阪急阪神百貨店、GDOのマーケターが語る、CXが注目される訳
CXの定義がわかったところで、次に川久保氏は「なぜCXが注目されているのか?」について、川久保氏は「企業」「顧客」「時代」の3つの側面から説明した。
1つ目の「企業」の側面として川久保氏は、マーケティング手法が急速に普及しコモディティ化が進み、差別化が袋小路に入ったと指摘する。そして、プレイドが運営するCXに特化したビジネスメディア「XD」、CXのカンファレンス「CX DIVE」などで得た専門家の声を次々と紹介した。
「消費者が何を基準に選べばいいかわかりにくい時代になってしまった」(THE 代表取締役社長 米津雄介氏)
「(飲食店は)真新しさばかりの『差別化』に走った。差別化は、細分化へ。次第に、外食産業は袋小路へと陥った」(トレタ 代表取締役 中村仁氏)
「商品のレコメンドのような手法で最適化されていくと、結局は売れ筋ばかり表示されてしまう」(ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO&CIO 志賀智之氏)
これらのコメントを踏まえても、企業間で差別化していくことがいかに難易度が高いかわかる。
2つ目の「顧客」の側面はどうだろうか。これに対し、「モノ、サービス、情報は飽和化し、情報が多くあることで自己学習する顧客が生まれてくる」と川久保氏。そういったことから「変化のスピードが速くなっている」と続けた。
ここでも専門家の声として、次のようなものを紹介した。
「“なんでもモノが揃うという環境”は、百貨店でなくてもつくれるようになります」(阪急阪神百貨店 フード新規事業開発部 馬場淳士氏)
・「お客さんが求めるのが、完全にモノじゃなくなってきている」(せーの 代表取締役社長 石川涼氏)
リアルタイムデータを活用して体験を改善する時代に
最後に「時代」の側面として、川久保氏は以下の3つのポイントを挙げた。
・あらゆる行動がデジタルでつながる
・リアルタイムデータで体験へ還元される
・オンラインの考え方がオフラインにも侵食される
ここでは、「あらゆるデータがオンライン化するため、オフラインが存在しなくなる」「顧客接点のデータを使ってどのように良い体験を創るかが大事になる」と説いた『アフターデジタル』(日経BP、藤井保文、尾原和啓)などを紹介した。
実際、オフライン関連のデータは増えており、川久保氏も「消費者のデジタル世界と現実が重なるにつれて色々なものがデータ化されていく。そのデータを活用して体験を作り出すことができる」と補足した。
企業、顧客、時代の3つの側面から分析した結果として、川久保氏は次のようにまとめた。
企業の側面
顧客不在の差別化競争をくり返しており、誰にとっての差別化なのか、誰にとっての価値なのか、といったことが見えないまま企業の競争が行われていることが多くなった。
顧客の側面
機能性、合理性の部分では十分に満たされている。それ以上の欲求を満たすモノを求めている。
時代の側面
リアルタイムデータと体験が大事な時代が訪れている。