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AIで変化するBtoBマーケティング 成果を出すためのMA&AI活用(AD)

「成功パターンの確立には打席数が不可欠」メール開封率100%超えを叩き出したリバネスのMA×AI活用

 コロナ禍における顧客が更にデジタルシフトしていく中で、MAやAIと言った最新ツールへの関心は一層の高まりを見せている。一方で、これらは導入すればすべてが上手くいくという“魔法の杖”ではない。導入したものの、活用に苦戦し、成果を感じることができていない企業も多いのではないだろうか。本連載では、成果を出すためのMA&AI活用を探っていく。今回は、企業や各種機関と連携し、科学技術による課題解決に取り組むリバネスでCIOを務める吉田氏の元へ。Salesforceが提供するMA「Pardot」やAI「Einstein」を活用し、「メール開封率が100%超えた。つまり転送も含めて母数以上の顧客や潜在顧客に開封されたという事例も生まれている」と話す同氏に、ここまでの経緯や、成果を高める工夫を聞いた。

Salesforce製品を駆使して多岐にわたる顧客接点を管理

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、科学技術の発展に様々な立場から貢献されているリバネスさんにお話をうかがいます。CIOの吉田さんは、2019年に米国で開催されたSalesforceのイベント「Dreamforce2019」のEinstein Keynoteに登壇されるほど、Salesforce製品で先進的な活用をされているのですね。

吉田:イベントへの参加自体は3回目でしたが、登壇することになるとは思いもよりませんでした。とてもいい経験でしたね。

リバネス CIO 吉田丈治氏(Salesforce World Tour Tokyo2019登壇時)
リバネス CIO 吉田丈治氏
(Salesforce World Tour Tokyo2019登壇時)

MZ:MA「Pardot」を中心に、数多くのテクノロジーを使われているとのことですが、まず御社の事業についてうかがえますか?

吉田:当社は子ども向けの教育プログラムから、研究現場でのソリューション提供、また企業や研究機関との共同研究、さらに大学の研究シーズを用いた起業の支援までサイエンスを中心に幅広い事業を展開しています。BtoCもBtoBもあり、BtoBでつながった方のお子さんが教育系イベントに来てくれたりもするので、各事業での顧客が完全に分かれているわけではありません。

 リバネスという社名は、Leave a Nestに由来しており、人材も事業もここで育って巣立ってほしいという意味合いを込めています。私は立ち上げすぐの2002年に参画し、現在はCIOとして自社が活用するテクノロジー領域を統括しています。

企業の規模が大きくなるにつれ、管理業務が煩雑に

MZ:Salesforce製品はいつ頃から使われているのでしょうか?

吉田:最初は2013年にSalesforce Sales Cloudを導入し、続いて2014年にPardotを導入しました。当時は皆が社会人経験のない理系研究者40名の集まりだったので、メンバーのビジネス経験がほぼなかったんですね。事業を受注して納品するところまではできても、その後の請求や回収といったフローが定まっておらず、取りこぼしが出てくるようになっていました。好きなことには集中するものの、会社の存続に欠かせない管理業務みたいなところは皆あまり得意ではありませんでした。

 次第に人数も増えましたが、研究者採用のみを続けてきたので傾向が変わらず、漏れが多くなる一方でした。そこで、この問題をテクノロジーでどうにか解決できないかと情報収集を始め、Salesforceを見つけたのが、2013年末のことでした。請求の管理だけでなく、たとえばイベントや研究費公募など、相当な種類と量のメール配信もしていたので、それらの最適化も課題でした

MZ:当時はまだ市場にMAツールは多くない状況でしたが、いくつかの候補はあったと思います。Pardotを選んだ決め手は?

吉田:世界的なツールであることと、勢いがあったことです。我々は元々日本だけでビジネスをしていくつもりはなく、2014年時点で既にシンガポールの海外拠点を開いたりしていました。なので、各国で分け隔てなく使われ得るサービスであることは魅力でした。今後の社員採用を考えても、そのツールを使ったことがある人が採用できればいいな、と。

 併せて「マーケティングオートメーション」という言葉が出始めてきたころで、Pardotはその流れをけん引する勢いがありました。これによって一部の業務を自動化できるのでは、という期待もありました。

知見の蓄積を目的に、IT専門部署を立ち上げ

MZ:導入されてから6年が経っていますが、どのように取り入れてきたか、御社の組織体制やマーケティング戦略の全体像と合わせて教えていただけますか?

吉田:組織で言うと、当社は全員が研究者の集団なので、あまりきちっと役割分担を決めていないんです。営業部も人事部もなく、皆が全業務をやるという形でこれまで進んできました。この利点は、誰もが自分の研究の強みを活かして活躍できることです。他のスタッフが知っていることをどんどん取り入れていけば、それぞれが新しい武器として展開できます。

 一方で、こういう体制だからこそ、顧客情報を各人がばらばらに保有している状況がありました。そのためマーケティング戦略としては、その一元管理が最初の目標でした。2014年当時は別のツールを使っていましたが、Pardotの導入を皮切りにSalesforce製品を活用していくことを視野に入れ、最初からPardotにデータを蓄積していこうと社内で促していきました

リバネスのSalesforce活用状況

MZ:具体的には、どのようにPardotを活用されていたのですか?

吉田:たとえば当社で多い募集系のメール配信は、なるべく必要な人に絞ってリスト化と送信をしないと、内容のミスマッチからオプトアウトにつながって、送付リストが先細りする事態にもなってしまいます。そうしたリスト作成の効率化と精度向上を、Pardotで行っていきました。Pardot自体はとても簡単に使えるツールなので、昨年までの5年間はスタッフそれぞれが利用し、活用度も習熟していきました。

 ただ、各々が習熟するほど、今度は知見が1ヵ所に集まらないという課題が浮き彫りになっていきました。そのため、2019年に専任部署としてIT部門を立ち上げ、そこで組織的にPardot運用の知見を蓄積していく体制を整えました。

「情報入力が自分のメリットになる」文化の醸成

MZ:では、専任部署を立ち上げるまでの成果と、その後の変化をうかがえますか?

吉田:2014年から2019年の間にも、開封率やコンバージョンといった成果はもちろん高まっていきました。いちばん手応えが大きかったのは、皆が「Salesforceに顧客情報を入力すると得だ」と思うような文化が醸成されていったことです。以前はどうしても、自分が苦労して手に入れた顧客情報をSalesforceに入力して他の人が参照できるようにすることに対するメリットを訴求できておらず、情報の入力を徹底できていませんでした。

 これを打開するには、本当に、地道に成果を可視化することだと思います。One for Allの意識を持てるような呼びかけと、システムによる成果の共有で、徐々に情報入力の習慣を作りました。最初の1年で、個人のアクションがこれだけ組織全体のデータ蓄積と事業への貢献につながるのだと、実感を持ってもらうことを徹底しました。

MZ:それは、ツール活用が社内に浸透するのに大事な点ですね。

吉田:その過程で、これは専任部署があったほうがもっとドライブするのではという見通しが立ち、前述のIT部門立ち上げに至りました。

 現在では名刺情報以外に、過去のメールのやり取り履歴、打ち合わせ議事録、会員サイト上でのアクションデータなども集約しているので、メール配信のリストづくりの精度も大きく向上しました。また、「こういう人に対してこういった内容を伝えたいが、どうしたら良いか」と、IT部門に相談が入るようにもなりました。一緒に議論することで、本当にアプローチすべき人の輪郭がくっきりしてきます。

 当社は私が兼任しながら試行錯誤を重ねたので少々時間がかかりましたが、専任部門がいる組織なら1年足らずで成果が上がると思います。PDCAを回しやすいのがPardotの利点ですね。

Einsteinの効果でメール開封率100%超えの事例も

MZ:御社はSalesforceのAI「Salesforce Einstein」も活用されているのですよね。その活用方法と手応えについてもうかがえますか?

吉田:最初に使ったのは、Pardotに搭載されているEinsteinです。Pardotを活用することで積み上がっていく直近1年間のデータを基にスコアリングしてくれるので、誰にとってもわかりやすく、そして効果が出やすい機能としてとても重宝しています。

 たとえばある特性の人にアプローチしたいとき、いったん作成されたリストの中から、そのテーマへの関心度の上位20%と下位20%を判定するといった使い方が適していると思います。上位は、特段工夫をせずとも反応してくれる可能性が高いですよね。また、ニーズを大きく外れた人にアプローチするとオプトアウトにつながってしまうので、下位は外します。そうして残った中間60%は、アプローチの内容次第で今後ロイヤル顧客になってくれるのか、それとも距離が離れてしまうのかを左右するので、実はこの層に注目することが大事です

MZ:おっしゃる通りですね。実際、Einsteinを活用して以降の数字的な成果は?

吉田:平均して開封率が30%程度だったのが、2020年に入って40%を超えるくらいに向上してきています。適切にフィルタリングして情報を届ける重要性を実感しています。

 同時に先日は、開封率が100%を超える事例も出てきました。どういうことかというと、多くの人がメールを転送してくれたことで、最終的に我々が送った母数よりも多い開封数が得られたということなんです。これにはSalesforceの担当者さんにも驚かれました。

顧客データの基盤と連携できるAIで事業を推進

MZ:他にはどのようなEinsteinの機能を使っていますか?

吉田:Sales Cloud Einsteinと、Einstein Discovery、Einstein予測ビルダーという機能も使っています。いずれもSalesforce上の全データが連携しているので、とても使い勝手がいいですね。過去の行動スコアと興味関心のスコアから、ある企画に興味を持ちそうな人数を試算することなどに役立てています。これは今年から来年にかけて、当社の大きなパワーになると思っています。

 また、当社では学生向けのイベントも複数行っており、私にも身に覚えがありますが、学生は直前キャンセル率が高かったりします(笑)。歩留まりを高めるため、Einsteinの分析を基に必要な人に個別のケアなどを行ったところ、目に見えて出席率が高まりました

MZ:興味深い事例ですね、一般的なビジネスイベントにも十分応用できそうです。最後に、MAやAIは導入時点で満足して成果に結びつかないケースも多い中、確実に事業推進につなげられている視点から、アドバイスをうかがえますか?

吉田:MAはデータありきのツールなので、使い始めの黎明期にはうまくいかなくて当然だ、と思うことでしょうか。我々も当初は「自動化したら全部うまくいく」と淡い期待を抱きましたが、それは間違っていたな、と。試行錯誤しながらデータ量を貯め、体制も整えながら進めることで、Pardot自体が自社にフィットし、高速PDCAを回せるようになりました。

 AIも同じで、自社なりの成功パターンを確立するには、打席数が不可欠だと思います。また、AI単独の製品だとデータをAIにかけるまでに大きな労力がかかるのですが、既に長く使ってデータも蓄積しているSalesforce製品上でAI活用ができることで、入り口のハードルは乗り越えられました。既にSalesforce製品を使っている企業なら、さらに取り入れやすいと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/15 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34054