個人の消費マインドが大きく変化している
新型コロナウイルスの感染拡大は、長期間にわたり私達の日常生活に大きな影響をもたらした。不安な日々を過ごす状況が続き、見通しの立たない社会の状況を前に、個人はますます“リーダー”としての行政の方針や、サービス・商品提供者である企業姿勢を厳しく見極めるようになっている。
Afterコロナ、Withコロナの世界において、消費者は「本当に世の中のことを考えている人は誰なのか」「自分たちのことを考えた商品・サービスの提供者は誰なのか」を見極め、応援したり購買行動をしたりするようになっている。事業や組織が今後も生き残っていくためには、消費者を真に応援する企業姿勢と、社会・世界をよりよくする商品やサービスの提供を行っていくマーケティング活動が重要だ。
社会をよりよくするマーケティング活動は、50年前に既にフィリップ・コトラー氏が提唱しており、彼はそれを「ソーシャル・マーケティング」と呼んでいる。
ソーシャル・マーケティングは「企業利益」につながるのか
これまで長らく“社会に良い活動”というのは、主に民間企業が営利事業で得た利益を社会に還元することを目的に、CSR活動として行われているものが多かった。日本では特に、社会に良い活動を本業として行っている企業は多くない。
しかしこれからは、本業を通じて社会にダイレクトに良いもの・サービスを提供していくこと、それを顧客に伝えていく事が、利益を追求する上でもますます重要になる。ひとつの事例として、NPO法人TABLE FOR TWOが実施する「おにぎりアクション」というソーシャル・アクションについて紹介したい。
企画の詳細は後述するが、そこに参画した日米約50の企業・自治体は、活動へ協賛・寄付するという形式で本活動を応援している。参画企業は、そのほとんどが、マーケティングやブランディングの部署が本業の事業活動の一環として取り組みを行っており、その参画の結果として、商品の購入意向や企業のブランドイメージが上がるという結果が、定量的に出ている。他にも、SNSアカウントのフォロワー数が増大したり、近年ブランド力の低下が懸念されていた商品の販売数・売上が上昇するなど大きな効果が生まれた。
消費者からは参画企業を称賛し、応援する声が多く寄せられ、購買行動に結びついた。社会に良い取り組みに参画することで、事業活動にダイレクトに効くことが明確になり、2018年から2019年にかけては、93%の企業・自治体が継続参画をしている。このようにソーシャル・マーケティングは、事業活動をしていくにあたり非常に重要な役割を果たし、今後ますますその重要性は高まっていくと考えられる。