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MarkeZine Day 2020 Summer Kansai(AD)

会えない状況でも顧客との出会いを仕組み化 LINEが語る「緊急事態下」の適切なコミュニケーション

 2020年春、日本の経済活動は新型コロナウイルスによって深刻なダメージを受けた。顧客とのつながりを断たれてしまった企業は多く、小売や飲食に至っては店舗を開けることもできない。2020年6月19日に開催されたMarkeZine Day 2020 Summer Kansaiにおいて、LINEの永田晃一氏はこの状況下でも、企業と顧客が適切なコミュニケーションを取ることで、顧客の悩みや課題の解決に貢献している事例があると紹介した。

LINEはコロナ禍の社会でどんな貢献を果たしたか

 2020年前半は、日本をはじめ世界の大半が未知のウイルスに翻弄された時期といえる。この間、仕事や学校など社会活動のすべてが自粛を余儀なくされ、経済にも深刻なダメージを被った。ウイルスとの戦いは一過性のものではなく、多くの企業が事業継続に関する悩みや課題に直面している。

 LINEの永田晃一氏は「そんな企業活動を、顧客とのコミュニケーションという側面から支えてきたのがLINEです」と話す。

永田 晃一氏
LINE株式会社
広告事業本部 西日本事業部 大阪/福岡オフィスチーム マネージャー

運用型広告「LINE広告(旧:LINE Ads Platform)」の西日本エリアでのセールスを担当。2018年1月に大阪オフィス、同年10月には福岡営業拠点の立ち上げを担い、福岡にて営業統括に従事。2019年11月より現職。

 LINEは企業活動のサポートだけでなく、休校中の学校でのコミュニケーション支援を目的としたLINE公式アカウント「学校プラン」の無償提供や、飲食店やドラッグストア等の店舗での対策を支援する無償機能の提供など、生活者・学校・自治体など社会活動を支えるための複数の支援施策を行ってきた。

 「LINEは元々、2011年の東日本大震災をきっかけに誕生したコミュニケーションアプリです。困難な状況でこそ、コミュニケーションツールとしての真価が提供できると考えていますし、その真価とは、『学校』と『生徒/親』、『地方自治体』と『生活者』、『企業』と『お客様』など、様々なつながりを守っていくことだと考えています」(永田氏)

非常事態でも円滑な消費者コミュニケーションを行うには

 新型コロナウイルスの感染が拡大していた3月~5月は、人々の気持ちも日に日に神経質になっていった時期だ。企業からの情報発信には細心の注意を払う必要があり、メッセージや手段を1つでも間違えれば、取り返しの付かない事態に陥るリスクもある。

 では、LINEを活用している組織や企業は、どのような形でユーザーとコミュニケーションを行っていたのか。

 「たとえば、日本酒メーカーの白鶴酒造では、在宅中の自社のファンに向け、自宅で果実酒が作れる商品をプレゼントするキャンペーン、ネットショップの割引キャンペーンを実施し、その告知にLINEを活用しました」(永田氏)

 また、積水ハウスではLINE公式アカウントの友だちに対し、電話やWeb会議で住宅の相談ができる「おうちで住まいづくり」への誘導を行っている。家にいながらVRで展示場を見学したり、プランの設計ができたりするなど、状況に合わせたサービス提供をLINEから案内することで、顧客とのつながりを維持することに成功している。

情報の押し付けはNG、顧客が欲しい情報を届ける

 LINEに限らず、デジタルの利点は対面接客などのリアルなコミュニケーションができなくても、商品・サービスを提供できることにある。前述の白鶴酒造や積水ハウスは、まさにデジタルの利点を生かしたコミュニケーションといえる。

 しかし、永田氏は「だからといって、安易に顧客とのチャネルをただデジタル化するだけでは、思うような成果は得られないかもしれない」と警鐘を鳴らす。

 具体的に、どのような戦略が必要なのか。永田氏は、アドビが行った「消費者のコンテンツ消費に関する意識調査」の結果を基に、「原点に立ち返るようですが、顧客のデジタル体験の満足度を上げていくことがポイント」だと説明する。

 アドビの調査で、世界各国の消費者に対して「ブランド企業のWebサイトにおける体験」について尋ねたところ、日本では「とても良い・良い」という回答がわずか16%で、今回の調査対象国のなかで最低であることが明らかになった。「とても良い」という回答に至っては、わずか3%だという。

 満足度が低い理由の1つに、「提示されるコンテンツの親和性が低い」ということが挙げられる。「パーソナライズされていないコンテンツを受け取ることがある」という回答は58%を占め、欲している情報が提供されない状態に、多くの消費者が不満を持っているようだ。永田氏も「この約6割の問題を減らすことで、消費者のブランド体験を向上できるのではないでしょうか」と語る。

パーソナライズを意識したデータベース構築が鍵に

 パーソナライズされた情報を提供するには、社会情勢や消費者の状況に応じたコミュニケーションが欠かせない。そして、そんなコミュニケーションを実現するためには、消費者の属性や行動履歴から紐解いた趣味嗜好の傾向など、様々な情報が必要になるが、データは一朝一夕で蓄積できるものではない。

 ただし、日ごろからパーソナイズを意識したデータベースを作っておくことで、「有事の際にもスムーズなコミュニケーションがしやすくなるはず」と永田氏は説明する。

 前述の調査によると、消費者の3割近くが「パーソナライズされていれば、商品やサービスを購入する可能性が高くなり、ブランドへのロイヤルティを感じる傾向がある」という。言い換えれば、パーソナライズされたコミュニケーションが実現できれば、購入意向やブランドリフトにもプラスの影響を与えることができるわけだ。

デジタル体験の満足度を上げるため、LINEでできること

 「パーソナライズされたコミュニケーション」。つまり、顧客のデジタル体験の満足度を高めるため、LINEではどのようなことができるのか。

 企業と消費者におけるLINEのコミュニケーションの基本は、企業が持つLINE公式アカウントと消費者がつながること、つまり「企業のLINE公式アカウントと、LINEユーザーが友だちになること」から始まる。

 友だちになる動機には、企業が提供する無料のLINEスタンプやLINEポイントが欲しかった、ブランドや企業に興味関心を持っていたなど、複数のパターンが存在する。ロイヤルティが高いのは後者だが、前者のユーザーでもコミュニケーションを続けることで興味関心を抱くケースがある。つまり、いずれの場合も重要なのは、友だちになった後にブロックされないよう、継続したコミュニケーションを続けるための創意工夫にある。結果的に残ったユーザーが、将来のロイヤルカスタマーや見込み客である可能性は高い

 では、友だちに対してどのようなメッセージを送るべきなのか。

 メッセージに反応するということは、配信された情報をタップして開く、すなわち「開封する」ことを意味する。ただ、LINEのメッセージは開封しなくても、通知時に2行分のテキストが表示されるため、内容の大半を知ることができる。

 この2行分のテキストでユーザーに「見たい」と思わせることができれば、関係性は一歩前進したといえるわけだ。

 「LINEのユーザー体験を向上させるためには、『友だち状態をキープすること』、同時に『メッセージの開封率を上げ、そのデータを蓄積して、次のコミュニケーションに生かすこと』がポイントであることがわかります」と永田氏。

高ロイヤルティユーザーとの出会いを仕組み化

 そんなLINEの特性を生かして、効果を上げている企業の事例も紹介された。

 一つは、ベネッセコーポレーションの事例だ。同社では、LINE公式アカウントでどんな人がメッセージを開封し、タップしたかというデータを蓄積している。今回、そのデータを活用し、メッセージに反応したユーザーの属性と近しい特徴を持ち、かつ友だちになっていないターゲット層に向けて友だち追加を促すLINE広告を配信した。その結果、通常のLINE広告と比べてCTRは150%となり、ブロック率も軽減されたという(詳しい記事はこちら)。

 また、キリンビバレッジでは、LINE公式アカウントでつながっている友だちのうち、缶コーヒーブランド『FIRE』の愛飲者、もしくは同社の自販機『Tappiness(タピネス)』でFIREを購入したことがある人のデータを使い、それぞれの属性に近いLINEユーザーへ、FIREのキャンペーン告知を配信した。

元々の愛飲者に近いユーザーに広告を配信したことで、CTRが最大165%を達成するなど大幅な改善が見られ、キャンペーン成功につながりました」(永田氏)

 いずれの事例も、蓄積されたデータから、ロイヤルティの高いユーザーの特徴を明確にし、同じ傾向を持つ人にコミュニケーションのきっかけとして広告を配信している

 一朝一夕では難しい施策ではあるが、ロイヤルティの高いユーザーとコミュニケーションが取れる仕組みを作っておくことが、今後、新型コロナウイルスのような不測の事態が発生した際の予防策になるのかもしれない。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/08/05 18:11 https://markezine.jp/article/detail/33660