「平常時にどれだけチャレンジしていたか」が問われている
他にもオムニチャネル施策として話題になったのは、BEAMSのオンラインを通じた接客やコミュニケーションだろう。コロナ禍以前の段階でも、全国の店舗スタッフがSNSにコーディネートやショートムービーを投稿するなどの活動を続けてきた。コロナ禍においても、ライブコマースを開始したり、YouTubeのチャンネルを通してスタッフによる趣味の映画や料理などの紹介コンテンツを配信したりもしている。また、ZARAでは自粛要請によって通常の撮影が難しくなった状況下、モデルが自宅で撮影をして公式のクリエイティブに活用していた。
こうした活動を進められた企業と、そうでない企業の違いについて、川添氏は「危機に陥る前の平常時から、失敗も含めてどれだけチャレンジしていたか」と解説する。
「急に打席に立とうとしても、リスクが見えにくく右往左往してしまう。以前から数多く打席に立ってコンテンツを作り込んでいた企業は、スピードが速かった印象です。加えてZARAのように、ブランドの許容力もポイントですね。どこまでクリエイティブを保つべきかを日頃から決めているブランドは、速く動けます。コロナ禍を経て、日頃からのブランドの作り込みと、それを組織に伝達する重要性を私自身も再認識しました」(川添氏)
ブランドパーパスに基づいた活動になっているか
ブランドの作り込みやクリエイティブに対するスタンスは、ウェビナーの3つ目のテーマであるブランドパーパスにもつながる。「企業がとった行動は、ブランドがこれまで培ってきた価値観に基づいているのか、それは真に顧客のために形成されてきたものなのかが、まさに今問われていると思います」と加藤氏。チーターデジタルが支援している米国のランニングシューズ販売企業Fleet Feet(フリート・フィート)の例を挙げ、ブランドパーパスに沿った事業展開によってロイヤル顧客を育成できると述べた。
同社のブランドパーパスは「ランナーのインスピレーションとエンパワーメントの提供」。そのために、販売している商品の購入者だけではなく、ランニングに参加している人全員をリワードの対象にするロイヤルティプログラムを構築し、アプリを通じて提供したところ、9ヵ月で300万人の会員を獲得するに至った。
「走る距離、トレーニング回数、参加イベントの数などを計測可能にし、体験価値を通貨として、ロイヤルティ経済圏を確立しました。運動を通じて人々がつながり、社会的な欲求を満たす場を提供することで、会員のチャレンジ精神を促進したのです。売上の面で貢献してくれた顧客とのコミュニケーションに閉じるのではなく、熱心なランニングファンとのつながりを構築できた点がポイントです」(加藤氏)
さらにウェビナーでは、川添氏がブランドパーパスに基づく取り組みを紹介。メガネスーパーでは、平常時よりも外出が厳しくなったお客様のアイケアのために、車両型移動式店舗の稼働などを増やすなど、積極的な施策を展開してきた。同社はブランドの存在意義をどのように定義し、それをいかに浸透させているのだろうか。2社の事例を基にした、両氏からのアドバイスも明かされた。
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