鹿毛氏が歴史の長い企業の文化が実際に変わるのか尋ねると、小巻氏自らが文化を変えたことは否定しつつも、「よく言われるように、言葉を変えると行動が変わり、行動が変わると習慣が変わり、習慣が変わるとだんだん世界観、空気感といったものが全体的に変わってくる。ものの話し方を否定しない、優しく話す、温かく聞くということからやってきたが、『一人ひとりがそもそもなぜこの仕事をしているのか』という問いが大きかったと思う」と述べ、質問をし続けることが、スタッフの行動、組織を変化させる一因になったことを明らかにした。