効果を知るために、まずは目的を設定しよう
初めに、SNSを活用していく際に大前提となるKGIを考えていきましょう。KGIとは、端的にいうと、SNSを活用する上での最終目的のことです。
自社にとっての目的は?
例えば、ある商品の30~40代の世代への認知度が30%、一方で20代は5%だったとしましょう。この場合、20代に知ってもらうために、若年層を中心にした新たなペルソナを設定し、彼らに対する「認知度の向上」をKGIに置いてみます。SNSの使用例としては、SNSの広告を用いてペルソナへの効率的なアプローチも図れますし、インフルエンサーを起用する方法も考えられます(図2)。
この他に、ある一定の認知度はあるものの、競合が多く、業界でのシェアが低い時には、その商品やサービスに興味・関心を持ってもらえるようなプレゼントキャンペーンを企画し、競合他社に負けない「ブランド好意度の向上」なども考えられるでしょう。このように、生活者の行動や自社のペルソナ、課題に基づいてKGIを設定します。
その他にも、「売上げ」や「購入意欲の向上」などのKGIは、SNSのアカウントやユーザーの投稿をきっかけとして自社サイトなどへの訪問・購入につながったのかなど、購買履歴を計測したり、自社サイトなどでは計測しきれない場合、Webアンケートを実施して、フォロワーやファンになってから、行動や気持ちがどのように変化したのかを調査・分析したりする必要があります。
目的を達成するための目標値を考えよう
続いてもう1つの指標であるKPIを見てみます。KPIとは、最終目的であるKGIの達成度合い、その過程を評価する指標です。端的にいえば、最終目的までの中間指標です。
このような関係上、KPIはKGIによって変わります。KGIが「若年層への認知度の向上」であれば、「どれだけの若年層に情報を見てもらえたのか」を評価するために、例えば20代のファン(フォロワー)数やリーチ数、インプレッション数をKPIに設定するとよいでしょう。また、KGIが「ブランド好意度の向上」であれば、実際に商品を購入したユーザーのSNS投稿(=UGC)や、指名検索数、公式アカウントの投稿に対する「いいね!」数やコメント数、リツイート数などの共感や支持的な行動をKPIに設定するのもよいでしょう(図3)。
KPIの具体的な数値の決め方でおすすめの1つは、競合となる企業のアカウントの実績を参考にすることです。
競合他社のファン数や1投稿あたりの平均「いいね!」数などを集計し、その中でトップを目指すのか、平均を目指すのかといったことから考えます。もし競合他社がSNSを活用していない場合は、業界が異なってもSNSをうまく利用している企業を参考にしましょう。
KGIとKPIは従属関係で考える
KGIとKPIは混同されやすいですが、従属的な関係である必要があります。KGIが認知の向上なら、これらを達成するのに必要な要素・要因は何かを考えてみましょう。「認知の向上には、多くの人の目に触れることが重要な要素なので、ファン数やリーチ、言及数を設定する」といったように考えるとわかりやすいです。
KGIを決める際のポイント
中期計画資料を見る
商品・サービスの認知度を向上したいと考えた時、具体的にどの部分の認知度を向上させたらよいでしょうか? 前節のように、現状やこれまでの課題、調査結果から導き出す方法の他に、IR資料など、未来に向けた中期経営計画の中で、SNSが担う領域を探してみるのもよいでしょう。
図4はカルビーグループの経営計画資料の抜粋です。例えば、「フルグラ」などのシリアル事業では、新たな商品ブランドや機能・サイズバリエーションが促進施策、さらに朝食としての“朝のフルグラ”から、フィットネス、ケアハウスなど多様なライフスタイルに様々な価値提供をできる“ライフスタイルサポート食事業”への転換を目指していることがわかります。
読者の皆さんも「フルグラ=朝食」のイメージを持たれているかもしれませんね。このようにSNSを活用し、「様々なライフスタイルシーンで楽しめる」イメージづくりや認知度の向上をKGIと考えるのもよいでしょう。
中期計画がなくても、社内でディスカッション
上場企業のような資料がなくても、自社のお客さまにヒアリングしたり、中長期の課題を上司・経営者などのビジョンや数字を担う人たちと会話したりすることで、ヒントが得られることもあります。
競合他社と比較してKPIを決めよう
KPIは、「ファン数(フォロワー数)」や「エンゲージメント率」などがよく設定されます。しかし、目標となる数値に悩む方も多いと思います。
本章で紹介したように、競合他社を数社ピックアップし、各社のファン数や「いいね!」数などと比較して決める方法を詳しく見てみましょう(図5の例1)。
まずは各社の数値を集計します。集計したら、それぞれ平均値を計算して業界内での標準ラインを出してみます。各社の値があまりにもかけ離れている場合(上位企業のファン数が多すぎるなど)には平均値ではなく中央値を出してみるのも有効です。
このように他社と比較することで自社のポジションを把握しやすくなります。もし、競合他社がいない場合は、近しい業界の数値を基準とするのも1つの手です。例えば、自社が「ソフトウェア会社」であれば「IT製品」でページを立ち上げているところを探してみるといった具合です。
スケジュールを立てる
目標のファン数などを決めたら、次に図5の例2のようにどれぐらいの期間をかけて達成すべきか、簡易なスケジュールを立ててみましょう。半年から1年ぐらいかけて達成するケースが多いですが、SNS広告やキャンペーンなどの施策によっても変わりますし、最初に立てた目標から外れることもあります。運用しながら毎月の獲得ファン数などを見て調整していきましょう。
自社独自のKPIをどう決めるか?
自社の売上構造から考える
競合と比較する場合、同業の規模を比較することには向いていますが、実際にどのように自社の売上げや問い合わせにインパクトがあったかまではわかりません。
それらを把握するためには、自社の売上構造から考えてみましょう。例えば、ある飲食店がTwitterやInstagramを活用してお店への来店数を増やしたいとします。
そこでまず、飲食店の売上構造を次のように考えます。
売上げ = 来店数 × 顧客単価
さらに、Twitterの投稿を見てくれた人のうち毎月1%の人が来店し、平均の客単価が1人あたり1,500円と仮定すると、図6のようなシミュレーションができます。
業種が違う場合は、計算式を変えてみましょう。例えば自動車のディーラーの場合は、来店者のうちすべての人が購入するとは限らないので、上記の式に購買率を掛けます。
売上げ = 来店数 × 顧客単価 × 購買率
購買率や顧客単価は、提案力・接客力にも左右されます。また顧客単価は、商品のラインナップによっても変わりますが、投稿を見た人の来店率、購買率などはアンケートなどで計測可能です。BtoBなどのようにリードタイムがある場合は、「来店数」を「お問い合わせ」に置き換えて考えることができます。
「売上げ」を「商談件数」に置き換えてKPIに設定し、問い合わせフォームなどに、何をきっかけに問い合わせたかのアンケートを設置し、SNSによる成果を把握するようにしましょう。