SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

AIで変化するBtoBマーケティング 成果を出すためのMA&AI活用(AD)

「成果の出ない施策の繰り返し」はやめませんか? BtoBマーケの勝ちパターンとMA&AI活用の本質

 コロナ禍における顧客が更にデジタルシフトしていく中で、MAやAIと言った最新ツールへの関心は一層の高まりを見せている。一方で、これらは導入すればすべてが上手くいくという“魔法の杖”ではない。導入したものの、活用に苦戦し、成果を感じることができていない企業も多いのではないだろうか。本連載では、成果を出すためのMA&AI活用を探っていく。初回となる今回は、「デジタルマーケティングには、成果を得られる定石が既に確立されているにもかかわらず、無駄な模索が重ねられ、車輪の再発明が起きてしまっている」と指摘する、WACULの垣内勇威氏の元へ。BtoB領域におけるデジタルマーケティングの「勝ちパターン」や、MAとAIの有効活用について解説いただいた。

なぜデジマ業界では“車輪の再発明”が起きてしまうのか?

MarkeZine編集部(以下、MZ):垣内さんは、Webのデータ解析と改善提案ツール「AIアナリスト」などを活用したデジタルマーケティング支援の傍ら、産学連携型の研究所「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」を立ち上げるなど、業界全体でのナレッジの共有にも注力されています。

 昨年株式会社セールスフォース・ドットコムが開催した「Pardotお客さま感謝祭」では、「デジマ業界では“車輪の再発明”が繰り返されている」と指摘されていました。まず、なぜそのような事態に陥ってしまうのか、うかがえますか?

垣内:主な原因は、デジタルマーケティングに詳しく、社内事情にも精通している人がいないことだと考えています。特に大企業では、デジマに注力する場合に専門部署が新設されて未経験の方が担当したり、外部からCDOが招聘されたりすることがありますが、前述の2つの条件を満たせないケースが多いですね。

 WACUL(ワカル) 取締役CIO(Chief Incubation Officer) 兼 WACULテクノロジー&マーケティングラボ 所長 垣内勇威氏
WACUL 取締役CIO(Chief Incubation Officer) 兼
WACULテクノロジー&マーケティングラボ 所長 垣内勇威氏

垣内:とりわけBtoBマーケティングでは、営業部門との連携がとても重要です。それなのに、若くてデジタルに詳しそうという理由で社内から集められた人や、たとえデジタルに詳しくても自社製品と顧客の関係性が見えていない人がハンドルを握ろうとしても、なかなかうまくいきません。一方で目に見える成果は求められるので、焦りからバズワードや流行りのツールに踊らされるという残念な事態も起きています。

MZ:それは、日本企業の独特の風潮でしょうか?

垣内:そういう部分もあるでしょうね。これまで見聞きしたケースを分析して図にしたのが以下ですが、ジョブローテーションなどの影響もあると思います。

18種類の分類それぞれに「勝ちパターン」がある

MZ:ただ、デジタルにも社内事情にも精通した人材を確保するのは、そう簡単ではないですよね?

垣内:そうですね。なので、その部分を「勝ちパターンを知る」ことで補完し、誰もが最短距離で成果を上げられるようにしていきましょうと、いつもお伝えしています。

 デジタルマーケティングは新しい領域とはいえ、既に相当のナレッジが蓄積されており、特にWACUL が長く支援しているCV獲得型のWebサイトなどは既に勝ちパターンが明らかです。近年ではそれに加えて、MAやAIといった最新のテクノロジーもツール化されて利便性が高まっているので、「デジタルで効率化すべき点」と「人が担うべき点」を押さえれば、成果を上げるのはそう難しくはないのです。

MZ:その勝ちパターンについて、詳しく教えていただけますか?

垣内:デジタルマーケティングの勝ちパターンは、実はわずか18種類に絞られます。

 デジマって、やろうと思えば細かいところまで無限に施策がありますよね。でも、もちろんリソースは有限なので、最もリターンが見込める部分から投資していくべきです。そのためには、まず自分たちの事業の特性を明確に知る必要があります。それは「Webで完結するのか/営業担当を介するのか」の二択から始まり、図のように18種類に分類されます。このそれぞれに、勝ちパターンが既にあるので、最初にそれを踏襲してからチューニングを図るのが最も効率的です。

デジタルマーケティングの勝ちパターン
『デジタルマーケティングの定石』が発売!今回お話を聞いたWACUL垣内さんの著作『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)が本日発売となりました。これまで垣内さんが蓄積してきたナレッジを詳しく学べる内容になっていますので、記事と合わせて読んでみてはいかがでしょうか。

『デジタルマーケティングの定石』が本日発売!
今回お話を聞いたWACUL垣内さんの著作『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)が本日発売となりました。これまで垣内さんが蓄積してきたナレッジを詳しく学べる内容になっていますので、記事と合わせて読んでみてはいかがでしょうか。

契約フェーズだけでなくその前後でもニーズを検知することが重要

MZ:なぜ、このような分類ができたのですか?

垣内:当社は成果報酬型のコンサルティング事業を過去に長く行っていたことがあり、クライアント企業のどの事業が最も伸びるかを常に見極めてきました。そのノウハウを体系化したものがこの図のベースになっており、さらにそのノウハウを元にデータを根拠に改善を自動で提案する、デジタルマーケティングのPDCA高速化ツール「AIアナリスト」を開発したという流れがあります。

MZ:今回のテーマであるBtoBマーケティングは、先の図では「Web to 営業担当型」で、かつ「BtoB」の分類になりますね。この領域について、成果を得るための考え方と、ありがちな間違いを教えてください。

垣内:そうですね。そこではさらに、大手企業向けなのか企業規模を問わないのか、また購買する製品やサービスに関連する顧客の知識量が多いか少ないかで4つに分類できます。

 4つともに共通して、顧客のフェーズは次の図のように、ニーズが顕在化しておらず、情報収集をしているだけの「日常フェーズ」、ニーズが顕在化し、比較検討に入っている「契約フェーズ」、特に情報収集はしていないが、突発的に見直しや更新のニーズが発生する「継続フェーズ」の3つに大別できます。各フェーズで顧客数も注力すべき施策も異なりますが、「契約フェーズ」にフォーカスし、前後が見落とされているケースが非常に多いです。

垣内:もちろん、契約フェーズは顧客のニーズが顕在化しているので、獲得に向けて速やかに動くことは最優先です。一方で、たとえば「Pardot」のようなMAツールを使って日常フェーズの顧客にメールで接触し続けていれば、コンテンツ閲覧のタイミングからニーズの顕在化を検知でき、そこからリードをリスト化できます。継続フェーズでも、既存・休眠顧客の継続や離反のニーズを検知するという点で、同じです。フォローを含めて全体を俯瞰した上で「どこをデジタルで効率化できるか」を考えていかないと、事業は先細りになってしまいます。

煩雑なオペレーションの自動化に有効なMA

MZ:確かに、契約フェーズばかり追いかけていると、既に接点のある見込み顧客はいずれ“刈り取り”切ってしまいますね。

垣内:そうなんです。たとえばLPにしても、ある程度ABテストを重ねれば、伸びしろは小さくなっていきます。そこに力をかけるのではなく、もっと大きく母数を増やす施策が必要です。

MZ:先ほどおっしゃった「どこをデジタルで効率化できるか」という部分が、冒頭でも触れられたMAやAIなどの最新技術活用につながるかと思いますが、その見極めと有効な活用についてうかがえますか?

垣内:MAやAI、他のどの技術も同じだと思いますが、いずれも「導入すればすべてが解決する」ようなことはありませんよね。頭では皆さんよく理解されているはずなのですが、実際に利用するとなると、まるで魔法の杖のように的外れな期待をしてしまうことが多いようです。どの技術もあくまで手段なので、はじめに「何を効率化するのか」という目的を明確にすべきです。

 その上で、BtoBマーケティングにおけるMAの活用から解説すると、既存のオペレーションが煩雑な場合の自動化に役立ちますね。たとえば、大量にリストがあり営業訪問の優先順位がつけられないときや、これまで主観や見えている範囲だけで捉えていた「ニーズ顕在化」のシグナルの検出などに、効果を発揮します。

 ……とはいえ、MA活用ではこうした状況がマッチするかを確認する前に、まず営業との対話が最も重要だと認識していただきたいです。

まずは「どんなリードなら営業に行きたいか?」を聞く

MZ:なるほど。冒頭でも、営業部門との連携が大事だと強調されていました。垣内さんがクライアント企業を支援する際も、まずその関係構築から始めるのですか?

垣内:その通りで、マーケ部門とMA導入の目的を話し合う一方、営業部門にも会いに行きますね。“マーケティングオートメーション”という名称なので、ツール自体はマーケ部門の管轄になることが多いですが、実際には営業側が納得していないと使いこなせないツールなんです

MZ:営業部門との対話では、何を見極めるのですか?

垣内:ずばり、「どういうリードなら営業に行きたいか?」を確認します。これは業種や市場環境、部門のそのときの状況によってかなり違うので、丹念にし、継続的なすり合わせも必要です。具体的には、既に件数が十分にあるからとにかく確度の高いホットリードだけ欲しいというなら、たとえばインサイドセールスを置いて極力マーケ側で温めたリードに絞って渡せるように体制を整えますし、逆にそこまでホットでなくてもリードの量が求められているなら一定の段階でリスト化します。また、そもそも問い合わせが全然来ていないならその時点ではMAは不要で、アウトバウンドの営業を強化するのが先ですね。

MZ:では、営業との連携を図りMAで効率化する傍ら、人の手では何に注力すべきでしょうか?

垣内:BtoBなら明確に、営業活動かコンテンツ制作のどちらかです。まず、BtoB商材の導入には必ず人が介在するので、インサイドでもフィールドでも営業力は必要です。また、先ほどの契約フェーズの前後でリードを獲得するにはコンテンツが必要なので、熱いネタづくりも欠かせません。

定石と勝ちパターン、有効なツールを正しく把握しよう

MZ:同じくAI活用についても、自動化すべきところと人の手で注力すべきところをうかがえますか?

垣内:AIは、MAよりももう少し活用にコツが必要かと思いますが、まずシンプルに高速データ処理ができるAIなら、データが一定量ある場合の足切り判定などに役立ちます。リストの中から可能性の低い下位20%を検知したり、逆に確度の高い上位20%を抽出して優先度を高めたりといったことが可能です。最近Pardotのユーザーさんにおいても、このような業務においてAI機能のPardot Einsteinを使われている企業をよく見かけるようになりました。

 もう少し高度な機械学習やディープラーニングの活用なら、見つけたい“正解”がある程度は把握できていて、かつデータの解像度が高いときは有効ですね。

MZ:端的でわかりやすいご解説、ありがとうございました。本日9月10日に、書籍『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)が出版されるそうですね。最後にBtoBマーケターの読者にアドバイスをいただけますか?

垣内:書籍タイトルにも思いを込めましたが、せっかく取り組まれるなら、やはり「成果の出る施策」に着手していただけたらなと思います。重複しますが、BtoBマーケティングなら何はともあれ営業とのすり合わせが肝です。そこを超えれば、定石と勝ちパターン、Pardotのような優れたツールも既にそろっていますので、あとは前進あるのみです。ぜひ、皆さんがMAやAIで業務を効率化し、頭を使うべき部分に集中して、成果を出されることを期待したいです。

BtoBデジタルマーケティングの「勝ちパターン」を解説!

垣内氏監修のeBook「多くのマーケターが見逃しているBtoBデジタルマーケティングの『勝ちパターン』」を無料公開中です。ぜひこちらからダウンロードください!★こんな内容が読めます・CVRを高める企業サイトの作り方・ユーザーの期待に応えるCVポイント設定・理想の集客を可能にするブログ制作・商談につながりやすいメルマガ配信

垣内氏監修のeBook「多くのマーケターが見逃しているBtoBデジタルマーケティングの『勝ちパターン』」を無料公開中です。ぜひこちらからダウンロードください!

★こんな内容が読めます
・CVRを高める企業サイトの作り方
・ユーザーの期待に応えるCVポイント設定
・理想の集客を可能にするブログ制作
・商談につながりやすいメルマガ配信

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2020/09/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34031