情報の押し付けはNG、顧客が欲しい情報を届ける
LINEに限らず、デジタルの利点は対面接客などのリアルなコミュニケーションができなくても、商品・サービスを提供できることにある。前述の白鶴酒造や積水ハウスは、まさにデジタルの利点を生かしたコミュニケーションといえる。
しかし、永田氏は「だからといって、安易に顧客とのチャネルをただデジタル化するだけでは、思うような成果は得られないかもしれない」と警鐘を鳴らす。
具体的に、どのような戦略が必要なのか。永田氏は、アドビが行った「消費者のコンテンツ消費に関する意識調査」の結果を基に、「原点に立ち返るようですが、顧客のデジタル体験の満足度を上げていくことがポイント」だと説明する。
アドビの調査で、世界各国の消費者に対して「ブランド企業のWebサイトにおける体験」について尋ねたところ、日本では「とても良い・良い」という回答がわずか16%で、今回の調査対象国のなかで最低であることが明らかになった。「とても良い」という回答に至っては、わずか3%だという。
満足度が低い理由の1つに、「提示されるコンテンツの親和性が低い」ということが挙げられる。「パーソナライズされていないコンテンツを受け取ることがある」という回答は58%を占め、欲している情報が提供されない状態に、多くの消費者が不満を持っているようだ。永田氏も「この約6割の問題を減らすことで、消費者のブランド体験を向上できるのではないでしょうか」と語る。
パーソナライズを意識したデータベース構築が鍵に
パーソナライズされた情報を提供するには、社会情勢や消費者の状況に応じたコミュニケーションが欠かせない。そして、そんなコミュニケーションを実現するためには、消費者の属性や行動履歴から紐解いた趣味嗜好の傾向など、様々な情報が必要になるが、データは一朝一夕で蓄積できるものではない。
ただし、日ごろからパーソナイズを意識したデータベースを作っておくことで、「有事の際にもスムーズなコミュニケーションがしやすくなるはず」と永田氏は説明する。
前述の調査によると、消費者の3割近くが「パーソナライズされていれば、商品やサービスを購入する可能性が高くなり、ブランドへのロイヤルティを感じる傾向がある」という。言い換えれば、パーソナライズされたコミュニケーションが実現できれば、購入意向やブランドリフトにもプラスの影響を与えることができるわけだ。