急拡大するサブスクでも逃れられぬユーザー離脱
今回紹介する書籍は、『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』。著者は、マーケティングテクノロジー事業を展開するMacbee Planetでエヴァンジェリストとして活動する佐野敏哉氏です。
佐野氏は過去に、SaaS型の動画配信サービスを提供するブライトコープで数多くの企業への導入をサポートし、アドビ(当時はアドビ システムズ)においてデジタルマーケティングや広告配信の業務を担当した経歴を持つ人物です。サブスクリプション(サブスク)モデルの黎明期から、そのビジネス、システムの両面に関わってきました。
本書で取り上げられているのは、サブスクビジネスにおける「解約」です。佐野氏は本書において「どんなサブスクリプションビジネスも、ユーザーの離脱という宿命からは逃れることができない」と語り、サブスクビジネスにおいて見られるユーザーの離脱と企業の考えるべき方策について、次のように主張しています。
新規ユーザーがある程度まで増えれば、それ以上母数を大きくするのは、難しくなります。しかもサブスクが世の中に浸透するとライバルも出てきて、そちらに流れていきます。だからこそ、今利用してくれている人たちを大事にしていき、解約希望者には継続してもらうように引き止める手段を講じる必要があるのです。(p.36)
では、ここで言う引き止める手段をどのように組み立てていけば良いのでしょうか。
解約理由の分析を活かしサービス改善・ロイヤリティ向上へ
佐野氏は「やめる理由や、やめていく人の行動を把握していないと、それに合わせた対策を取ることはできない」と主張しています。言い換えれば、対策を取るためには解約したいユーザーの心理を把握する必要があるということです。
具体的には「解約希望ユーザーから、入会時にそのサービスに期待していたこと、解約を決めた理由、サービスへの不平・不満、ライフイベント等の情報を得て分析し、ユーザーの思考傾向を知ることが大事」だと語っています。
解約の対応時に適切なコミュニケーションを行い、解約希望ユーザーから最後に情報を得て活用することで、「利用中のユーザーが解約しないようにする対策」と、「今まさに解約しようとしているユーザーに働きかけ、解約を踏みとどまらせる対策」の両方を実現していけると述べているのです。
また佐野氏は「解約が企業にとってゼロパーティーデータを集める手段になる」とも主張。元々は解約というネガティブな要素であっても、「どうすれば利用中のユーザーに満足し続けてもらえるか」「ファンになってもらえるか」を知るための手段にもなる。この逆転の発想が未来のマーケティングにつながり、企業にとっての強みになっていくと語っています。
本書は、全6章となっており、サブスクビジネスの現況や問題点、解約の正しい捉え方、解約を防止し継続につなげるリテンションマーケティングを解説。解約理由の分析方法やチャットボットを使った解約防止の実践方法、サービス改善への活用方法を、事例を基に詳しく紹介しています。
サブスクビジネスにとって解約はネガティブな要素ですが、本書をきっかけに企業に新たな強みを与えるものとして捉え直してみてはいかがでしょうか。